HSSTのインフラ整備にかかる投資額は、従来の中量輸送の代表ともいえるモノレールやAGTより低廉なものとなっている。
これまでの鉄道システムとは異なり、車輪を用いないため、レールと車輪の接触による騒音・振動がなく、また、推進力は車輪とレールの接触による粘着力に依存しないリニアモーターによるため、加・減速や登坂性能に優れ[注釈 5]、ゴムタイヤ式よりもさらに静かで乗り心地がよく、最高速度も上回る、などの多くの利点を持つ。反面、走行にかかる電力消費が大きい[注釈 6]。
車両は常に浮いており、停車中は機械式ブレーキにより静止させている。扉が閉まり発車する時に床下より発生する「ドン」という音は、機械式ブレーキ解除の際に発する音である。通常は車輪を使用しないが、非常時には車輪で走行可能である[3]。 最高速度は約100 km/hで、藤が丘 - 八草間の所要時間は約17分。最終列車として藤が丘0:05発の愛・地球博記念公園行きがあるほかは、藤が丘 - 八草間の全線運転である。年度初めは臨時列車が運行されることもある。2013年3月16日のダイヤ改正で、平日ダイヤが大学開講期間(4 - 7・10 - 1月)の平日に適用する平日第1ダイヤ、大学休講期間(2・3・8・9月)の平日に適用する平日第2ダイヤに分けられた[4]。運転間隔は、平日朝ラッシュ時は6分間隔、大学開講期間はラッシュ以降も7 - 8分間隔、平日夕は7 - 8分間隔、平日昼間・土曜休日は10分間隔。2013年3月15日までは、平日朝ラッシュ時は7分間隔、夕方も10分間隔の運行体系だった。 2016年12月4日には、イオンモール長久手の開業に伴うダイヤ改正が実施され、土休日ダイヤと平日第2ダイヤを同時刻として平日第2・土休日ダイヤとし、平日・土休日の昼間の運転間隔が10分間隔から8分間隔に短縮されている[5]。 2019年8月3日に、藤が丘駅で幼児が車両とホームドア間の約35センチメートルの隙間に取り残され、そのまま列車が発車したことで、幼児が軌道に転落する事故が発生した[6]。このため全列車に係員を添乗させることになり、その要員確保のため、同年8月10日から9月30日まで朝時間帯10分間隔、日中 - 夜間帯12分間隔の臨時ダイヤとした。監視カメラ増設などによる安全対策を行って解除した[7][8][9]。 2005年3月6日の開業時から9月26日まで、愛知万博輸送を前提とした運行体系が採られた。東部丘陵線(リニモ)との乗換駅となる愛知環状鉄道の八草駅は2004年10月10日から2005年9月30日の間、「万博八草」駅と改称されていた。リニモの八草駅は開業時から2006年3月31日まで「万博八草」駅だった。また愛・地球博記念公園駅も開業時から2006年3月31日まで「万博会場」駅だった。 運転間隔は朝と夜が6 - 15分間隔、昼間が5 - 7分間隔だった。3月19日から万博終了までの土曜・休日には昼間8 - 10時台と夜20 - 23時台に藤が丘 - 万博会場間と万博八草 - 万博会場間に区間列車が運行された[注釈 7]。 東部丘陵地域が「あいち学術研究開発ゾーン」として学術研究施設や公園、宅地開発が進められることになり、輸送需要の増加に対応でき、交通渋滞に悩まされない軌道系交通機関が求められることになり、元来あった藤が丘 - 長久手間に地下鉄1号線(東山線)を延伸する計画を発展させる形で東部丘陵線の構想が生まれた。 1992年(平成4年)、運輸政策審議会答申第12号で「2008年までに中量軌道系の交通システムとして整備することが適当」とされた。その後「東部丘陵線導入機種選定委員会」が跨座式モノレール、新交通システム、磁気浮上システムの中から、 また、愛知万博が長久手町(当時)の愛知青少年公園などを会場として開催されることが決まり、その鉄道系のアクセス路線の一つとして位置付けられた。 2000年に運営主体として愛知高速交通株式会社が設立され、2002年に着工された。2004年から完成した本線で試運転が重ねられ、2005年3月6日に開業を迎えた。 総事業費は約997億円、このうち愛知高速交通施工分は約356億円である[注釈 9]。
路線データ
路線距離(営業キロ):8.9 km(建設キロ:9.15 km)
方式:常電導吸引型磁気浮上式 (HSST)
駅数:9駅(起終点駅含む)
複線区間:全線
電気方式:直流1500 V
最高速度:100 km/h[2]
最急勾配:60 ‰[1]
最小曲線:75 m[1]
運行形態
愛知万博開催時の運行形態
使用車両
100形2005年の開業時から使用。2005年度グッドデザイン賞[10] と2006年度ローレル賞をそれぞれ受賞した。
建設の経緯
建設予定地が60‰もの急勾配が続く丘陵地であること[注釈 8]
システム自体の先進性
歴史
2001年(平成13年)10月3日:藤が丘 - 八草間の浮上式鉄道に軌道法による特許[12]。
2002年(平成14年)11月12日:路線愛称を「リニモ (Linimo)」と決定[13]。
2003年(平成15年)12月24日:駅名を決定[14]。
2005年(平成17年)3月6日:藤が丘 - 万博八草間が開業[12][15]。当初よりトランパスに対応。
2006年(平成18年)4月1日:万博会場駅を愛・地球博記念公園駅、万博八草駅を八草駅に改称。
2013年(平成25年)3月16日:平日ダイヤを大学開講期間の平日に適用する平日第1ダイヤ、大学休講期間の平日に適用する平日第2ダイヤに分ける[4]。
2016年(平成28年)
3月12日:ICカード乗車券manacaを導入[16]。同時に交通系ICカード全国相互利用サービスにも対応[17]。
7月1日:身体障害者および知的障害者に適用していた割引運賃を、精神障害者にも適用開始[18]。