未来
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人は空間の三つの次元においてはそれぞれ二つの向きに進めるが、時間に関しては一つの向きにしか進めないと多くの物理学者は主張する[7]

特殊相対性理論の帰結の一つとして、光速度に近づくにつれて、観測者の時間を遅延させことが出来るというものがある。このとき、観測者以外の世界では時間が進んでいるため、結果的に未来へ行ける(ただし帰ってくることはできない)というものがある。この効果は通常の条件では無視できる程度のものだが、無限のエネルギーによる光速度へ近似した場合、時間停止に近似した状態となる。

超高速での宇宙旅行においては時間の流れが大きく変わる。多くのサイエンス・フィクション(例えば『デジャヴ』)に描かれているように短時間であっても亜光速で移動するとずっと未来の地球に帰還することになる。

GPSなどの測定ではこの時間誤差を補正しなければ正しく位置観測が行えない。

ワームホールを用いて時空上の二つの場所を結び付けると理論上は時間旅行ができると主張する物理学者もいる。物理学者ミチオ・カクはこの理論上のタイムマシンに力を与えて「時空の構造内に穴をあける」ためには星一個分のエネルギーが必要だと指摘した。また別の理論では宇宙ひもによって時間旅行ができるという。
哲学「未来に関する問題はそれが過去よりもずっと知りがたいということだ」 ジョン・ルイス・ギャディス、『歴史の風景――歴史家はどのように過去を描くのか』[8]

時間の哲学における現在主義とは現在だけが存在して未来や過去は実在しないという立場である。存在は論理的構造あるいはフィクションだと解釈される。現在主義と対立する立場として永遠主義があり、過去のものや未来のものも永遠の内に存在すると考える。(多くの哲学者は支持しないが)時間の成長するブロック宇宙理論(英語版)と呼ばれることがある立場もある?これは過去と現在は存在するが未来は存在しないと考える[9]

現在主義はガリレイ流の、時間は空間から独立でないとする相対主義とは調和するが、多くの人が議論の余地のないものと考える別の哲学的命題と組み合わさっているローレンツアインシュタインのような相対主義とは矛盾する可能性がある。一方ヒッポのアウグスティヌスは、現在とは過去と未来の境界であり広がりのある時間をそのうちに含まないと主張した。

アウグスティヌスに対立する意見として、意識的経験こそが時間の中で広がりを持つのと主張する哲学者もいる。例えばウィリアム・ジェームズは、時間とは「短い持続であり、我々はこの持続の中で直接的・持続的に経験を得ることができる[要出典]」と述べた。また、アウグスティヌスは神は時間の外部に存在して永遠の中で常に現存しているとも主張している。古い時代の現在主義哲学者には仏教徒(インド仏教の流れにおいて)もいる。仏教哲学の現代の主導的な研究者にTheodor Ippolitovich Stcherbatskyがおり、仏教の現在主義に関して広範な著述を行っている。:

「過ぎ去ったものは実在せず、未来のものも実在せず、想像されたもの、ここにないもの、心的な物も[...]実在せず[...]究極的に実在するものは現在存在する物理的な能動性の(つまり因果作用の内にある)運動だけである[10]。」

心理学

動物行動学者は動物の行動は信号刺激やその動物が過去に獲得した別の習性に大きく依拠すると考えるが、人間の行動は未来に対する予想と関係することが知られている。予想に基づいた行動は例えば楽観主義悲観主義希望のような心理学的な将来観の産物である場合がある。

楽観主義とは世界を肯定的な場所だと見なす人生観である。楽観主義はコップに水が半分しか入っていないのではなく「半分満たされている」と考えるものだとされる。楽観主義は悲観主義の反対の立場である。楽観主義者は人々や物事は本来良いものであるからほとんどの状況は最後には上手くいくものだと考えがちである。希望とは人生の中の出来事や状況から良い結果がもたらされると信じることである。希望はある量の絶望、欲望、期待、渇望、あるいは忍耐を暗示する―つまりその悪い結果が起こると考える根拠があるときですら良い結果が起こりうると信じることである。「希望に満ちていること」は希望とは感情の状態である点で楽観主義とはややことなる。対して楽観主義は肯定的な態度を導く慎重な思考の傾向を通じて到達できる。
宗教

宗教ではカルマ来世終末論といった時間の終わりや世界の終わりはどうなるかを研究する話題を扱う際に未来が考察される。宗教では多くの預言者が未来を変える力があるとされる。有名な宗教的人物は予言者占い師のように未来が見通せると主張する。「来世」という言葉は幽霊のように人間(あるいは動物)が肉体的な死を迎えたのちもその霊魂精神が存続することを指して用いられる。たいていの場合死んだ人は生きている間の行動の正しさに応じて特定の領域つまり存在の地平面に行くとされる。

死後の世界には霊魂が別の肉体に移る(転生)ためのある種の準備を含むと信じる者もいる。死後に関する思想の多くは宗教秘教形而上学に由来する。一方、こういった問題は超自然的であるから実在しないかあるいは知りえないと考える唯物論的還元主義者のように、死後の世界の存在に懐疑的であったり究極的には存在しないと考える人々もいる。形而上学モデルとしては、概して無神論者は来世が死んだ人を待ち受けると考えている。仏教のように非-有神論的な宗教の信者の中にはを前提とせずに転生のような死後の世界を想定しがちな者もいる。

不可知論者は一般的には、神の存在のように霊魂や死後の生のような超自然的現象は証明不可能なので知りえないという立場をとる[11]。多くの宗教は、キリスト教イスラームその他のように別の世界でも霊魂が存在すると考えるか仏教やヒンドゥー教の多くの宗派のようにこの世界の中で転生を繰り返すと考えるかに関わらず、死後の状態は生前の行いの報酬あるいは懲罰であると考える。この例外としてキリスト教プロテスタントカルヴァン主義は例外であり、死後の状態は神の恩恵であって生前の行いによって獲得できるものではないと考えられる。

終末論神学哲学の一分野であり、一般に世界の終わりと呼ばれる世界の歴史の最後に来る出来事や全人類の究極的な運命を扱う。神秘主義においてはこの語は通常の存在の終了と神への再結合を比喩的にさすが、多くの伝統宗教では聖典伝承に予言されたこの世界で未来に起こる出来事であると説かれる。より一般的には終末論は預言者や預言者の時代、終末のような概念を扱う。
芸術・文化
未来派

未来派は20世紀初頭のイタリアに起こった芸術運動である。主にイタリアとロシアの運動であったがイングランドポルトガルのような他の国でも支持者がいた。未来派絵画彫刻詩歌演劇音楽建築さらには美食といったあらゆる芸術形式を探求した。未来派は過去の思潮、特に政治・芸術における伝統を毛嫌いした。また彼らはスピード・技術暴力といったものへの愛を支持した。未来派は過去を愛することを「懐古趣味」(: passeisme)と呼んで軽蔑した。自動車・飛行機・産業都市こそが未来派の称賛するものであった、というのは人間の自然に対する技術的大勝利を表していたからである。『未来派宣言』はこう述べている: 「我々は戦争―世界の唯一の健康法―、軍国主義、愛国主義、自由をもたらす破壊行為、命を捨てるに値する美しい思想、女性差別を称賛する[6]。」 未来派はその多くの特徴といくつかの思想を過激派の政治運動に負っていたが、1913年秋までは政治にあまり関わっていなかった[12]

20世紀の音楽における多くの古典的な運動の一つは機械を愛し、機械を取り入れ、機械を模倣していた。はっきりとイタリアの未来派運動の中心人物と目されていたのが兄弟の作曲家ルイージ・ルッソロアントニオ・ルッソロである。彼らはイントナルモーリという楽器を使用したが、これは基本的にはノイズを作りだすサウンドボックスであった。ルイージ・ルッソロの未来派宣言『騒音芸術』20世紀の音楽美学中で最も重要かつ影響力ある文献の一つとされている。他の未来派音楽としては蒸気機関車の音を模したアルテュール・オネゲルパシフィック231、プロコフィエフの『The Steel Step』、Edgard Vareseの実験音楽などがある。

未来派文学はフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティの『未来派宣言』(1909年)とともに始まった。未来派の詩はイメージや極端な簡潔さ(詩の実際の長さのことではない)の予期せぬ組み合わせを用いる。未来派の劇作品は節の数は少ないがひとつひとつが長く、無意味なユーモアを織り交ぜ、パロディを用いて歴史の長い演劇の伝統を傷つけようとする。小説のようなより長い文学形式が未来派の美学に占める位置はなかった。というのは未来派美学はスピードと圧縮に執心していたからである。

未来派は別の芸術領域へのかかわりを広げていき、最終的には絵画、彫刻、陶芸、グラフィックデザイン、工業デザイン、インテリアデザイン、劇場設計、織物、演劇、文学、音楽、建築を包摂するに至った。未来派建築は先進的な建材を用いることで合理主義モダニズムに対して独特の批判をした点に特徴がある。未来派の理念は現代の西洋文化の重要な構成要素として残存している; 若さ、スピード、科学技術を強調して現代の多くの商業的な映画・文化に表現を見いだすこと。未来派に対して起こったいくつかの応答のうちの一つに1980年代の文学のジャンルであるサイバーパンク―科学技術がしばしば批判的な視点で扱われる―がある。
サイエンス・フィクション(SF)2000年のパリの人々がオペラを後にして空中旅行をするという未来予想図。


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