有機化学
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1857年ウィリアム・パーキンが紫色染料のモーブを合成することに成功したのを皮切りに[17][18][19][20]、有機化学の成果は続々と工業分野に応用されるようになった[21]。初期の応用は染料工業が中心であったが、やがて19世紀後半には薬品工業にも応用は広がっていった[22]1869年セルロイドの開発をきっかけに合成樹脂の研究が進められ、1909年にはアメリカのレオ・ベークランドが初の完全な合成樹脂としてベークライトの工業化に成功した[23][24][25]。18世紀末には人造絹糸(レーヨン)の開発も進み、さらに時代が下って1934年ウォーレス・カロザースによってナイロンが作り出された[26][27][28]。やがて有機化学の発展と共にゴム接着剤樹脂などが合成されるようになり、靴下から宇宙船まで様々な分野に応用されている。

有機化学は元来生物を構成する物質を扱う学問であり、生化学とごく密接に関連している。[29]有機化学における手法は、生化学における化学反応の理解や、生体物質の解析などに応用される。現在では、有機化学は生化学や高分子化学の基礎として位置づけられている。
理論

有機化学の理論は構造論と反応論に大別できる[30]
構造論

化学結合論
[31][32][33]

孤立電子対、共有電子対

オクテット則

電気陰性度

極性結合


共鳴理論[34][35]

量子化学混成軌道の概念、電子軌道の概念、原子価結合法分子軌道法など)

反応論

化学反応式

有機電子論による反応機構

量子化学、量子有機化学(フロンティア軌道論[36]など)

実験操作

有機化学の基本的な実験操作は、現代ではかなり洗練され、実験の安全性および結果の妥当性を保証するものとしてほぼ確立されているので、実験者はまずそれらをしっかりと身につけることが求められる。ただし各手順は研究者によって微妙に異なることもあり、時にはそこから流派(出身研究室)を推測することも可能である。

実験器具の一覧

単離精製ろ過抽出カラムクロマトグラフィー再結晶/再沈殿蒸留

構造決定核磁気共鳴質量分析元素分析赤外分光法X線構造解析

炭素骨格と官能基

有機化学で化合物合成方法を考える場合、炭素骨格の構築と官能基の変換に大別することが多い。

一般の有機化合物は、鎖式炭化水素アルカンアルケンアルキン)あるいは環式有機化合物シクロアルカン芳香族炭化水素複素環式化合物など)を骨格とし、そこに官能基ヒドロキシ基カルボキシル基など)が結合した構造を持っている。

官能基を変換することは比較的容易である。例えば、アルコールは適当な酸化剤を用いることによって、アルデヒドあるいはカルボン酸に変換でき、カルボン酸からさらにアミドエステルへと変換することが可能である(官能基についてはに詳しい説明がある)。

一方、炭素骨格を構築することはなかなか難しい。古くからアルドール反応グリニャール反応が用いられてきたが、期待する炭素骨格を効率よく合成することは困難であった。しかし、近年では鈴木カップリングメタセシス反応など、効率の良い反応が開発され、タキソールシガトキシンのような複雑で巨大な分子も全合成することが可能となっている。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 存在比からすれば、寧ろ無機化合物が多い。
^ Wohler, F. (1828). Ueber kunstliche Bildung des Harnstoffs. Ann. Phys. Chem., 37, 330-333.
^ ただし、「ケクレがベンゼンの構造を示した」というエピソードについては異論も唱えられている。本件の詳細はケクレの項目を参照のこと。ベンゼンの構造として別にプリズマンデュワーベンゼンが提唱されたが、結局却下された。

出典^ a b Roberts, J. D., & Caserio, M. C. (1977). Basic principles of organic chemistry. WA Benjamin, Inc..
^ 『岩波 理化学辞典』岩波書店
^ 山口良平, 山本行男, & 田村類. (2010). ベーシック有機化学. Kagaku-Dojin Publishing Co.
^ 小尾紀行. (2009). ベーシック薬学教科書シリーズ 5 有機化学, 夏苅英明, 高橋秀依編, 化学同人, B5, 480 頁, 6,300 円.
^ 構造有機化学(朝倉化学大系)2016年、戸部義人・豊田真司 著、朝倉書店。
^ 構造有機化学 -基礎から物性へのアプローチまで-、2020年、 中筋一弘・久保孝史・鈴木孝紀・豊田真司 編、東京化学同人。
^ 小方芳郎. (1962). 有機反応論. 丸善.
^ 合成有機化学 -反応機構によるアプローチ-、2011年、Rakesh Kumar Parashar 著 柴田高範・小笠原正道・鹿又宣弘・斎藤慎一・庄司満 訳、東京化学同人。
^ Benner, S. A., Ebmeyer, F., Echegoyen, L., Ellington, A. D., Fyles, T. M., Gokel, G. W., ... & Vogtle, F. (2012). Bioorganic Chemistry Frontiers (Vol. 1). Springer Science & Business Media.
^ 「基礎 有機化学」(新・物質科学ライブラリー4)p2 大須賀篤弘・東田卓著 サイエンス社 2004年4月10日初版発行
^ 「ひとりでマスターする生化学」p15 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
^ 「現代化学史 原子・分子の化学の発展」p54-57 廣田襄 京都大学学術出版会 2013年10月5日初版第1刷
^ 「はじめて学ぶ科学史」p70 山中康資 共立出版 2014年9月25日初版1刷


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