条約
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条約法条約にいう「批准」は国際法上の批准である、条約に拘束されることについての国の同意を国際的に表明する国際的な行為であって、その同意は、批准書の交換または寄託によって確定的なものになる[6]。日本国憲法上の「批准」は、「条約として署名調印された国家間の合意を承認し、条約となるべき国家意思を確定させるための行為」であるとされており、これを行う権能は内閣に属し、天皇日本国憲法第7条8号に基いて批准書を認証する(国事行為)。批准は、天皇の批准書の認証時に完成する要式行為である[6]
加入(かにゅう)/: accession加入は、条約に署名をしていない場合に、条約の規定に拘束される意思があることを正式に宣言する行為。具体的には、国会あるいは議会の承認を得る等の所定の国内手続により条約に拘束されることに同意することの確認を行い、加入書を作成し、会議開催地国の政府あるいは国際機関に加入書を寄託することで確定される。日本の場合、手続の容易性から、批准よりも加入の手続きを踏むことにより、条約に拘束される意思を表明する場合が多い。また、署名のために開放される期間が終了した後に条約を締結する場合には、条約に署名することはできないので、必然的に批准等ではなく加入等の手続を取ることになる。
受諾(じゅだく)/: acceptance詳細は「条約の受諾」を参照受諾は基本的に批准に近い手続である。日本の場合、批准書には天皇の認証が必要とされるのに対して、受諾書の作成の場合は不要である点で相違する。[7]このため、近年は重要な条約を締結する際にも、批准に代えて受諾の手続が取られることが多い(例:京都議定書)。
効力発生のために必要とされる国内手続が完了したことを確認する通告(又は公文の交換)。
自由貿易協定や社会保障協定等の場合、国により議会承認が必要な場合と行政府限りで可能な場合があるため、批准や受諾のように双方が同一の形式を行えない場合がある。このようなときに、効力発生のために必要とされる国内手続が完了したことを通知通告(又は公文の交換)の形式がとられることがある。(例:図書に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定)。
留保(りゅうほ)/: reservation、解釈宣言(かいしゃくせんげん)/: declaration留保は、条約の締結にあたって、一部の条文の規定に拘束されない意思を表明する行為であり、解釈宣言は、条約の締結にあたって、条約の特定の条文についてのその国の解釈を対外的に明らかにする宣言である[8]。留保や解釈宣言を認めることは、条約の運用の柔軟性を高め、多くの国の締結を促す効果があるが、その反面で条約本来の意義を減じることにもなりかねず、留保や解釈宣言を行った国に対して内外から批判が寄せられることがある。日本が、留保及び解釈宣言を行っている例としては、国際人権規約児童の権利に関する条約がある。
多数国間条約の発効多数国間で結ばれる条約の場合、条約が発効する要件として、批准書・加入書等を寄託した国が一定数に達する等の所定の条件を満たしたときに初めて締約国に対して効力を生ずるのが通例である。条約発効の要件は条約の規定中に記載されているのが常である。条約の発効要件によっては、各国の批准・加入等の進行状況や政治をとりまく状況の変化により条約の署名から発効までに数年から十数年を要するものや、未発効のままで終わるものもある。近年のこのような例としては、包括的核実験禁止条約などがある。包括的核実験禁止条約の例では、1996年に国連総会で採択されたが、2008年時点では条件を満たしておらず条約は発効していない。条約の発効後に条約を締結した国に対する効力の発生についても、それぞれの条約で定められており、通常、批准書等の寄託と同時に効力を発生するか、寄託から一定期間経過後に効力を発生するとしているものが多い。
枠組条約枠組条約は、基本的な構成と意志決定メカニズムのみを定めた条約で、具体的な内容は議定書等で展開される。例:気候変動枠組条約たばこ規制枠組条約
条約と国内法の関係
学説の対立

国内法と国際法の関係については二元論や一元論などが主張されている[3]

二元論(dualism)二元論はドイツのトリーペルやイタリアのアンツィロッティが主張した理論で、国内法と国際法とは次元の異なる別個の法体系であり抵触する関係にはないとする立場[3]。二元論では条約が国内的効力をもつには国内法として置き換える手続が必要と解する[3]

一元論(monism)一元論は国際法は国内的にも適用される法規範であるとする立場[3]

国内法優位論国内法は国際法に優位するとする立場。

国際法優位論国際法は国内法に優位するとする立場。


等位理論国際法と国内法は等位の関係にあり、各国は義務の抵触を調整する義務を負っており、その解決は各国の裁判所等に委ねられているとする立場[3]

条約の国内的効力

国際法のうち、英米法の国では慣習国際法については国内措置をとらなくても国内法としての効力を認めており、日本でも「確立された国際法規」(日本国憲法第98条2項)は特別の変型手続が無くても国内法としての法的拘束力を認める[3]

これに対し、一般の条約の国内法秩序への編入方式には、国際法に直接的な国内的効力を認めず国内法での別個の立法措置を必要とする変型方式(イギリス、カナダなど)と、国際法にそのまま直接的な国内的効力を認める一般的受容方式(アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、日本など)がある[3]

日本国憲法第73条第1項第3号は、条約を締結することを内閣の職務としており、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とするとしている。日本国憲法第73条第1項第3号にいう条約(国会承認条約)とは、法律事項を含むもの、財政事項を含むもの、その他政治的に重要であり、それ故に発効のために批准を必要とすることが締約国の間で合意されている国際約束をいう[9][1]。また、日本国憲法第98条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」としている。日本国憲法第98条第2項にいう「条約」は、日本国憲法第73条第1項第3号にいう「条約」よりも広く、日本が締結した全ての国際約束をいう[9]。締結した条約は、天皇国事行為として公布を行う(憲法第7条)。
条約の優劣

国内法秩序における条約の優劣は各国で異なる。

一部の条約に憲法に優位する効力を認めている国(オランダ、オーストリア)
[3]

条約に憲法に対しては劣位、法律に対しては優位する効力を認めている国(日本、フランスなど)[3]

条約を法律と等位の効力とする国(アメリカ、スイス、韓国など)[3][10]

条約は憲法や議会制定法に抵触しない限り国法上の効力を有するとする国(ナミビア、南アフリカ)[3]

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 条約法に関するウィーン条約を「条約法条約」、国と国際機関との間又は国際機関相互の間の条約についての法に関するウィーン条約を「国際機関条約法条約」、条約についての国家承継に関するウィーン条約を「条約承継条約」とそれぞれ表記するのが一般的である(国際法事例研究会(2001)v頁)。
^ : executive agreement、administrative arrangement
^ : conventional agreement

出典^ a b 長谷部恭男(2008)395頁。
^ a b c d e 經塚(2004)
^ a b c d e f g h i j k l m “「憲法と国際法(特に、人権の国際的保障)」に関する基礎的資料”. 衆議院. 2017年3月3日閲覧。


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