条例
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法令が全国一律の均一的な規制をしているとき :条例による規制はできない工作物除却命令無効確認(最高裁判例 昭和53年12月21日)条例において、河川法が適用河川又は準用河川について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許されない。

法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき :条例による規制ができる徳島市公安条例事件(最高裁判例 昭和50年9月10日)



条例で定めることができる罰則

条例により課せられる罰則は、地方自治法14条第3項の規定により、2年以下の懲役禁錮、100万円以下の罰金拘留科料もしくは没収(以上刑罰)又は5万円以下の過料に制限されている[注釈 3]

刑罰を定めるには、法律の授権が相当程度に具体的であり、限定されていることが必要である(最高裁判例[3])。

刑罰を盛り込む条例を制定する場合は、事前に検察官地方検察庁)との協議を行うことが慣例となっている。これは、検察官のみが刑罰の起訴ができる権限がある(刑事訴訟法第247条)ため、協議せずに条例制定をし、条文の不備等で起訴できないことになれば、刑罰を盛り込む意味がなくなってしまうためである。

なお、刑罰とは刑法第9条の罪(上記のうち、過料以外)を意味し、条例で定めることができる罰則のうち、過料のみが刑罰以外(=検察協議不要)で、地方自治体の長が不利益処分の形で適用できる(地方自治法第149条ほか)。
条例で定めるもの

都道府県庁の位置(4条)

町村総会の設置(94条)

定例会の回数(102条)

副知事及び副市町村長の定数(161条)

職員の定数(172条)

地域自治区の設置(202条の4)

分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項(228条)

公の施設の設置、管理及び廃止(244条の2)

知事の事務の市町村への委任(252条の17の2)

政令指定都市における総合区の設置委任(252条の20の2)

条例の限界
国の法令との抵触と要綱への依存

前述のとおり、既に国の法令で規制されている領域においては条例の制定がかなりの程度で制限され、かつ国の法令の規制が及ぶ範囲は相当に広範かつ詳細にわたることから、地方自治体が独自の観点で条例により規制を行うことができる分野は限られたものとなっており、地方行政のいずれの分野においても、その根幹は国政での立法によって規定・規制されている[注釈 4]

また、条例の制定により国の法令との抵触が生じることを回避するため、条例とは異なり法的な位置付けがない要綱を定め、任意の協力を前提とした行政指導を行うことによって行政上の所定の目的を達しようとする手法が、多くの自治体で用いられている。しかしながら、要綱は何ら法的根拠を伴うものではないことから、それに違反する者に対して強制力を有しておらず、また行政指導に従わない者に対して水道の供給を停止することにより行政指導に事実上の強制力を持たせようとして裁判になった事例において、自治体が敗訴する(最高裁平成元年11月8日第二小法廷決定)など、今日では要綱による行政には一定の限界があることが認識されるに至っている。
条例(例)(旧準則)への依拠

現在地方自治体で制定されている条例の多くは、国の法令により委任されている事項を定めたものもあり、またその条例の内容も国や都道府県が参考のために提示した条例(例)(昔で言う準則)あるいはモデル条例と呼ばれる雛形に沿って制定されることが多い。これらは、人員・能力の点から条例制定への対応に困難が伴う自治体にとっては有用である半面、雛形であるがゆえにその内容はニュートラルなものであり、これに依拠する限り個別的な地域のニーズに対応した条例の制定は困難となる側面がある。なお、国等が示す条例(例)(旧準則)には、地方自治体への法的拘束力はない。
複数の条例間の対立

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2010年3月)

上述のとおり、国の法令からのモデル条例が複数制定されると、その自治体の現状を反映しないため、条例間に齟齬が生ずることがある。
自治体における意識・体制

実際に生じている課題に対応することがまず求められるという地方自治行政の特性や、そもそも条例自体なくとも行政活動は可能であるとの意識などから、独自の条例制定が活発に行われず、その結果各自治体において条例制定の技術や体制が発達していないとの指摘もある。
実効性の確保

前述のとおり条例で規定できる行政罰は2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収に限られており(14条)、また直接強制や課徴金などの強制手段を規定することは現行の地方自治法上認められていないことなどから、条例による規制は法律によるそれと比べて事実上その実効性が弱く、検察当局との連携強化など実務上の運用改善を含め、実効性の確保をいかに図るかが課題である。条例に違反した等の場合に、その事実や氏名等を公表することによって社会的制裁を科することで条例の実効性確保を図る例がある。
地方分権改革推進会議での提言

地方分権改革推進会議が平成16年5月に出した「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」においては、法令面での地方の権限強化として、以下のとおり提言がなされている。

「地域の実情に応じた行財政運営を実現する観点からは、法令による全国一律の規制の弾力化と条例の機能強化等、法令面での地方の権限を強化するための制度の在り方を検討することが必要である。」

自治事務については、地方公共団体の自主性を阻害しないよう国の法令は基本的な制度設計にとどめることとし、それ以外の自治事務の処理に必要な事項については個々の法令において条例への授権範囲を大幅に拡大していくべきであり、地方の実情に応じて設定すべき基準等は、地方公共団体が条例で定められるようにすべきである。さらに、自治事務については、福祉、教育やまちづくり等の主要分野を中心として、個々の法令における条例への授権範囲の拡大に加え、条例に委ねるべき範囲の一般原則・基準を設定して包括的に条例への授権範囲を拡大することや、条例が一定の範囲内で政省令に規定された内容の弾力化を図りうる仕組みづくりといった地方公共団体の立法機能の強化に向けた方策も検討すべきである。その際には、市町村が処理する自治事務に関する都道府県の条例と市町村の条例の関係についても、必要に応じて同様の見地から検討すべきである。なお、これらの検討を行う際は、憲法上の問題を含めた議論が行われるべきである。」
地方自治行政における政策法務

地方分権一括法による改正をはじめとする地方分権改革の進展により、地方自治体の条例制定権が一定程度強化されたことに伴い、地方自治体の政策形成及びその実現のための手段として条例制定権(自主立法権)を積極的に活用しようという、いわゆる政策法務が近年注目されている。従来の自治体における法務は、既存の法令の解釈や争訟事務などが中心であり、政策的観点からの自主立法権の活用という視点が乏しかったことから、政策法務の進展は自治体における法務行政の質的な変化をもたらすものといえる。

今後この政策法務に対する取り組みが進展するためには、制度面として地方分権の推進・強化が必要とされるほか、自治体においては企画力・法的素養について一層の涵養が求められよう。
例規集の公開

自治体における条例や規則等の総称を例規と言い、それらをまとめたものを例規集と言う。近年は、データベース化して、ウェブページ上で公開している自治体も多い。
主な条例
主な条例(一例)

位置条例

公告式条例

情報公開条例

名誉市民条例

監査委員条例

公平委員会設置条例

個人情報保護条例

地方税条例

国民健康保険条例

介護保険条例

手数料条例

行政手続条例


議会議員定数条例

消防本部・消防署等設置条例

消防団設置条例

福祉事務所設置条例

迷惑防止条例

青少年保護育成条例

環境基本条例

消費生活条例

景観条例

政治倫理条例

職員倫理条例

職員給与条例


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