松平直政
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翌寛永11年(1634年)に松本城に月見櫓、辰巳附櫓を建てて、城門の修復を行うが、これは家光が上洛の帰路に木曾路を経て善光寺参詣の後、松本に立ち寄る予定だったためという。寛永13年(1636年)には松本に新銭座を起こして寛永通宝松本銭を鋳造するなど、家光の従兄として小藩では許されない大事業を認可されている。また、松本城の増改築で呼び寄せた職人たちから訴えられたため、それへの対応として職人の人足役を免除し、松本町の地子年貢(地役)も免除するなどした[1][13]
松江藩へ移封、出雲国主となる

寛永15年(1638年2月11日、出雲松江藩18万6000石(および隠岐1万4000石を代理統治)へ加増移封され、国持大名となった。この移封は幕府が東の鳥取藩・西の長州藩・南の岡山藩広島藩などに睨みを利かせるためだったが、姉喜佐姫が長州藩主毛利秀就の正室という縁戚関係も重要な理由になっていた。出雲入府の際、朝日重政(7000石、寛永元年に直政に請われて復帰)・乙部可正(5000石)などの側近を重用したほか家臣の新規召し抱えも行い、前領主の堀尾氏・京極氏の旧臣も取り立てている。中でも武名の高かった福島正則旧臣の大橋茂右衛門と堀尾氏旧臣の堀尾但馬をそれぞれ6000石と3000石で召し抱え、家老としている。また入府から翌年の寛永16年(1639年)に家老以下諸役人に示した施政方針の直書は6ヶ条にわたり、民を富ませ国を治める、奢侈の禁止、利欲の抑制、財政健全化、人材登用の注意、法の運用の注意を書き、人の上に立つ者としての心構えと下の者への思いやりを説いている。寛永18年(1641年)には林羅山の推挙で黒沢石斎を藩儒として迎え入れている[8][14][15]

幕府から西国大名の監督を期待された直政は大名間の仲裁役を務めた。寛永18年に江戸への参勤途中で後から参勤して来た義兄の秀就へ書状を送り、幕府からの指示ということで自分を追い抜いて先に行くことを勧めたり、明暦3年(1657年)に起こった土佐藩伊予宇和島藩の国境争いで土佐藩の縁戚の伊予今治藩松平定房から内済を依頼され、幕府の老中松平信綱と内談の上で内済を行い、2年後の万治2年(1659年)に家臣を通じて内済決定の覚書を当事者間で作成したことが挙げられる[16]

藩政は前藩主京極忠高(小浜藩から移封、寛永14年(1637年)に死去)の政策を継続、斐伊川の普請工事に着手して明暦3年に若狭土手を完成させ、松江城の城下町を改造した。農業も重視し、正保3年(1646年)から慶安3年(1650年)にかけて水田灌漑のため石見銀山から鉱夫を連れて水路工事(只谷間府)を行ったり、意宇川の水害に悩む村人の要望を聞き入れ慶安3年から承応元年(1652年)まで日吉切通しの工事に取り組み新流路を完成させるなどの政策を行っている(ただし日吉切通しはこの時点では狭く、村人代表の周藤彌兵衛と子孫の手で拡幅が完成することになる)。寺社復興も奨励、隠岐諸島海士にある後鳥羽天皇陵の修繕、および新社殿の造営を行い、寛文2年(1662年)から出雲大社の社殿造営も手掛けたが、完成は7年かかり次代に持ち越された[8][17]

直政は領内のキリシタンを厳しく弾圧し、これはかつての領主堀尾氏や京極忠高らを上回るほど厳しいものであったらしい。

寛文3年(1663年3月25日、幕命を受けて大沢基将と共に霊元天皇即位の賀使となり、上洛した。5月26日に従四位上に昇叙し、左近衛権少将に転任した(出羽守如元)。しかし11月26日に病となり、寛文6年(1666年)2月3日、江戸赤坂(現在の東京都千代田区永田町)の上屋敷にて病死した。享年66。家督は長男の綱隆が継いだ[8][18]

明治40年(1907年5月10日、特旨をもって位階追昇される。贈従三位[19]。なお、昭和2年(1927年)に松江城本丸に米原雲海による銅像「直政公初陣像」が建立されたが、昭和18年(1943年)に金属供出で失った。平成21年(2009年)、島根県庁前に倉澤實による銅像「松平直政公像」が再建された。
逸話

口達者な人物で、「油口」と影では言われていたほどであったという。ちなみに、直政が家康からもらった打飼袋は月照寺にある。

大坂の陣の時、生母に「祖父(家康)の目にかなうよう、卑しき母の子として生まれたと後ろ指を差されることのないように」と言われた(『
藩翰譜』)。真田丸の戦いで奮戦したことから、家康に賞賛されたという(『君臣言行録』)[6]。さらに、この戦いにおいて、敵の大将であった真田信繁に若武者ぶりを讃えられて軍扇を投げ渡されている。その軍扇は直政が初代藩主となった出雲松江藩の宝として残され、今も松江城天守閣の一角に展示されている[20]


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