柔道
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

講道館では極の形柔の形講道館護身術などに含まれる柔道の当身技について、「当身の優れたテクニック同様、こういった攻撃されやすいところ(編注:急所のこと)という認識は天神真楊流から伝えられてきたものである」としている[29]。極の形、柔の形は精力善用国民体育の形・相対動作の元になっている。極の形は、初め天神真楊流から引き継いだ形を元にしており「真剣勝負の形」と呼ばれていたが、武徳会時代に嘉納治五郎を委員長とし武徳会参加全流派からの代表を委員とした日本武徳会柔術形制定委員会によって講道館の真剣勝負の形をもとに長時間の白熱した議論がなされ、柔術緒流派の技を加えて柔術統一形としての今の形となった。また、嘉納治五郎の想定していた柔道の当身技の中には武器術、対武器術の概念も含まれていたとされている。

一方、空手界側から柔道の当身技のうち、精力善用国民体育・第一種攻防式・単独動作(基本練習)の当身技は唐手(のちの空手)の影響を受けているという説が唱えられている[30]点についても下に記載する。「講道館#当身技と体育」および「講道館#精力善用国民体育に対する空手界からの主張」も参照
当所・急所
当所(用いる部位)
臂(うで):

指先当(ゆびさきあて)〈指尖〉:突出、両眼突、摺上*

拳当(こぶしあて)〈拳固〉、〈握拳〉:斜当、横当、上当、突上、下突、後突、後隅突、突掛、横打、後打、打下、後押*、前斜当※、前当※、大前斜当※、大横当※、大前当※、大上当※、左右打※、前後突※、(両手)上突※、大(両手)上突※、左右交互下突※、両手下突※、後突・前下突※

手刀当(てがたなあて、手掌の小指側縁)〈手刀〉:切下、斜打、後取*、斜上打※、斜下打※、大斜上打※

肘当(ひじあて)〈肘頭〉:後当、後取*、大後当※、前後突※

〈手甲〉
脚(あし):

膝頭当(ひざがしらあて)〈膝頭〉:前当、両手取*、逆手取*

蹠頭当(せきとうあて、足蹠の前端)〈足底あるいは足玉〉:斜蹴、前蹴、高蹴

踵当(かかとあて)〈踵玉〉:後蹴、横蹴、足踏*
頭部:

〈頭部〉(前頭部および後頭部):前頭当[31]、後頭当[32]
上記は嘉納治五郎『柔道教本』(1931年)、〈〉は「活法と当て身」(『世界柔道史』1965年)、*は講道館『決定版 講道館柔道』(1995年)、「講道館柔道の技名称一覧」(日本武道館編『日本の武道』2007年)、※は精力善用国民体育、の分類による。当身技の大部分は、腕や脚でもって掛けられるが、頭部もときに使われる[33]。前頭部および後頭部を力点として使う[34]。相手に抱きつかれたとき、前からならば前額部で、後ろからならば後頭部で相手の顔面を攻撃する[35]。当て身技を使うときは、敏捷軽快であると同時に、冷静沈着にして、正確に当てなければならないが、当てたあとは、当てた時の早さと同じ速度で(むしろそれ以上速く)、後ろに引き、直ちに次の動作にうつる構えをしなければならない。ゆえに打てば必ず引くことを、合わせて練習しなければならない[34]
急所
急所は、天神真楊流の名称を踏襲している。天倒、霞、鳥兎、獨鈷、人中、三日月、松風、村雨、秘中、タン中、水月、雁下、明星、月影、電光、稲妻、臍下丹田、釣鐘(金的)、肘詰、伏兎、向骨。当身技は形のなかで教授されるが、のちには昇級・昇段審査においても行われることがまれであるため、柔道修行者でもその存在を知らないことも多く、また指導者も少なくなった。
寝技・寝姿勢に関連する当身技

柔道の当身技において、極の形の居取の技「横打」では居取りから肩固で制し倒した受けに対し肘当を水月(みぞおち)に当てる技となっており、居取の技「後取」では座した状態の投げで巻き込み倒した受けに対し拳当を釣鐘(股間の急所)に当てる技となっている。立合の技「後取」では立った状態からの投げで倒した受けに手刀当烏兎(眉間)に当てる技となっている。[36]

また、精力善用国民体育の単独動作・第二類の当身技・腕当の拳当「下突」(「左右交互下突」「両手下突」「前下突」)は下方・倒れた相手への突き技を想定した動作を体育的に行う運動となっている。[36]

また、当身技・足当の踵当「足踏」は、講道館護身術・徒手の部・組み付かれた場合・「抱取」(かかえどり)で使用される際には、踵で足の甲を踏みつける技となる[37][38]が、応用として倒れた相手への止めの踏みつけの技ともなる。[39]
寝技

柔道には固技だけでなくブラジリアン柔術総合格闘技で言うところのパスガード、スイープの寝技技術が豊富にある。パスガードは抑込技でのスコアにつながるので、あっても不思議はないが、スイープについてはブラジリアン柔術のようにポイントも得られない「スイープ」のような総称、概念もあまりないにもかかわらず豊富にある。UFC以前からパスガード、スイープの技術がある格闘技は珍しく、他にはブラジリアン柔術、前田光世が指導員をしながら技術を吸収したロンドンの日本柔術学校の不遷流の流れをくむ柔術、着衣総合格闘技柔術ファイティングシステムなどがある。創立当初、寝技はあまり重視されておらず、草創期に他流柔術家たちの寝技への対処に苦しめられた歴史がある。
柔道形詳細は「柔道形」を参照

講道館の設立当初においては、天神真楊流起倒流の形がそのままの修行され、当身技の技法、概念もそこから継承され修行されていた[40][41][42]。その後、乱取り技や真剣勝負の技など目的ごとに整備分類され技も追加され、大日本武徳会における形制定委員会などを通して古流柔術諸流派との議論・研究の元、「実地に就いて研究の結果、遂に全員の一致を見るに至」[43]り、各流派の技も追加されていき、のちの形の姿になっていった。

嘉納治五郎は次のように書き残している。「従来の柔術諸派の形は、大別して見ると、起倒流扱心流等を以て代表せしめ得る鎧組打系統の形と、楊心流天神真楊流等を以て代表せしめる当身捕縛術系統の形とに大別することが出来る。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:457 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef