東京国際アニメフェア
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2010年石原慎太郎東京都知事(当時)が主導し、自民公明民主によって改正案が提出され可決された東京都青少年の健全な育成に関する条例に関連し、12月10日、日本の主要な漫画出版社秋田書店角川書店講談社集英社小学館少年画報社新潮社白泉社双葉社リイド社)で構成されるコミック10社会は、東京国際アニメフェア2011について協力・参加を拒否する旨の声明を発表した。声明では、東京国際アニメフェアの実行委員会委員長を務める石原都知事の言動について「漫画や漫画家に対する不誠実で無理解な発言を繰り返し」ているものと批判[5]、改正案についても「漫画家やアニメ制作者との話し合いがただの一度も行われないまま」作られているものであるとして「これまでの出版界と都当局との話し合いの歴史を踏みにじるものであり、規制の対象は依然あいまいで、むしろ拡大さえしている」と批判し[6]、「石原都知事および都当局の、漫画家・アニメ制作者たちに対する敬意に欠けた姿勢に強い不信感を抱かざるをえません」、「石原知事が実行委員長として開催しようとしているアニメのイベントに賛同し、行動をともにすることはとうていできない」とした[7][5][注 1]

各々の出版社が直接の出展を拒否することのみならず、コミック10社会の幹事を務める清水保雅(講談社取締役)によると「原作者の漫画家が希望すれば、出展するアニメ関連会社に協力しないよう要請する」とした[8]。集英社の鳥嶋和彦専務は、出展・参加・協力の拒否のみならず、週刊少年ジャンプなどの同社から刊行されている作品を原作とするアニメ作品の出展も認めない旨を表明し、新人の漫画家らに向けて「ぜひ石原慎太郎(都知事)をぶっ飛ばすような漫画を」と、同社の茨木政彦第3編集部長も「萎縮しないで好きなものを描いてほしい。面白ければジャンプは全部載せる」と、それぞれ述べた[9]

10周年ということで過去最高の約14万人の入場者を見込み、既に多額の予算を組んで準備の進められている東京国際アニメフェアは、ほとんどのアニメ原作者らを抱える主要な出版社の不参加で「イベント自体の成否を左右しかねない」と報じられ、都の担当者によると「不参加の影響は、ないとは言えない」という[6]朝日新聞も都と業界の対立に懸念を表明した[10]

菅直人首相(当時)は、12月13日総理官邸ブログの中で本件について「今、青少年健全育成に関連して『東京国際アニメフェア』の開催を心配する声が上がっている。青少年育成は重要な課題。同時に、日本のアニメを世界に発信することも重要。『国際アニメフェア』が東京で開催できない事態にならないよう、関係者で努力して欲しい」とコメントした[11]

石原都知事は、12月8日角川書店代表取締役社長・井上伸一郎(当時)による出展とりやめの表明に対しては、記者会見で「勝手に自分で決めたらいいじゃないか」と発言。コミック10社会による同旨の緊急声明や、漫画が原作のアニメーション作品の出展とりやめの働きかけの表明に関しては、条例が成立した12月15日、「これ(条例改正)を理由に来ないならどっかの会社がね来なきゃいいんだよ、アニメフェアに。来年、ほえ面かいて来るよ。ずっと来なくてもいいよ。来る連中だけでやります」と発言した[12][13]

こうした中、12月21日にはアニメーション制作会社の業界団体であり、アニメフェアの事務局を務める日本動画協会が条例改正に対して声明を発表、「規制の対象や要件は曖昧で、憲法で保障された表現の自由の精神に照らして大きな問題がある」と遺憾の意を表明、コミック10社会の抗議に対して賛同・支持するとしつつ、アニメフェアの開催については順当な開催を望むとし、事務局を受任し主催ではなくイベント実施を判断する立場にないとしながらも、「参加者の大幅な出展撤回は避けられず、これまでのクオリティを保つのは極めて困難で、実質的に実行不能な事態になる」と否定的な見解、懸念を表した[14][15]

12月28日、コミック10社会のうち角川書店と、アニプレックスアニメイトキングレコードジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンフロンティアワークスマーベラスエンターテイメントメディアファクトリーの計8社は、同イベントと同日に「アニメ コンテンツ エキスポ」を千葉県千葉市幕張メッセで開催すると表明した[16]

週プレNEWS』によれば、アニプレックスのプロデューサー・高橋祐馬はボイコットについて「条例の問題以前に、出版社と歩みを共にするという意識が強かった」と話している[17](詳細は「アニメ コンテンツ エキスポ」を参照)。

2011年1月25日、TAFの実行委員会は、出展企業が前年比で91社減の153社になると発表した。主に2010年末からキャンセルが相次いだためだとしている。収入も当初の見込みより1億1000万円減となることが見込まれている[18]。また、参加を表明済みの企業も上記アニメコンテンツエキスポとの来場客の分散の懸念から、一般来場日の出展は厳しいという見解を示した[19]

アニメのイベントが2つに分かれている件について角川の関係者は「目的は同じ。いつまでもすみ分けするのがいいと思ってはいない」と述べている[20]
史上初の開催中止

そんな中、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、電力不足による計画停電の影響などを受けて、3月16日に2011年度の開催中止が決定した[21]。同様にアニメコンテンツ エキスポも翌日に開催の中止を決定した。

併催イベントのうち、「第10回東京アニメアワード表彰式・第7回功労賞顕彰式」のみは10月10日に東京ビッグサイトにて開催した。
終焉

翌年開催されたTAF2012は、2012年3月22?25日に開催されたが、アニメコンテンツ エキスポ2012は3月31?4月1日に開催されたため、結局日程がバッティングすることはなくなり、「直接対決」は最後までなされないままとなった。TAF2012は、最終出展社数が前回より28社減り、来場者数は前回比で約25パーセント減(約3万人減)の約9万9000人(パブリックデー2日間で約7万4000人)が来場する結果となった[22]。尚、アニメコンテンツ エキスポ2012の来場者数は2日間あわせて約4万2000人であった[23]。同年10月には石原慎太郎が東京都知事を辞任した。

2013年には来場者が10万人の大台を回復した[24]。2日間のパブリックデーのみでは8万1441人になり、同年に開催されたアニメコンテンツエキスポ2013は2日間で7万675人を記録した[25]

そして、2014年からはACEと統合する形で「AnimeJapan2014」として新たに開催されることが決定されたため、TAFとしては2013年で終了となった。会場は従来と同じ東京ビッグサイトだが、会期が2日間に短縮される。また、東京アニメアワードは新たに「東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)」として独立し、より開かれた形での国際アニメーション映画祭として開催されることとなった。


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