地上部の草丈は、50 cmから60 cm程度である[8]。茎は1本だけ直立し、茎頂に5出掌状複葉を輪生する[8]。葉は楕円形又は卵形で鋸歯が有り、先端は尖っている[8]。花は白色を帯びた淡緑色で、散形花序[8]。 古くから薬効が知られ珍重されていたものの、その栽培は困難で、18世紀初頭の李氏朝鮮で初めて成功したとされるが、それより100年以上前の第3代征夷大将軍徳川家光の代[14]、あるいは遅くとも8代将軍徳川吉宗の命により享保14年(1729年)までに栽培に成功している[19]。韓国では忠清南道錦山郡と仁川広域市江華郡、北朝鮮では開城特別市が産地として有名である。中国では長白山(白頭山)の麓で「長白山人蔘」として栽培される[15]。 21世紀初頭において、オタネニンジンの栽培が行われているのは、中国東北部、朝鮮半島、日本の長野県・福島県・島根県といった場所である[20]。ただし、日本では会津地方、東信地方、大根島などが古くからの産地として知られてきたものの[15]、栽培農家の高齢化などが原因で栽培面積が急速に減少した[21]。紅参 栽培にはおよそ2 - 6年ほどの月日を掛けた上で根が収穫されるが、5年以上の物が良品とされ栽培が難しい[9]。日本には野生はなく、栽培地では小屋掛けで直射日光と雨除けをして、通常は6年がかりで栽培する。皮を剥ぎ、根を天日で乾燥させた生薬を白参(はくじん、ペクサム、?? / 白蔘)、皮を剥がずに湯通ししてから乾燥させた生薬を紅参(こうじん、ホンサム、?? / 紅蔘)と呼ぶ。なお、日本薬局方においては、根を蒸した生薬を紅参としている[15]。他に、濃い砂糖水に漬け込んでから乾燥させた糖参(とうじん、タンサム、?? / 糖蔘)もあり、白参に分類される。 なお、栽培物より天然物の方が珍重される向きもあるものの、野生の人蔘の採取は非常に困難であり、その希少性から高値で取引される場合がある。天然物の御種人参 また、高麗人参の実も食用や化粧品として加工されている。高麗人参は4年に一度しか実がならないため、流通量が非常に少なく希少性が高い。ジンセンベリー(ginseng berry)[22]とも呼ばれ、高麗人参よりも多くのジンセノサイドが含有されている場合もある。成熟すると実は赤くなり、ポリフェノールも多く含まれている。 オタネニンジンは、生薬の1つ「人参」として古くから利用されてきた。主要な薬用部位は根で有用成分に、オタネニンジンの学名であるPanax ginsengから名前が取られた、ジンセノサイド(ginsenoside)と呼ばれる化合物群などが挙げられる場合がある[注 2]。 民間療法薬として1日量1 - 3グラムの人参を400 mLの水に入れて30分ほど煎じ、3回に分けて服用する[9]。人参酒としては、紅参か白参20 - 100グラム、または生のオタネニンジン80 - 90グラムを、35度の焼酎1リットルに漬けて、冷暗所に約1 - 3か月保存した酒を、1日量で約20 mLを目安に飲用する方法がある[15]。1回目に浸した人参を使って、再度6か月漬け込み2回目の人参酒を作ることも出来る[15]。 日本薬事法において高麗人参を浸けた酒類は「薬味酒」と分類し、薬効のある草根木皮などを浸した酒または漬けこんだ混成酒類(アルコール飲料)としており、酒販店などで販売されている。なお、薬局で販売されている「薬用酒」は、その薬効について薬事法の規定により厚生大臣の認可を受けているので別物である[23]。(例え薬用酒に高麗人参(ジンセノサイド)が含まれていても、認可は別の理由。) 漢方薬では、基本的に他の生薬と組み合わせて使う。また、白参も紅参も原料は同じオタネニンジンだが、収穫後の処理の仕方が異なり、これらは基本的に異なる生薬として取り扱う。漢方薬には「人参剤」と総称される方剤群が存在する。人参湯を始め、補中益気湯、六君子湯、小柴胡湯、参蘇飲など人参を含む漢方方剤は多様であるものの、どちらかと言えば虚証向きの方剤が多い。また、オタネニンジンの場合は、漢方でも例外的に、独参湯と言って、オタネニンジンだけを使う方剤も知られる。ただし、これは漢方薬一般に言える事で人参剤に限らず、いずれの方剤にしても証を見極めた上で使う必要がある。 日本においては、朝鮮料理の材料として用いられる他、生のまま短冊切りにして酢味噌和えにしたり、天ぷらの材料にする場合がある[15]。外国での使用例で言うと、韓国では煎じた物を人参茶(インサムチャ、人蔘茶)として飲用したり、サムゲタン(参鶏湯、蔘鷄湯)などの料理にも利用する。また、乾燥させる前の「水参」(スサム、水蔘、??)をスライスし、蜂蜜に漬けて食べたりもする。人蔘入りの栄養ドリンクやガムなども市販されている。北朝鮮では開城の人蔘酒が主要な輸出品の1つで、韓国でも京畿道坡州市の烏頭山統一展望台などで購入できる。 胃腸虚弱や食欲不振、嘔吐、下痢、病後の回復期、疲労回復、滋養強壮に効能が有るとされてきた[24][25][15][9]。 オタネニンジンの主要な薬用部位である根には、ジンセノサイドと呼ばれるサポニン群だけですら、少なくとも38種の化合物群が存在するとされる。なお、プロトパナキサジオール (PPD) 系サポニンと、プロトパナキサトリオール (PPT) 系サポニンの両方を含み、PPD系ジンセノサイドであるRb1やRb2などは腸内細菌で代謝されてコンパウンドKとして体内に吸収される。しかしながら腸内細菌叢は日々の状態や個体差、加齢による変化があるため、コンパウンドKへの代謝がスムーズに行われない例もある[26]。 オタネニンジンのヒトを対象とした、西洋医学に基いた質が高いとされる試験は無く、健康的有益性を裏付ける西洋医学におけるエビデンスは限られている[27][28]。
産地・栽培・加工
利用法韓国のマーケットにて
生薬
民間療法
漢方方剤
食材北朝鮮製の化粧品。
「??????」(開城高麗人蔘)の表記が見られる。
成分に関する研究
オタネニンジン植物個体について
各成分について
西洋医学による見解
日本の厚生労働省による見解
これまでに報告されている朝鮮ニンジンに関するランダム化比較試験の多くは、質の高い試験ではない可能性があります。したがって、朝鮮ニンジンの健康促進効果に対する理解には限界があります。
朝鮮ニンジンを推奨量で短期間経口摂取する場合(最大6カ月)、多くの人では安全だと考えられます。しかし、長期安全性に関する疑問が生じており、一部の専門家は幼児、子供、妊婦および授乳期の女性に対する朝鮮ニンジンの使用に反対しています。
朝鮮ニンジンを含む複数の特定成分が配合された製剤を皮膚に短期間局所使用する場合は、安全だと考えられます。長期間繰り返して局所使用した場合の安全性は不明です。
不眠症(睡眠障害)は朝鮮ニンジンで最も多くみられる副作用です。そのほかの副作用には、月経異常、乳房痛、心拍数増加、高/低血圧、頭痛、食欲不振、消化不良などがあります。
朝鮮人参が血糖値に影響することを示唆するエビデンスが得られています。糖尿病の人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
朝鮮ニンジンがカルシウムチャネル遮断薬などの降圧剤、スタチン、抗うつ薬といった薬剤と相互作用を有するかどうか、はっきりとはわかっていません。朝鮮ニンジンが抗凝固剤(抗凝血剤)のワルファリン(クマディン)に与える影響を調べた研究では、結果は一致していません。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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