豊かな演技力で古典から復活狂言、上方歌舞伎から新作歌舞伎まで挑戦し、二枚目から実悪、色悪、女方までつとめる。また、父と同じ、万能型であり『アマデウス』や劇団☆新感線の舞台など、歌舞伎以外の演劇でも幅広い活躍を見せ、テレビ俳優としても知られる。
』の歌舞伎化を企画。父・九代琴松(=九代目幸四郎)演出のもとで『江戸宵闇妖鉤爪(えどの やみ あやしの かぎつめ)』を国立劇場で上演した。原作の時代背景である昭和初期の東京を幕末の江戸に置き換えたこの新作歌舞伎で、染五郎は神谷芳之助と「人間豹」こと恩田乱学の二役を演じた。隠密廻り同心・明智小五郎は父・九代目幸四郎が演じている。若手の歌舞伎役者を中心とした草野球チームを結成しており、幸四郎は投手を務めている。このチームのメンバーには幸四郎のほか、二代目中村獅童、十一代目市川海老蔵、二代目尾上松也などが名を連ねている。
2003年に、高校時代からの友人である関園子と結婚した。2005年に長男の齋(いつき)、2007年には長女の薫子(かおるこ)が生まれている。2009年に長男・齋は四代目松本金太郎を襲名して歌舞伎座で初舞台を踏み、2012年には長女・薫子が芸名・松田美瑠(まつだ みる)として舞踊の初舞台を踏んだ。
なお、美瑠の初舞台の公演(日本舞踊松本流「第十回松鸚会」宗家松本幸四郎古希記念舞踊公演、東京・国立劇場大劇場、2012年8月)で、舞踊劇に出演中の染五郎が舞台の迫(せり)から奈落に転落し、右手首複雑骨折などの大けがを負った。この負傷により、しばらく休業を余儀なくされたが、同年10月には復帰会見を行い[7]、翌2013年2月に日生劇場で行われた2月公演で歌舞伎舞台に復帰した[8]。
2016年12月、2018年1月に父が隠居名・「松本白鸚」を二代目として襲名することに伴い、自らも高麗屋の当主名・「松本幸四郎」を十代目として襲名し、同時に長男に染五郎の名を譲ることを発表した[9]。
2018年1月2日、高麗屋三代襲名披露公演『壽 初春大歌舞伎』(歌舞伎座)初日にて、十代目松本幸四郎を襲名した[10]。
2020年3月12日、2024年5月に公開予定の映画『鬼平犯科帳』(監督・杉田成道)で、主役の長谷川平蔵役に抜擢されたことが発表された。祖父、八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)のテレビでの当たり役であり、叔父である二代目中村吉右衛門も28年間にわたり演じた「鬼平」を継承、ということになり、祖父から数えると五代目鬼平となる[11]。
年譜
1973年1月 - 六代目市川染五郎(当時の芸名)の長男として東京都に生まれる。姉は松本紀保、妹は松たか子。叔父は二代目中村吉右衛門
1978年12月 - 父が主演したNHK大河ドラマ 『黄金の日日』の最終回に子役で出演。
1979年3月 - 歌舞伎座 『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を襲名して初舞台。
1981年10月 - 歌舞伎座 『仮名手本忠臣蔵』七段目の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名[12]。
1991年 - 暁星高校卒業後國學院大學文学部日本文学科入学(のち中退)。
2003年11月 - 高校時代からの友人・関園子と結婚。
2005年3月 - 長男・藤間齋(ふじま いつき)誕生。
2007年2月 - 長女・藤間薫子(ふじま かおるこ)誕生。
2007年6月 - 歌舞伎座『侠客春雨傘』で藤間齋が初お目見え。父・九代目幸四郎と共に高麗屋三代の顔見世。
2009年6月 - 歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で齋が四代目松本金太郎を襲名して初舞台。
2012年8月27日 - 国立劇場『第十回松鸚会 宗家松本幸四郎古希記念舞踊公演』にて、長女・薫子が芸名・松田美瑠(まつだ みる)としてデビューした。この舞台での共演の途中、染五郎が舞台の迫から奈落に転落し重傷を負う[13]。
2016年12月8日 - 十代目松本幸四郎襲名を発表[9]。
2018年1月2日 - 歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』にて、松本幸四郎を十代目として襲名[10]。
受賞歴
1987年 『大石最後の一日』で眞山青果賞新人賞
1989年 『熊野』で眞山青果賞奨励賞
1990年 『京人形』で松竹永山会長賞
1993年 『おちくぼ物語』『菅原伝授手習鑑・寺子屋』『天衣紛上野初花』(河内山)で歌舞伎座賞
1995年 『アマデウス』で松竹永山会長賞
1996年 『松壽操り三番叟』で歌舞伎座賞、『将軍頼家』で眞山青果賞奨励賞
1999年 『マトリョーシカ』で紀伊国屋演劇賞個人賞
2001年 重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる[14]。
2003年 芸術選奨新人賞
2005年 『阿修羅城の瞳』『?しぐれ』で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、報知映画賞主演男優賞、日刊スポーツ映画大賞主演男優賞
2015年 第6回 ラティーノ JAPAN賞[15]、浅草芸能大賞奨励賞
2020年 日本芸術院賞[16]
出演
歌舞伎
女殺油地獄:河内屋与兵衛役
好色芝紀嶋物語(怪談敷島譚):傾城敷島・藤代屋十三郎・女房お玉役
一谷嫩軍記(熊谷陣屋):小次郎・敦盛役
操り三番叟
勧進帳:富樫左衛門役
恋飛脚大和往来(封印切・新口村):亀屋忠兵衛役
染模様恩愛御書(細川の男敵討):大川友右衛門役
椿説弓張月:源為朝役
復活上演
蝙蝠の安さん(2019年12月、国立劇場):タイトル・ロール[注釈 1]
新作歌舞伎