東京都の耕地面積は7,330ヘクタール(2015年、農林水産省)[注釈 12]で、全国最低である。ただし耕地率は高知県・大阪府より上回っている。農地は多摩地域に集中し[注釈 13]、区部の農地は年々縮小している。農地が全くない地区もあり、都心や副都心がある11区では地域の農業協同組合が組織されていない[注釈 14][47]。東京都では、大消費地に近い地理的特性から、野菜・果樹・花卉が主に生産されており、小松菜、ホウレンソウが主要な生産物である。特に小松菜は、東京都中央卸売市場の総入荷量の内、32.5%(2000年、東京都)を占める。昔は練馬大根が特産物であったが、現在ではキャベツに取って代わられ、あまり生産されていない。また栗の生産量は全国8位で関東7都県(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川)全てが全国の栗の生産量ベスト10に入る[48]。一方、米は全国の都道府県で唯一、農林水産省が指定する産地品種銘柄がなく、生産者による直売を除くと「東京都産米」の表記をした販売はできないが、青梅市の「江戸っ娘」などの特定ブランド生産は小規模ながら行われている[注釈 15]。
畜産業は都市化の急激な進展によって、年々生産者が減りつつあるが、大消費地に近いという有利な条件を生かし、生産者は経営体質の強化を図っている。財団法人東京都農林水産振興財団・青梅畜産センター(旧:東京都畜産試験場)が新品種の開発に力を入れており、これまでに「エド[注釈 16]」「TOKYO X」(いずれも豚)、「東京しゃも」(軍鶏)、「東京うこっけい」(烏骨鶏)が開発されている。中でも「TOKYO X」はブランドとしての認知度が高まりつつある。近年、世田谷区の千歳烏山の造園工事店・吉実園がTOKYO Xを中規模養豚で飼育している事がテレビで放送された。元々は吉実園は農家で、今も23区内で畜産を行う希少な兼業農家である(吉実園ではTOKYO Xの他、養鶏も行っている。なおTOKYO Xを場所が高級住宅街に近いのでセレ豚(セレブー)とテレビで紹介していた)。他にも練馬区大泉学園町で酪農を営む酪農家がある他、多摩には東京産和牛の肥育農家も存在する(いずれも全国ニュースで登場している)。
林業は木材価格の低下や、林業経営費用の上昇、林業従事者の高齢化などの要因により、衰退の一途を辿っている。東京都の森林面積は、東京都の総面積の約36.0%を占める。特に多摩地域西部の、あきる野市、青梅市、奥多摩町、八王子市、日の出町、檜原村などに、スギやヒノキなどから成る多くの山林があるが、森林の荒廃が進みつつあり、環境問題ともなっている。特に奥多摩の森林から毎年発生する大量の杉花粉は、花粉症の原因として、住民の生活に多大な悪影響を及ぼしている。
水産業は島嶼部で主要な産業の一つとなっている。かつて東京湾は「江戸前の海」と呼ばれ、江戸前寿司の語源となるような漁場であった。現在の水産業の中心は島嶼部であり、伊豆大島付近、八丈島付近の海域での漁獲量が多い。種類としては、鰹、鶏冠海苔、鯵が多く、くさやの干物のような特産物もある。
また多摩地方ではニジマスなどの陸封型マス類の養殖が行われている。金魚は江戸川区に養魚池があるほか、葛飾区が水元公園の旧水産試験場跡地で養殖を行っている。 東京都は、千代田区、中央区、港区、新宿区などの、いわゆるオフィス街に日本を代表する多くの大手製造業の本社が立地する。京浜工業地帯の一角でもあることから、東京湾沿岸部を中心に事業所(工場)が多く集まる。特に大田区には、いわゆる町工場が多い。多摩地域では日野市、府中市、八王子市、羽村市、瑞穂町、青梅市などにも大型の事業所が多くあり、これら地域の製品出荷額も多い。ただし、東京都内の製造業はこの数十年にわたって急速な減少基調にある。事業所数は1983年の9万7,646カ所から減少を続け、2008年には4万0,137カ所、調査方法が変わった2015年には2万7,142カ所となってほぼ7割減となった。従業員数も1975年には100万人を超え、1983年でも94万4,074人だったのが2008年には40万4917人、2015年には29万6,132人となって40年間で7割以上の減少となった。製造出荷額は1990年の20兆4,390億円から減少をはじめ、2015年には8兆5,452億円で約6割減となった[50]。東京都経済労働局は、地価の高さや過去の公害にも起因する環境対策の厳格化などが交通の利便性を上回って製造業の都外流出要因となり、取引先である大工場の都外移転が中小工場の都外移転を更に加速していると分析している。 製造分野としては、印刷、情報通信機械、皮革、精密機械の占める割合が多く、これらの分野での製品出荷額は全国1位である(2002年、東京都)。この他には、電気機械、輸送用機械、一般機械の出荷額が多い。
第二次産業
製造業