有価証券
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有価証券(ゆうかしょうけん、英語: security[注 1])は、伝統的には財産的価値のある私権を表章する証券で、その権利の発生、移転または行使の全部又は一部が証券によってなされるものをいう[2]

なお、有価証券(: Wertpapier)の典型例に手形小切手があるが、これらの証券は英米法では流通証券(: negotiable instruments)という概念で扱われる[3]
定義

有価証券の本質は権利の行使(権利の行使に証券が必要であるため移転も必要)にあるか、権利の移転(権利の証券化による流通)にあるかなど有価証券の定義については争いがある[4]

日本の伝統的な学説では財産的価値のある私権を表章する証券で、その権利の発生、移転または行使の全部又は一部が証券によってなされるものをいうとしている[2]。ただし、伝統的な通説に対しては、権利の発生には証券が必要で移転や行使には不要という有価証券を考えにくく、株券のように権利の発生と証券の作成が一体でない証券があることなどから、権利の移転に証券の引き渡しを要する証券を有価証券とする有力説がある[3]。この有力説に対しても、株券発行会社で現に株券を発行している会社が権利を行使するには、会社に対して株券を呈示する必要があることから、権利の移転及び行使に証券の引き渡しを要する証券を有価証券とする別の有力説がある[5]

ドイツの通説では権利行使面を重視し、有価証券は権利の主張(行使)に証券の所持を必要とする私権を表章する証券をいうとする[6]。ただし、抗弁の対抗が制限されるものに限定する学説もある[6]

有価証券は紙に書かれた思想内容の対象そのものが財産的価値を有する私権でなければならず、書家の書のように文化的・学術的・芸術的価値から二次的に財産的価値を生じているものは有価証券とは言えない[7]

日本銀行券その他の紙幣収入印紙郵便切手などの金券は、財産権を表章するというわけではなく、法律上証券自体が特定の価値を有するとされているものであり、これらは有価証券には含まれない[8]

なお、事実(特に証券になした行為)の書証としての性質を有する証券を証拠証券という[9]。有価証券にも証拠証券性は認められるが[10]、売買契約書や借用証書など多くの証拠証券は財産的に価値のある権利を内容としているものの、それを持っていても権利者であるという法律上の推定を受けるわけでなく、それがなくても他の証拠方法で立証できれば権利を行使できる[11]。これらは契約上の権利の移転と証券の移転が結びついていない証拠証券であり有価証券とは区別される[11]

また、証券の形式的資格をもつ所持人を権利者として弁済すれば義務者は責任を免れる証券を免責証券という[12]。有価証券にも免責証券性があるが[12]クロークの預かり証のように他の免責証券では証券の所持人を権利者とする法律上の推定を受けることはなくこれらも有価証券には含まれない[13]
有価証券の性質と分類
有価証券の性質
証拠証券

証拠証券とは事実(特に証券になした行為)の書証としての性質を有する証券をいう[14]。すべての有価証券には証拠証券性がある[15]
要式証券

要式証券とは法律によって一定の記載事項を記載することが要求されている証券をいう[10]。株券や社債券、為替手形、小切手などが要式証券である[10]
文言証券

文言証券とは証券の表章する権利の内容が証券に記載されている文言のみによって定まり、他の立証方法では変更・補充できない証券をいう[16]。手形や小切手などが文言証券である[16]
設権証券

設権証券とは権利の発生には証券の作成が要件となっている証券をいう[17]。手形や小切手などは設権証券であるが、株券や貨物引換証は既存の法律関係を証券に記載したもので設権証券ではない[17]
呈示証券

呈示証券とは証券の表章する権利の行使に証券の呈示が要件となっている証券をいう[18]
受戻証券

受戻証券とは証券と引換えでなければ目的物の給付を要しない証券をいう[14]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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