東京ゴッドファーザーズ
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見かけ上はかなりコミカルなストーリーや芝居であるが、単純に古臭いマンガ映画的解釈に戻ろうというわけではなく、リアル指向のアニメーションを経た先にある漫画的解釈を目指して制作された[9]

本作からデジタルアニメとなっている[10]
配給

配給は、日本のソニー・ピクチャーズエンタテインメントとなり、2003年11月8日に公開となった[11]。国内だけでなく海外配給もソニー・ピクチャーズが権利を獲得して同社系のデスティネーション・フィルムズと独立系のIDPが担い、2004年1月16日に北米で公開された[11][12]。劇場数は10スクリーンで興行収入は12万9560ドルだった[12]
テーマ

人情物」と言っても良い作品だが、今作品らしく一筋縄では行かない仕掛けがあれこれ施されており、自身は「ひねった人情物」と呼んでいる[9]

本作は、「血はつながっていないがまるで家族のように暮らしている主役の3人が、赤ん坊がきっかけとなってもたらされる奇跡のような偶然により、それぞれが失ってしまった本来の家族との繋がりを回復して行く」という話であり、重要なモチーフとなるのは「偶然」と「家族」である[5]

これまでの2作品とは違い、本作ではあからさまな「虚構と現実の混交」というモチーフは採用していない[9]。しかし、客観的な現実とは別の流れを大切にしている作品なので、目の肥えた観客ならばそうした多元的な物語世界を楽しめる仕掛けも施されているという[5]。あらすじだけ見るとたしかに「虚構と現実」のモチーフは取り扱われていないように見えるが、丁寧に見ていくと本作でも「虚構と現実」の関係を意識されていることがわかる[3]。作劇上・演出上で意識されているのは、「意味のある偶然の一致」、つまり奇跡的な出来事を連鎖させて物語を進めて行くことだった[6]。今はプレスシートに「科学の論理兵器によって異界へと押しやられた『奇跡と偶然』を健全に回復しようというのが本作の試みです」と書いているが、その一文の通り、本作には「意味を持った偶然」「ありえないような出来事」が次々と起きる[3]。つまり、リアルに描かれているように見える現実の東京のホームレスの生活の中に、「奇跡と偶然」という「虚構」が平然と入り込んでくるというのが本作の趣向であり、現実にはあり得ない出来事の連続を、いかにもありえそうな現実味と説得力をもって描いてみせるというのが本作の狙いである[3]

ホームレスは言葉通り、「家がない」ということだが、この作品においては単に「 “家”を失った人」というだけではなく「“家族”を失った人」という意味で捉えており、そういう意味で本作は「失った家族との関係を回復する物語といって良い」と今は語っている[5][13]。夢のある映画やアニメには相応しいとは言い難いホームレスを主人公に設定したのは、この企画を思いつく以前から今がホームレスという存在が気になっていたからである[14]。「豊かな時代であっても生まれてしまうが、同時に世の中が豊かであるがゆえに養われ得る存在である彼らは、街(都市)に生かされているのではないか」と思ったのが作品の発想のきっかけのひとつだった[14]。もうひとつは、都会の建物や路地にも魂は宿るのではないかという都市におけるアニミズム的考えで、主人公たちは都市に重なる異界に踏み込んで行くという発想であった[14]。今は、疑似家族のように暮らしているホームレスの3人が赤ちゃんを拾って親元に返そうとする話を軸に、彼らが奇妙な偶然が連鎖する異界に踏み込み、その道中に出会う人々や事件を通して、彼らが家族や社会との関係性を回復して行き、そんな彼らを「東京」というもう一人の主人公が見守っているという話をイメージした[14]。実際にエアコン室外機や窓などを目や口に見立てた「顔に見える風景」がさまざまなカットに仕込まれていて、それらは主人公たちを見つめる、町に住む八百万の神の姿とでもいうべきもので、その点で本作における「世界観」を表しているものだと考えられる[15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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