婚姻(こんいん、英:conjugality[21])は、「夫婦となること[22]」「社会的に承認された夫と妻の結合[23]」という配偶関係の締結を意味する「結婚[22]」の意味以外にも、配偶関係の状態の意味も含めて指している言葉である[6]。本記事では「婚姻」「結婚」(英: marriage)における主に両性の配偶関係[24]の締結について解説する。 「婚姻」と「結婚」では、「婚姻」のほうが、学術的にも、法的にも、正式の用語として扱われている。 先述のように学術的には「婚姻」は配偶関係の締結のほか配偶関係の状態をも含めた概念として、「結婚」は配偶関係の締結を指し、用いられている[6]。平凡社世界大百科事典[23]やブリタニカ国際大百科事典[25]などの百科事典では「婚姻」を項目として立てている。 法概念としても「結婚」ではなく「婚姻」のほうが用いられている[26][27]。日本の民法上でも「婚姻」と表現されており(民法731条
定義
「婚姻」と「結婚」
一方、日常用語としては「結婚」という表現が用いられる頻度が増えている。広辞苑では「婚姻」の定義として、「結婚すること」とした上で、「夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が嫡出子として認められる関係」としている。
「結婚」の文字は「婚姻」の文字とともに漢籍を由来とし、日本では平安時代より用いられてきた。しかし、当時はどちらかといえば「婚姻」の文字の方が使用例が多かった。
明治時代になり、この関係が逆転して「結婚」の二文字が多く使用されるようになった[28]。中国では「婚姻」である。
「婚姻」の範囲、多様な意味
婚姻について説明するにあたって、まずその位置づけを広い視野で見てみると、男女の成人の性的関係というのは人類の発生以来人間関係の基礎的形態であり、それが成立するのに必ずしも規範や制度を必要としない[25]。
だが、社会がその男女の結合関係の成立を許容し承認するのは、これが婚姻という形態をとることによるのである[25]。婚姻というのは社会的に承認された夫と妻の結合なのであるが、ところがこの《夫》や《妻》の資格や役割については、各社会・各時代において独自に意味づけがなされており、比較する社会によっては、互いに非常に異なった意味づけを行っているものがある[23]。
よって上記の「社会的に承認された夫と妻の結合」という定義以上に細かい定義を盛り込むと、すぐにそうした定義文に当てはまらないような社会が見つかってしまう[23]。
例えば仮に婚姻を「一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係」などと定義してしまうと、日本などではこれは当てはまるものの、他の地域・文化ではこれに当てはまらない事例が多数見つかってしまう。
例えば南インドのナヤール・カーストにおける妻訪形式の男女関係は、性的関係に留まるもので、男は「生みの親」(en:genitor)にはなるものの、居住・生産・消費・子の養育・しつけなどには一切関与せず、社会的・経済的なつながりを持たないのである[23]。ナヤール・カーストでは子は父親のカーストの身分を得はするが、それ以上の社会的・経済的なつながりは一切なく、父親の葬儀にも参加しない[23]。
また、たとえば北アメリカのクワキウトル族では、首長の特権は(息子ではなく)娘の夫(義理の息子)を通じて孫に伝えられる。そして娘がない場合は、息子(男)が(娘の代わりに)他の男を「婿(むこ)」として迎え入れ、その結婚式は通常と全く同じ方式で行われ、その式を行ってはじめて婿は特権を譲り受けることができるのであり、つまりこの同性間の婚姻では、男女の性的な要素は全く含まれておらず、婚姻はあくまで地位や財産の継承の道筋をつけるために行われている[23]。
このように、「婚姻」(や「結婚」)という用語・概念は、社会によって全く異なった意味を持ちうる[23]。
個々人の婚姻状態の行政上の分類用語。「未婚」「有配偶」「死別」「離別」。「非婚」。分類の困難。
日本の行政機関の統計においては、「有配偶」という用語を使い、「未婚」「有配偶」「死別」「離別」で、結婚に関連する状態を分類していることが多い[29]。結婚していないことを「未婚」(みこん)、すでに結婚していることを「既婚」(きこん)と単純に分類することもあるが、これでは死別や離別について正しく把握できない点が問題となる。