1947年、孫立人は部隊の訓練のために台湾へと送られた[2]。孫立人はその際に広州市の公園に送られた3頭を伴って台湾海峡を渡った。この時点ではまだ阿美という名であるが、この3頭には林旺が含まれている。1頭はこの旅の中で病死したが、残った2頭は高雄市鳳山区の基地周辺で木材の輸送やその他の雑務をこなした。1951年にもう1頭の象が死亡する。林旺はビルマから遠征軍と行動を共にしてきた13頭の象の最後の1頭となった。
1952年、軍は林旺を圓山の台北動物園に寄贈することに決めた。林旺はここで人生の伴侶、「馬蘭」と出会うことになる[3]。林旺はこの時はまだ「阿美」という名で呼ばれていたが、動物園は名前が女性的だという理由で「阿美」を「森林之王」、略して「林王」と改名した。ところが記者が聞き間違えたため、「林旺」という字で世間に公表されてしまった(王と旺は音は同じだが調子が異なる)。以降「林旺」が定着した。
林旺は台湾で最も有名で最も人気のある象となった[3]。1983年には動物園は林旺のために66歳の誕生日パーティーを開催した[3]。以降毎年10月の最後の日曜日に林旺の誕生日パーティーが開かれるようになり、数千人の来園者が参加するようになった[3]。台北市長が参加することも珍しくなかった。1986年、動物園は圓山から木柵へと移設されることとなり、動物たちの引っ越し、特に林旺の姿を見ようと多くの台北市民が道路に押しかけた。
2003年のはじめ、林旺は後ろ左足の関節炎に悩まされるようになった[3]。食欲が減衰し始め、様々な合併症に苦しむようになると急速に体調を悪化させ、2月26日[2]、林旺は死亡した[3]。
林旺の追悼式典は数週間にわたり開催され、数万人の訪問者を記録した[3]。死後、林旺には当時の台北市長馬英九より名誉台湾市民の称号が授与された[3]。総統陳水扁は「永遠の友、林旺へ」と綴られたカードとリースを贈っている。
レガシー林旺の剥製、台北動物園
アジアゾウの平均寿命は70歳と言われるが林旺は86歳まで生きた。これは飼育下でのアジアゾウの最長寿記録となっている[2]。84歳まで生き1997年に死亡しているインドのラクシュミクティがこの記録に続く。
林旺の人生は日中戦争から国共内戦、のちに台湾の奇跡と呼ばれる経済発展といった台湾の歴史を映し出しており、ナショナル・アイデンティティの一部として3世代にわたり台湾の人々の記憶に残っている[1]。2004年には林旺の等身大の剥製が作られ、台北動物園に飾られている[1]。
出典^ a b c d e Time Inc. (2013年11月25日). “ ⇒The 15 Most Influential Animals That Ever Lived / Lin Wang”. Time Inc.. 2016年10月21日閲覧。
^ a b c d The China Post. (2003年2月27日). “ ⇒Oldest Asian elephant dies at age 86 at zoo”. The China Post.. 2016年10月21日閲覧。
^ a b c d e f g h i j k DIGITAL DYING (2013年1月7日). “The World’s Oldest Animals, From Hanako the Japanese Fish to Lin Wang the War Elephant