1993年11月、河出書房新社より長編小説『親指Pの修業時代』を上下巻で刊行。同作品は右足の親指がペニスになってしまった女性の遍歴を描き、「ペニスを男根主義から解放する」ことを謳った。1994年、女流文学賞受賞。同作品はベストセラーとなり、映画化の話が持ち上がった。また、2009年には講談社インターナショナルより英訳版『The Apprenticeship of Big Toe P』が刊行された。翻訳(英語)はマイケル・エメリック。2017年の小説の『最愛の子ども』の翻訳(イタリア語)はアンナ・スペッキオ。
小説、エッセイとも一貫して、性愛における「性器結合中心主義」への異議を唱え続けている(一般的な意味での「フェミニスト」ではない)。寡作な作家であり、『親指Pの修業時代』から次作『裏ヴァージョン』まで7年、『犬身』までさらに7年が費やされた。2007年発表の『犬身』では、子犬に転生した女性を通じて種を超えた愛情を描き、翌年に読売文学賞を受賞した。 犬好き。また女子プロレス愛好家であり、特にブル中野のファンである。
受賞歴
1978年、「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞。同作で芥川賞候補にも。
1979年、「乾く夏」で芥川賞候補に。
1988年、「ナチュラル・ウーマン」が中上健次の特別推薦で三島由紀夫賞の候補に。
1993年、「親指Pの修業時代」で三島由紀夫賞候補に。
1994年、「親指Pの修業時代」で女流文学賞を受賞。
2007年、「犬身」で読売文学賞を受賞。センス・オブ・ジェンダー賞の大賞にも選ばれるが、辞退。
2017年、「最愛の子ども」で泉鏡花文学賞を受賞。
2022年、「ヒカリ文集」で野間文芸賞を受賞。
作品
小説
『葬儀の日』(1980年8月 文藝春秋 / 1993年1月 河出文庫)
『セバスチャン』(1981年8月 文藝春秋 / 1992年7月 河出文庫 / 2007年12月 河出文庫【新装版】)
『ナチュラル・ウーマン』(1987年2月 トレヴィル / 1991年10月 河出文庫 / 1994年10月 河出書房新社 / 2007年5月 河出文庫【新装版】)
『親指Pの修業時代』(1993年11月 河出書房新社 / 1995年9月 河出文庫 / 2006年4月 河出文庫【新装版】)
『裏ヴァージョン』(2000年10月 筑摩書房 / 2007年11月 文春文庫 / 2017年9月 小学館 P+D BOOKS)
『犬身』(2007年10月 朝日新聞社 / 2010年9月 朝日文庫)
『奇貨』(2012年8月 新潮社 / 2015年2月 新潮文庫)
『最愛の子ども』(2017年4月 文藝春秋/2020年5月 文春文庫)
『ヒカリ文集』(2022年2月 講談社)
エッセイ
『ポケット・フェティッシュ』(1994年5月 白水社 / 2000年7月 白水Uブックス)
『おカルトお毒味定食』(1994年8月 河出書房新社 / 1997年4月 河出文庫) - 笙野頼子との共著
『優しい去勢のために』(1994年9月 筑摩書房 / 1997年12月 ちくま文庫)
『おぼれる人生相談』(1998年12月 角川書店 / 2001年4月 角川文庫) - 『月刊カドカワ』連載の人生相談コーナーの書籍化
脚本
ナチュラル・ウーマン(1994年、佐々木浩久監督、嶋村かおり、緒川たまき主演)
脚注^ 松浦理英子(まつうら りえこ)とは - コトバンク
^ “少女たちが築いた自分たちだけの王国。最新にして最高の傑作『最愛の子ども』、ついに刊行。──「作家と90分」松浦理英子(前篇)”. 文春オンライン (2017年4月29日). 2019年6月16日閲覧。
^ 「月刊カドカワ 1995年11月号」
^ 松浦理英子. “訪米記―ともに歌う、ともかくも”. をちこちMagazine. 2018年12月7日閲覧。
^ 待田晋哉 (2017年6月1日). “長編『最愛の子ども』出版 松浦理英子さん”. 読売新聞. https://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20170523-OYT8T50026.html 2018年12月7日閲覧。
表
話
編
歴
第45回泉鏡花文学賞
1970年代
第1回 半村良『産霊山秘録』/森内俊雄『翔ぶ影』
第2回 中井英夫『悪夢の骨牌』
第3回 森茉莉『甘い蜜の部屋』
第4回 高橋たか子『誘惑者』
第5回 色川武大『怪しい来客簿』/津島佑子『草の臥所』
第6回 唐十郎『海星・河童(ひとで・かっぱ)』
第7回 眉村卓『消滅の光輪』/金井美恵子『プラトン的恋愛』
1980年代
第8回 清水邦夫『わが魂は輝く水なり』/森万紀子『雪女』
第9回 澁澤龍彦『唐草物語』/筒井康隆『虚人たち』
第10回 日野啓三『抱擁』
第11回 三枝和子『鬼どもの夜は深い』/小檜山博『光る女』
第12回 赤江瀑『海峡』『八雲が殺した』
第13回 宮脇俊三『殺意の風景』
第14回 増田みず子『シングル・セル』
第15回 倉橋由美子『アマノン国往還記』/朝稲日出夫『シュージの放浪』
第16回 泡坂妻夫『折鶴』/吉本ばなな『ムーンライト・シャドウ』
第17回 石和鷹『野分酒場』/北原亞以子『深川澪通り木戸番小屋』
1990年代
第18回 日影丈吉『泥汽車』
第19回 有為エンジェル『踊ろう、マヤ』
第20回 鷺沢萠『駆ける少年』/島田雅彦『彼岸先生』
第21回 山本道子『喪服の子』
第22回 該当作品なし
第23回 辻章『夢の方位』
第24回 柳美里『フルハウス』/山田詠美『アニマル・ ロジック』
第25回 村松友視『鎌倉のおばさん』/京極夏彦『嗤う伊右衛門』
第26回 田辺聖子『道頓堀の雨に別れて以来なり──川柳作家・岸本水府とその時代』
第27回 吉田知子『箱の夫』/種村季弘『種村季弘のネオ・ラビリントス 幻想のエロス』ほか
2000年代
第28回 多和田葉子『ヒナギクのお茶の場合』
第29回 久世光彦『蕭々館日録』、笙野頼子『幽界森娘異聞』
第30回 野坂昭如『文壇』およびそれに至る文業