束柱目
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1898年、日本の古生物学者・吉原重康(しげやす)[2]および岩崎重三(じゅうぞう)[2]と共同研究中であったヘンリー・フェアフィールド・オズボーンが、頭蓋骨における初期のマストドン類との類似性から、長鼻目起源説を提案した。ジョン・C・メリアム(John C. Merriam, 1869 - 1945)は臼歯の構造に基づいて、デスモスチルスが水棲の動物であり、恐らくは海牛目であろうと結論づけた。他の科学者たちは単孔目説を唱えた。なぜならば当時デスモスチルスは頭蓋骨の破片・歯・他の骨のごく一部しか発見されておらず、身体的特徴としてはひれ足と尾びれを有することが推測されていたに過ぎなかったからである。しかしながら1941年樺太で発見された完全な骨格は、彼らがカバのそれと似た太い四本の脚を持っていたことを明らかにし、1953年にはロイ・H・ラインハルト(Roy H. Reinhart)により束柱目という目が新設された。
分類

束柱目の下位分類を示す[3]

デスモスチルス科 Desmostylidae

アショロア Ashoroa (後期漸新世)

コルンワリウス Cornwallius (後期漸新世)

デスモスチルス Desmostylus (前期 - 中期中新世)


パレオパラドキシア科 Paleoparadoxiidae

ベヘモトプス Behemotops (後期漸新世)

パレオパラドキシア Paleoparadoxia (前期 - 中期中新世)


他の分類群との関係

ゾウマナティーを除けば、デスモスチルスは現存のいかなる動物とも似ていないが、より後期の種類は水中生活により適した身体構造をしていた。[4] ダグラス・エムロング(Douglas Emlong)は1971年にオレゴン州で新属Behemotopsを発見し、初期の束柱目が後期の種に比べ、より長鼻目に類似した歯と顎を持っていたことを明らかにした。しかしこの発見にもかかわらず、海牛類及び他の有蹄類との関係は未解明なまま残されている。束柱類はアフリカ獣上目における植物食有蹄動物群である近蹄類に属すとされ、その中のテティス獣類(長鼻類や海牛類も含まれるグループ)の一員であるとみなされている。束柱類の特徴的な歯は長鼻類や海牛類と同様水平交換方式であった。従来から束柱類は始新世前期の南アジアに生息していたアントラコブネ(Anthracobune)に起源を発するとされてきた。しかし、テティス獣類と見做されてきたアントラコブネが原始的な奇蹄類として分類され直されたのに伴い、その近縁の子孫とされてきた束柱類も実はテティス獣類ではなく奇蹄類の一員だったのではないか、という見方もあり、その分類上の位置は未だに安定しているとは言い難い。

デスモスチルスは体長[4]1.8 m、推定体重200 kg超まで成長し、最大の種類は頭骨のサイズ等からステラー海牛に匹敵した可能性がある。
絶滅

海棲に適応した哺乳類のグループとして束柱類、海牛類鯨類鰭脚類イタチ科およびイタチ亜科[5]、水棲のナマケモノ類の六つが挙げられるが、このうち束柱類の生存が確認されるのは比較的短い期間であり、棲息域や種の数においてもあまり大きなグループではなかった。その絶滅原因は地球の寒冷化が進んだためではないかとされるも、はっきりしたことは解っていないが、いくつかの理由から海牛類との競合があったことが判明している。[6]束柱目の減少と共に海牛類の多様性が増加しており、より後期の束柱目が水中形態への適応が進んでいたのは海牛類への対抗もあったと思われる。束柱目含む他の水棲の草食哺乳類が海草類を主食にしていたのに対して北太平洋の海牛類がコンブに適応していたことが主だったファクターだったと思われる。[4]
写真

パレオパラドキシアの復元図

デスモスチルスパレオパラドキシアの復元図

デスモスチルスの歯

Neoparadoxia cecilialina の骨格標本 (ロサンゼルス自然史博物館)

パレオパラドキシアの骨格標本

脚注^国立科学博物館 デスモスチルス
^ a b たかしよいち『まぼろしの怪獣 - デスモスチルス発見物語』偕成社、1971年
^ 冨田幸光、伊藤丙雄、岡本泰子『新版 絶滅哺乳類図鑑』丸善出版、2011年1月30日、148-149頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-621-08290-4


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