未来世紀ブラジル
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※テレビ朝日版日本語吹替は20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン発売のBDに収録(正味約121分)。
スタッフ

監督:
テリー・ギリアム

製作:アーノン・ミルチャン

脚本:テリー・ギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオン

撮影:ロジャー・プラット

編集:ジュリアン・ドイル

音楽:マイケル・ケイメン

プロダクションデザイン:ノーマン・ガーウッド

特殊効果スーパーバイザー:ジョージ・ギブス

ミニチュアエフェクトスーパーバイザー:リチャード・コンウェイ

衣裳デザイン:ジェームズ・アシュソン

美術:ジョン・ベアード、キース・ペイン

日本語版スタッフ

字幕:戸田奈津子


作品解説

『マキシム』誌によると、ギリアムはこの映画の撮影中あまりにストレスを感じたため、両脚の感覚が1週間、完全に麻痺したという。
テーマ

ギリアムはこの映画を、『バンデットQ』(1981年)に始まり『バロン』(1989年)で終わる「3部作」の2作目と称している。これらの映画の共通テーマは、「ぶざまなほど統制された(awkwardly ordered)人間社会の狂気と、手段を選ばずそこから逃げ出したいという欲求」である。

映画に描かれた政府の全体主義的な官僚政治は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に似ている。ギリアムはこの映画について「『1984年』にインスパイアされているが、オーウェルの小説を再現するのではなく今日的な視点から未来を描いたものである」と語っており、また「ウォルター・ミティジェームズ・サーバー著の短篇小説の登場人物)とフランツ・カフカの出会い」とも述べている。ギリアムの言葉によれば、『未来世紀ブラジル』は「1984年版『1984年』」である。実際に、この映画の制作中のタイトルは『1984 1/2』だった。またギリアムは1984だけでなく、ヴィジュアル・スタイルに関しては、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』にも影響を受けていると語っている[2]。『ブラザーズ・グリム』プロモーションで来日した際、ギリアムは「企業と政府の体制を維持するため如何にテロリストが必要とされるか、という『ブラジル』のテーマが現代アメリカの問題に重なる。戦争を正当化するためテロが用いられているところなどそっくりだ」と発言している。
キャスト

ロバート・デニーロは当初ジャック役を希望していたが、ギリアムはすでにその役をマイケル・ペイリンに約束していた。デニーロがそれでも出演を希望したため、タトル役に決まった。

ギリアム監督の次女が、マイケル・ペイリン演じるジャックの娘役でワンシーンに登場している。
音楽

この映画では全編に渡ってブラジルの作曲家・アリ・バホーゾ(英語版)が1939年に作詩・作曲したサンバ「ブラジルの水彩画(英語版)」("Aquarela do Brasil"、英語圏では"Brazil"の名で知られる)が使われている。それ以外のBGMは、『バロン』でも音楽を担当したマイケル・ケイメンが作曲した[3]。この映画の「ブラジル」のベースラインが「ジェームズ・ボンドのテーマ」とよく似ていることを発見し、家路につくサムの場面に『007』調の音楽を付けた。4年後には『007 消されたライセンス』で本当に同作の音楽を担当することになる。

サムの職場の従業員が見る映画には、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の、王子救出のためにランスロットが城を襲撃するシーンの音楽が使われている。この音楽は、ユニバーサル社シドニー・シャインバーグ編集の版では削除されている。
オマージュ

階段を床磨きマシンが落ちていくシーンは映画『戦艦ポチョムキン』の、「オデッサの階段」の乳母車が階段を落ちていくシーンのオマージュである。

ストーリー中盤、主人公サムの前に、甲冑を着けた巨大な「サムライ」が立ちはだかる。サムがサムライを倒して、甲冑を外すとその顔はサム自身の顔だった。これは、「Sam, You Are I(サム、お前は俺だ)」を短く発音すると「サムライ」になることからきているジョークである。

サムが劇中移動手段として使うひとり乗りの小型公用車はメッサーシュミットKR175をベースにしている。
その他

『未来世紀ブラジル』で特徴的なことは、その視覚イメージである。重要な役割を占める視覚的要素のひとつとしてダクトがある。サムのアパートには修理不能な空調設備を隠す金属パネルの壁がそびえ立っており、彼のヒーローは、この怪物のごとき空調を手なずけることのできる唯一の人物・修理工タトルである。ラウリーが母親、母親の友人、その友人の社交下手な娘とランチを食べるシーンでは、レストランの中央にフレックス・ダクト製の巨大なオブジェが飾られている。サムが珍しく(治安妨害のおそれもありながら)夜間にオフィスを訪れたときには、床磨きマシンがだだっ広い無人のロビーで爆発し、フレックス・ダクトをずるずると引きずることになる。

さらに、ダクトは社会階級の構造のモチーフにもなっている。労働者階級のバトルの家庭では、家族は日々の活動を邪魔するダクトをよけながら暮らさなければならない。サムの家ではダクトは見えないが、その存在は常に(故障時などは特に)意識せざるを得ない。記録省ではダクトは環境の一部として目に見えるが、従業員の頭上にある。情報省ではダクトはまったく存在しない(このことが最も顕著な特徴である。貧困と無力さはダクトの侵襲性と反比例する)。そして、すべてのダクトの末端は、独裁的な情報省に繋がっている。
エンディング

主人公は情報省に対し奇跡的な勝利を収め、恋人と田舎へ逃亡する。しかし現実は、主人公サム・ラウリーは大臣の拷問により発狂しており、彼の逃亡の夢は、傷つけられた心が見た幻想でしかなかったことが突如明らかにされる。テリー・ギリアム監督のオリジナル版は、絶望的な最期を迎える。

ユニバーサル・ピクチャーズの上層部はエンディングが不適切だと考え、ギリアムに最後の部分をカットするよう要求した。映画スタジオにより作成されたバージョンはこの映画の3年前に公開された『ブレードランナー』と同様に、消費者ウケのするハッピーエンドバージョンで、サムとジルが逃亡先で田園生活をはじめるという、いわば愛は全てに打ち勝つといったものだった。


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