首長は再可決された条例案が法律と矛盾すると考えるとき、市区町村の場合は知事に、都道府県の場合は総務大臣に審査を申し立てることができる。審査者が法律との矛盾を認めた場合、条例案を再可決した議決は取り消される。首長または議会は、審査結果に不服がある場合は裁判所に訴えることができる(176条第5・6・7項)。
専決処分
議会が成立しないとき等は、普通地方公共団体の長は、その議決すべき条例を専決処分することができる(179条)。 先に述べたとおり条例は法律の範囲内において制定することが日本国憲法に定められており、これに加え14条第1項 条例により課せられる罰則は、地方自治法14条第3項の規定により、2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料もしくは没収(以上刑罰)又は5万円以下の過料に制限されている[注釈 3]。 刑罰を定めるには、法律の授権が相当程度に具体的であり、限定されていることが必要である(最高裁判例[3])。 刑罰を盛り込む条例を制定する場合は、事前に検察官(地方検察庁)との協議を行うことが慣例となっている。これは、検察官のみが刑罰の起訴ができる権限がある(刑事訴訟法第247条)ため、協議せずに条例制定をし、条文の不備等で起訴できないことになれば、刑罰を盛り込む意味がなくなってしまうためである。 なお、刑罰とは刑法第9条の罪(上記のうち、過料以外)を意味し、条例で定めることができる罰則のうち、過料のみが刑罰以外(=検察協議不要)で、地方自治体の長が不利益処分の形で適用できる(地方自治法第149条ほか)。 前述のとおり、既に国の法令で規制されている領域においては条例の制定がかなりの程度で制限され、かつ国の法令の規制が及ぶ範囲は相当に広範かつ詳細にわたることから、地方自治体が独自の観点で条例により規制を行うことができる分野は限られたものとなっており、地方行政のいずれの分野においても、その根幹は国政での立法によって規定・規制されている[注釈 4]。 また、条例の制定により国の法令との抵触が生じることを回避するため、条例とは異なり法的な位置付けがない要綱を定め、任意の協力を前提とした行政指導を行うことによって行政上の所定の目的を達しようとする手法が、多くの自治体で用いられている。しかしながら、要綱は何ら法的根拠を伴うものではないことから、それに違反する者に対して強制力を有しておらず、また行政指導に従わない者に対して水道の供給を停止することにより行政指導に事実上の強制力を持たせようとして裁判になった事例において、自治体が敗訴する(最高裁平成元年11月8日第二小法廷決定)など、今日では要綱による行政には一定の限界があることが認識されるに至っている。 現在地方自治体で制定されている条例の多くは、国の法令により委任されている事項を定めたものもあり、またその条例の内容も国や都道府県が参考のために提示した条例(例)(昔で言う準則)あるいはモデル条例と呼ばれる雛形に沿って制定されることが多い。
法律と条例の関係
また、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。また、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない(2条16項)。
国の法令が全く規制していない領域 :条例で任意の規制ができる
既に国の法令が規制をしている領域
法令の執行を妨げるとき :条例による規制はできない
法令の規制とは別目的の規制 :条例による規制ができる
法令の規制と同一目的の規制
法令が全国一律の均一的な規制をしているとき :条例による規制はできない工作物除却命令無効確認(最高裁判例 昭和53年12月21日)条例において、河川法が適用河川又は準用河川について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許されない。
法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき :条例による規制ができる徳島市公安条例事件(最高裁判例 昭和50年9月10日)
条例で定めることができる罰則
条例で定めるもの
都道府県庁の位置(4条
町村総会の設置(94条)
定例会の回数(102条)
副知事及び副市町村長の定数(161条)
職員の定数(172条)
地域自治区の設置(202条の4)
分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項(228条)
公の施設の設置、管理及び廃止(244条の2)
知事の事務の市町村への委任(252条の17の2)
政令指定都市における総合区の設置委任(252条の20の2)
条例の限界
国の法令との抵触と要綱への依存
条例(例)(旧準則)への依拠