柳さく子
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下加茂では看板女優として、いずれも野村監督の『元禄女』、『雷お新』、『城木屋お駒』、『三日月お六』前後編、『お伝地獄』前中後編、『復活』(トルストイの同名作品の翻案)や、清水監督の『恋より舞台』などに主演し[1]、特に『お伝地獄』の演技は高い評価を受けた[15]。だが興行面では全体的に伸び悩み、結果として撮影所は1925年6月に一時閉鎖となる(翌年再開)[1][9]。スタッフ・俳優は全員蒲田に引き上げることとなった[1][9]映画『妖婦五人女』(1926年)宣伝用写真から。左から、栗島すみ子松井千枝子川田芳子筑波雪子、柳さく子

蒲田に戻ったさく子は、女優活動を一時休業していたが[16]、1925年10月に重宗務監督の時代劇『村正小町』で復帰[1][16]。当時の蒲田では、監督と俳優を組み合わせて、グループ別の編成を行っていたが、さく子は重宗とともに「時代劇竹班」の所属となり、以後1930年までの6年間に、『上野の鐘』(1925年)、『お初吉之助』、『八百屋お七』、『妖婦五人女 第一篇 弁天おさく』(1926年)、『艶魔』、『狂恋のマリア』(1927年)、『さらば故郷よ』(1928年)、『都鳥』、『浪花小唄』(1929年)、『新編 愛恋序曲』、『黎明の世界』(1930年)など、実に22本の重宗監督の時代劇・現代劇作品で主演をつとめることになった[1]。この間重宗作品以外では、野村芳亭監督の大作『白虎隊』、清水宏監督の現代劇『幼なじみ』、五所平之助監督の『夜ひらく』などに出演している[1]

以上のように、柳さく子は時代劇で長期に渡って主演をつとめて来たが、これは男優の主演が相場となっている時代劇においては非常に稀有なケースと言える[1]。当時の映画ジャーナリズムでも、さく子を阪東妻三郎と並ぶ集客力のある時代劇スターとして評価する意見もあり、全盛期の人気のほどを伺うことができる[17]。1929年には、舞踊の名手であった彼女の記録映画『柳さく子十八番舞踊集』が製作されているが、これも映画女優としては異例のことであった[1]

同じ1929年、松竹に新しく大幹部制が敷かれると、さく子は井上正夫岩田祐吉、藤野秀夫、川田芳子、栗島すみ子とともに、大幹部に推された[18]
映画女優(松竹下加茂)

1931年、松竹下加茂撮影所に移籍[1]。以後は男性スターの相手役が増え、同年の犬塚稔監督『十六夜清心』では林長二郎の清心に対し十六夜、続く尾上栄五郎入社第一作『馬頭の銭』前後編ではおさやとお作の二役、長二郎主演の『投げ節弥之助』前後編では、飯塚敏子演じる妹に恋を譲る姉お千代を演じた[1]。1932年に入ると、坂東好太郎の入社第一作『世直し大明神』で好太郎扮する吉五郎の情婦お波を演じ、続く犬塚稔監督『怪談 ゆうなぎ草紙』では、主役を演じた[1]

翌1933年には市川右太衛門プロダクションに招かれ、『いざよひ帳』で右太衛門の相手役小菊を演じるが、この頃から新人飯塚敏子の台頭などもあり、脇に回る機会が多くなる[1]衣笠貞之助監督『忠臣蔵』前後編(1932年)では戸田局(川崎弘子が演じた瑤泉院の侍女)を演じ、『鈴木新内』(1935年)では飯塚、『鳥辺心中 お染半九郎』(1936年)では長二郎のそれぞれ母親役を演じた[1]。以後は『新版六花撰』(1936年)などの主演作はあるものの、中年役・老け役が中心となり、長二郎主演『番町皿屋敷』(1937年)、坂東好太郎主演『流転』前後編(1937年)、『尊王祇園会』(1938年)、『美女桜』前後編(1940年)、高田浩吉主演『初姿お神楽半次』(1938年)、『月夜鴉』、『股旅八景 三ツ角段平』(1939年)、川浪良太郎主演『夢の市郎兵衛』(1939年)などに出演した[1]

1942年、太平洋戦争の激化による製作数減少のため松竹を退社。以後は、川浪良太郎・伏見信子深水藤子らとともに、「新大衆劇団」を結成し、各地で巡演を行った[19][20]
戦後 - 晩年

戦後は健康を害して映画界復帰の機会を失い、経済的にも困窮する[19]京都府下の施療院(慈善病院)に入院していた1956年、彼女の窮状を知った地元京都の映画人有志によって「救済世話人会」が結成され、彼らの尽力により、さく子は余生を養老院で過ごす事になった[21]。身寄りもなく病気がちの彼女は、晩年生活保護を受ける境遇であったと言われるが[19]、一方で下加茂撮影所のOB会「下賀茂会」に招かれて昔の映画仲間と旧交を温めたり[22]、古巣松竹の作品に脇役・エキストラとして顔を見せることもあった[23][24][25]人物・エピソード欄も参照)。


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