朝鮮語の音韻
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?? /j?dσo/ [??ssʼo] (乳牛)

流音の終声 /r/ は通常 [?] で現れるが、直後に /h/ が来るときは [?] で現れる。 [?] はヨーロッパ諸語や中国語の [l] より後部に調音点があり、舌先を反転させて後部歯茎に押し当てて側面から息を流すようにして発音する。

?? /gwarho/ [kwa??o] (括弧)

音素配列上の制約

朝鮮語には以下のような音素配列上の制約がある。
(1)歯茎硬口蓋音の直後の半母音 /y/

南の標準語では、歯茎硬口蓋音 /j,c,ζ/ の直後に半母音 /y/ が来えない。従って、つづり字の上で半母音が表記されていても、実際の音声は半母音を伴っていない。

? /j?/ [??] (私)

? /j?/ [??] (負けて)

一方、北の標準語では、/j,c,ζ/ の直後に半母音 /y/ が来うる。

北の標準語では/j,c,ζ/ は、歯茎破擦音 [?/?], [??],[?ʼ] で発音するのが原則であるが、/y/ と結合する場合には歯茎硬口蓋破擦音 [?/?], [??],[?ʼ] で発音するものとされる[2]。このため、北の標準語では、次のようなものは、発音上区別が可能とされる。

? /j?/ [??] (私)

? /jy?/ [??] (負けて)

しかし、実際には、/y/ と結合する場合以外でも、南と同様に歯茎硬口蓋破擦音 [?/?], [??],[?ʼ] で発音することがある。
(2)語頭の /r/ 及び /n/

南の標準語では、漢字語において /r/ が語頭に立ちえない。このため、音節頭に本来 /r/ を持つ漢字音が語頭に立つ場合、/r/ の直後に /i/ あるいは /y/ があるものは /r/ が脱落し、それ以外のものは /r/ が /n/ で発音される。

同様にして、音節頭に本来 /n/ を持つ漢字音が語頭に立つ場合、/n/ の直後に /i/ あるいは /y/ があるものは /n/ が脱落する。

韓国ではこの現象を一般に「頭音法則(?? ??)」と呼ぶ。北の標準語では、語頭の /r/ および /n/ は本来のまま維持される。

単語北の標準語南の標準語
臨時?? (/rimsi/)?? (/imsi/)
勞動?? (/rodo?/)?? (/nodo?/)
女子?? (/ny?ja/)?? (/y?ja/)

しかしながら、外来語の発音にせよ北における漢字語の発音にせよ、語頭の /r/ はもともと朝鮮語にはなかったものである。それゆえ、特に老年層においては外来語や漢字語の語頭の /r/ を脱落させたり /n/ で発音することがしばしばある。

??? /nait??/ (ライター)

なお、南北間でのこれらの違いについては、「朝鮮語の南北間差異」中の漢字語に関する表記も参照のこと。
ピッチ

日本語の場合、例えば「雨」(高・低)と「飴」(低・高)のように、ピッチ(音の高低)の違いによって単語の意味を区別しうるが、朝鮮語の標準語はピッチによって単語の意味を区別することがない。しかしながら、朝鮮語の発話においてピッチは無秩序に現れるのではなく、自然な音の高低の流れが存在し、そのパターンから外れる発話は朝鮮語話者にとって不自然な発話に感じられる。

ソウル方言の場合、連続して発音される単位において、第2音節が最も高く発音され、それ以降の音節は徐々に降り調子で発音される。第1音節は初声が激音、濃音あるいは /s/ の場合は第2音節と同程度の高さで発音され、それ以外の子音の場合あるいは母音で始まる場合には第2音節よりやや低く発音される。

なお、東南方言と東北方言には高低アクセントの体系があり、ピッチによって単語の意味を区別しうる。
音節構造

朝鮮語の音節は母音を中核として形作られる。母音は半母音と単母音の結合(上昇二重母音)でありえ、母音の前には音節頭子音(初声)が1つ立つことができる。朝鮮語の音節は母音で終わる音節(開音節)以外に子音で終わる音節(閉音節)がありえ、母音の後ろには音節末子音(終声)が1つ立つことができる。従って、朝鮮語の音節構造で最も複雑なものは「子音+半母音+母音+子音」という構造である。

音節の構造例


節母音? /i/ [i] (歯)
半母音+母音? /yo/ [jo] (敷布団)
子音+母音? /so/ [so] (牛)
子音+半母音+母音? /hy?/ [hj?] (舌)


節母音+子音? /an/ [an] (中)
半母音+母音+子音? /wa?/ [wa?] (王)
子音+母音+子音? /gir/ [kil] (道)
子音+半母音+母音+子音? /gwa?/ [kwa?] (光沢)

音素の交替

朝鮮語は音素交替の種類が多く、以下のような交替がある。
音韻論的な交替

音韻論的な交替とは、音素が置かれる音的な環境により、当該の音素が別の音素に入れ替わる現象をいう。朝鮮語では子音についてこの現象が見られる。子音音素は配列上の制約があるため、音の並びによっては許されない子音配列がある。そのような場合、当該の子音音素は別の子音音素に交替する。
平音の濃音化

平音 /b,d,s,j,g/ は音節末の阻害音 /b,d,g/ の直後に来えない。その場合、当該の平音はそれぞれ濃音 /β,δ,σ,ζ,γ/ に交替する。

?? /ibsi/ → /ibσi/ (入試)[??]

?? /gugbab/ → /gugβab/ (クッパ)[??]

/h/の激音化

/h/ は音節末の阻害音 /b,d,g/ の直後に来えない。その場合、当該の /h/ は直前の阻害音と同じ調音位置で発音される激音(/p,t,k/ のいずれか)に交替する。

?? /ibhag/ → /ipag/ (入学)[??]

?? /gagha/ → /gaka/ (閣下)[??]

阻害音の鼻音化

音節末の阻害音 /b,d,g/ は鼻音 /m,n/ および流音 /r/ の直前に来えない。その場合、当該の音節末阻害音はそれぞれ鼻音 /m,n,?/ に交替する。

?? /yogma?/ → /yo?ma?/ [??](欲望)

?? /abnar/ → /amnar/ [??](前途、将来)

?? /dodnar/ → /donnar/ [??/??](後日、将来)

?? /nodn?n/ → /nonn?n/ [??](置く)

/b,d,g/ の直後に /r/ が来る場合、南の標準語では /r/ も同時に鼻音化して /n/ に交替する。北の標準語では 後に/ya, y?, yo, yu/ が続く場合においては, /r/ を /n/ に交替せず、/r/ のまま発音することが許容される。

?? /dogrib/ → /do?nib/ [??](独立)

?? /hy?bry?g/ → /hy?mny?g/ [??](協力) cf. /hy?mry?g/ 〔北の許容発音〕

流音の鼻音化

南の標準語において、流音 /r/ は鼻音 /m,?/ の直後に来えない。その場合、当該の /r/ は鼻音 /n/ に交替する。北の標準語では,後に/ya, y?, yo, yu/ が続く場合においては, /r/ を /n/ に交替せず、/r/ のまま発音することが許容される。

?? /to?ro/ → /to?no/ [??](通路)

?? /cimryag/ → /chimnyag/ [??](侵略) cf. /chimryag/ 〔北の許容発音〕

/n/の流音化

/n/ は流音 /r/ の直前あるいは直後に来えない。その場合、当該の /n/ は流音 /r/ に交替する。なお、この場合に /rr/ という音の連続の実際の音声は [ll] である。

?? /sinra/ → /sirra/ [??](新羅)

?? /carna/ → /carra/ [??](刹那)

??? /murnanri/ → /murrarri/ [???](水害)

??? /d?gwanry??/ → /d?gwarry??/ [???](
大関嶺

形態音韻論的な交替

同一の形態素が一定の音韻的環境によりいくつかの異形態として現れるときに、異形態間で音韻が交替することを形態音韻論的な交替という。


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