荷重とたわみが比例しないばねも存在し、そのような関係を非線形と呼ぶ[26]。非線形特性のばねでは、例えば、ばねに 10 kg の重りを吊るすと 1 cm 伸びるが、20 kg の重りを吊るしても 1.2 cm しか伸びないという具合である[27]。さらに、荷重を加えるときと取り除くときで荷重とたわみの関係が異なり、荷重-たわみ曲線がヒステリシスループを描くばねもある[28]。皿ばねや圧縮コイルばねの内の特殊なものが、非線形特性のばねの例として挙げられる[26]。
エネルギーの蓄積と放出弓はばねの一種であり、弾性エネルギーを利用して矢を放つ
ばねが変形するとき、弾性エネルギーという形でエネルギーがばねに蓄えられる[29]。蓄えられたエネルギーを放出させれば、ばねに機械的な仕事をさせることができる[30]。この「エネルギーの蓄積と放出」という働きが、ばねの主要な特性の2つ目として挙げられる[31]。例えば、弓によって矢を放つのは、このエネルギーの蓄積と放出を利用している[32]。手で弦を引くことで弾性エネルギーを蓄え、手を放すことで弾性エネルギーを矢を飛ばす力に変える[32]。ぜんまい時計では、ぜんまいに蓄えられたエネルギーを放出させながら時計が動いている[33]。弓と比較すると、ぜんまい時計の場合は弾性エネルギーを徐々に放出させながら利用している[32]。自動車の懸架装置用ばねの場合は、路面から伝わる衝撃をばねが受け、衝撃力をばねの弾性エネルギーに変化させて緩衝している[34]。線形特性ばねの弾性エネルギー。下図が荷重-たわみ線図で、水色塗り部分の三角形面積 U が弾性エネルギーに相当する。
ばねに蓄えられる弾性エネルギーは、その弾性変形を起こす荷重によってなされた仕事に等しい[35]。荷重-たわみ線図では、曲線と横軸で囲まれた面積が弾性エネルギーに相当する[28]。線形特性に限定せずに、荷重 P がたわみ δ の一般的な関数であるときは、 P(δ) を積分して、弾性エネルギー U は以下のようになる[28]。 U = ∫ P ( δ ) d δ {\displaystyle U=\int P(\delta )d\delta }
線形特性のばねであれば、囲まれる面積は三角形となるので U = P δ 2 = k δ 2 2 = P 2 2 k {\displaystyle U={\frac {P\delta }{2}}={\frac {k\delta ^{2}}{2}}={\frac {P^{2}}{2k}}}
が弾性エネルギーである[36]。ばねが受ける荷重 P が同じなら、ばね定数 k が小さいほど吸収エネルギー U が大きくできる[37]。鉄道車両の連結器や緩衝装置のようにばねを衝突を緩和するために使用するときは、この吸収エネルギーが大きいほど有利となる[30]。
荷重-たわみ曲線がヒステリシスループを描く非線形特性ばねの場合では、ループで囲まれる部分の面積分のエネルギーが摩擦などで消費される[38]。このヒステリシスによる弾性エネルギーの消費は減衰として働き、衝撃緩和の視点からは、ループで囲まれる面積が大きいほど有利となる[39]。
固有の振動数ばねに吊られた重りが一定の振動数で揺れ続ける。この図中では、ばね定数が k、たわみが δ (t)(時刻 t の関数)、荷重(復元力)が P、重り質量が m、重力加速度が g で表されている。
先端に重りを付けたばねを天井に吊るし、重りを下に引っ張り、力を放す。すると重りは一定の振動数で上下に振動する[40]。この一定の振動数は「固有振動数」と呼ばれる[34]。この例のような、線形特性のばねと質点(重り)と基礎(天井)から成る1自由度の系では、固有振動数は f n = 1 2 π k m {\displaystyle f_{n}={\frac {1}{2\pi }}{\sqrt {\frac {k}{m}}}}
となる[41]。