朝鮮語
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漢字ハングル交じり表記は後の時代にも新聞の見出しや書物の表題、序文などに見られるが、それによって本文が書かれた書物[注 3]はほとんど存在しない。

日韓合邦後に、金沢庄三郎小倉進平の両博士を中心とする日本人言語学者は、近代朝鮮語の表記を科学的に体系化して言語として完成させた。

小倉博士の「朝鮮語学史」によれば、朝鮮が清の文化から離脱し独自性を強調するために国学・国文の使用を鼓舞しハングルを奨励しはじめたのは、1897年の日清戦争後からで、朝鮮が大韓帝国として清から独立してからであった[27]

朝鮮総督府は併合初期の1911年に、「諺文綴字法研究会」を発足させて、1912年に「普通学校用諺文綴字法」を定めたが、これはそれまでの民間の慣習的表記法を整理し成文化したものである。

正書法は「朝鮮語綴字法統一案」(1933年)など更に数度の修正を経て、2008年現在、韓国では「ハングル正書法」(1988年)、北朝鮮では「朝鮮語規範集」(1966年制定、1987年改正)が用いられている。南北の正書法共通の最大の特徴は、形態主義を採ることと分かち書きをすることである。

朝鮮語には連音同化などの音韻規則が豊富であり、一つの形態素が音韻的な環境によって別々の音声として現れることが多々ある。音声が異なっていても同じ形態素であれば、可能な限り同じ文字で表記しようというのが形態主義である。分かち書きの単位は日本語における文節に近いが、南北の現行の正書法では分かち書きの規定が互いに若干異なる。概して南は分かち書きを多用する傾向にあり、北は分かち書きが少ない傾向にある。

また、朝鮮語をラテン文字で表記する方法については朝鮮語のローマ字表記法を参照。
文法詳細は「朝鮮語の文法」を参照
形態論

インド・ヨーロッパ語族アフロ・アジア語族に見られるの概念はなく、性・数・の一致の概念もない。

名詞の格は格助詞によって表される。話し言葉では格を明示しなくても文脈上明らかであれば省略する。

一つの名詞が複数の格助詞をとることができる。二つの格助詞が組み合わさって新しい意味を持つこともある。

動詞は語幹のみでは文節を形成することができず、必ず終結語尾を必要とする。

動詞と終結語尾の間には時制アスペクト、主体敬語を表す先語末語尾を挿入することができる。

形容詞は動詞とほぼ同じ活用をする。また、日本語と異なり形容詞と形容動詞の分化はない。

冠形詞は名詞を修飾する不変化詞で、日本語の連体詞に相当する。

敬語には対者敬語、主体敬語、客体敬語の三つがあり、日本語の丁寧語、謙譲語、尊敬語にほぼ相当する。

名詞、助詞、動詞には敬語を表す特別な語彙(補充形)があり、敬語を表す名詞接尾辞、敬語を表す動詞(主体敬語を表す語尾先語末語尾と対者敬語を表す終結語尾)がある。

対者敬語を表す終結語尾は敬意の程度が6段階に分かれるが、そのうちよく使われるのは4段階のみである。

標準日本語の敬語はウチとソトの概念に関して相対的であるが、朝鮮語の敬語は序列(血縁的なものも含む)に関して相対的である。

(母に対して)????? ????.(お父さんがいらっしゃいました)

(祖父に対して)???? ???.(お父さんが来ました)


語彙

朝鮮語の語彙は大きく分けて固有語漢字語(古典中国語系語彙)、外来語の3つの階層から成り立っている。特に韓国における朝鮮語の外来語のほとんどは英語であり、固有語の上に漢字語(古典中国語系語彙)と英語などの欧米系借用語の2つの上層を持つという意味において日本語に似た語彙構造を持っているということができる。それぞれの階層の語が語彙全体の中で占める割合を日本語と比べた場合、固有語と外来語は割合がやや少なく、漢字語は割合がやや高い。

1層目の固有語は古来の朝鮮語である。全ての品詞に広く分布しており、朝鮮語の語彙の核であるが、日本語と同様基本語彙の中にも漢字語に侵食されているものがあり、その比率は日本語よりも高めである。たとえば、山を表す?/san/、川を表す?/ga?/はそれぞれ「山」、「江」であり、元々あった山と川を表す固有語(?, ??)は残存しているものの、意味の縮小と非日常語化を余儀なくされた。

近代以降は日本留学生が和製漢語を取り入れ始め、和製漢語に翻訳された西洋の近代用語を中心に漢字表記語の借用が行われた。日本語から流入した漢字表記語には、日本語においても音読みの「漢語」として存在したものだけでなく、「取扱」(とりあつかい)→??/chwig?p/、「引下(げ)」(ひきさげ)→??/inha/のように日本語では訓読みをしたものも含まれる。

漢字語は名詞動詞形容詞に見られる。名詞はそのまま取り込まれたが、動詞、形容詞は朝鮮語の活用体系に合わせるため、-??/hada/を付けて取り込まれた。これは日本語におけるサ変動詞、形容動詞がそれぞれ語幹に「?する」、「?だ・な」を付けて活用するのと同じである。

漢字の読音は日本語の場合とは異なり、1字に対してほぼ1つに統一されている。稀に1つの漢字が複数の音を持つ場合があるが、それは日本語の漢音呉音のように複数の時代の中国音を反映しているのではなく、中国語における一字多音を反映していることが多い[注 4]。たとえば、悪には?/ak/と?/o/の2つの読音があるが、?/ak/は「悪い」という意味であり、?/o/は「憎む」という意味であり、もともと中国語において存在した区別を反映している。なおこの場合、日本語ではアク・オ、普通話では e ・ wu に、それぞれ対応する。

三層目は(漢字語以外の)外来語である。韓国においては英語、北朝鮮においてはロシア語が主な輸入源となった。外来語を取り込む方法は漢字語に準ずる(名詞はそのまま、動詞、形容詞は??を付ける)。

その他の外来要素としては、主に植民地時代に流入した日本語と高麗末期に元朝から流入したモンゴル語がある。ここでいう日本語とは、朝鮮漢字音読みで取り入れられた和製漢語を除き、和語および日本語読みの漢語、外来語を日本語の発音に近い形で受け入れたものである。たとえば「勝負」は古典中国語由来の朝鮮漢字音で読む??/s??bu/という形で朝鮮語に定着している単語であるが、日本漢字音「ショウブ」に由来する??/sjobu/という形でも流入した。このようにして日本語から取り込まれた語彙には、「弁当」??/bentto/、「うどん」??/udo?/、「バケツ」???/bakkess?/などがあるが、韓国・北朝鮮の両政府はこのような日本語からの借用語を排除する政策を採ったため、現在では高齢者を中心に限られた範囲で俗語として扱われていることが多い。品詞は名詞、副詞が多く、副詞は本来の日本語が持っているニュアンスとは微妙に異なることが多い。これらの語彙は朝鮮語の語彙全体からして非常に低い割合でしかないが、日本統治時代の残滓と考えられたため問題視されたのである。モンゴル語は当時はかなりの影響力があったとする学説もあるが、現代ではごく僅かな特殊語彙に痕跡をとどめるのみである。

韓国と北朝鮮ではそれぞれ別々に言語政策を取ったため、2つの地域では語彙にも差が見られる(詳細は「朝鮮語の南北差」を参照)。また、中国の朝鮮族によって話されている中国朝鮮語は中国語の強い影響を受けている。中国語を朝鮮語音で読んで取り入れる場合もあれば、中国語音をそのまま取り入れる場合もある。たとえば、「卒業」は韓国においては同じ漢字を朝鮮語読みで??/chor?p/というが、中国では「??(畢業)」を朝鮮語読みして??/pir?p/という。また、「コンピューター」は韓国では英語に由来する???/k?mpjut?/だが、中国では「??(電脳)」の中国語音に由来する??/ttenno/である。中央アジアにおいてもロシア語の動詞 стрoйть(建てる)から不定詞語尾 -ть を取って代わりに-??を付けて ??????/s?t?reihada/[要出典]とするなどのロシア語流入が行われている。また、朝鮮語が輸入した英語であるコングリッシュには元の英語にない独自の英語の語彙も存在する。
使用国家
朝鮮語を公用語とする地域

※使用する人口が多い順

 
大韓民国

北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国

中華人民共和国

吉林省

延辺朝鮮族自治州

長白朝鮮族自治県


朝鮮語を主要外国語とする国

アゼルバイジャン

アメリカ合衆国

インド

インドネシア

ウズベキスタン

オーストラリア

カザフスタン

キリバス

タイ

中華人民共和国


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