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なお、漢字の「月」は欠けた月の形を描いた象形文字である[6][7]

また「月」は、広義には「ある惑星から見てその周りを回る衛星」を指す。例えば、「フォボス火星の月である」などと表現する[注 1]
運行

月は天球上の白道と呼ばれる通り道をほぼ4週間の周期で運行する。白道は19年周期で揺らいでいるが、黄道帯とよばれる黄道周辺8度の範囲に収まる。月はほぼ2週間ごとに黄道を横切る。

恒星が月に隠される現象を掩蔽、あるいは星食という。惑星や小惑星が隠されることもある。一等星や惑星の掩蔽はめったに起こらない。天球上での月の移動速度は毎時0.5度(月の視直径)程度であるから、掩蔽の継続時間は長くても1時間程度である。
暦との関係

と月の関係は近代に至るまで密接であった。月の《満ち欠け》を元に決めた暦は太陰暦と言い、地球から月を見ると月の明るい部分の形は毎日変化し約29.5日周期で同じ形となっており、この変化の周期を元に暦を決めたものである。

歴史的に見れば元々は太陰暦を採用していた地域のほうが多かったのであり、現代でも太陽暦と太陰暦を併用している文化圏はある。月を基準に決めた暦というのは、漁師など自然を相手に仕事をする人々にとっては日付がそのまま有用な情報をもたらしてくれるものである。

日本でも、明治5年までは太陽太陰暦を主として使用していた。明治5年に公的な制度を変えた段階でこれを「旧暦」と呼ぶようになったが、その後も長らく旧暦のカレンダーは販売され、両方を併用する人々は多かった。今でも一般の太陽暦のカレンダーに旧暦を掲載したものは広く使われる。

日本語では暦を読むことを「月を読む」「ツキヨミ(ツクヨミ)」「月読」と言った。暦と言えば近代まで太陽太陰暦であったため、暦を読むとはすなわち月を読むことであった[注 2]。「太陰暦」および「月 (暦)」も参照
物理的特徴
性質主要な太陽系の衛星の比較。他の衛星と比べても月は大きく、月は母惑星地球に対し不釣合いなほど大きな衛星であることが分かる。

月の直径 (3,474km) は、木星の衛星ガニメデ (5,262km)、土星の衛星タイタン (5,150km)、木星の衛星カリスト (4,800km)、イオ (3,630km) に次ぎ、太陽系の衛星の中で5番目に大きい[10]。また、惑星に対する衛星の直径比率で言えば、月は地球の約1/4であり、ガニメデが木星の約1/27、タイタンが土星の約1/23であるのに比べて桁違いに大きい[10]。かつては、衛星が主星の大きさの50%を超える冥王星カロンの組に次いで2番目だったが、冥王星が準惑星に分類変更されたので、地球と月の組が1番となった。

月はその規模や構造といった物理的性質から、星そのものは地球型惑星だと考えられている[11]。ただし軌道の観点ではあくまで「衛星」の範疇であるため、太陽系の8惑星を分類する意味で「地球型惑星」と言った場合、月は含めないのが普通である。

従来、地球に対する月は、衛星としては不釣合いに大きいので、二重惑星とみなす意見もあった。月の直径は地球の4分の1強であり、質量でも81分の1に及ぶからである。月と太陽の見た目の大きさ(視直径)はほぼ等しく、約0.5度である。したがって、他の惑星の場合とは異なり、太陽が完全に月に覆い隠される皆既日食や、太陽の縁がわずかに隠されずに環状に残る金環日食が起こる。

月の形状はほぼ球形だが、厳密にはわずかにセイヨウナシ形をしている。月面の最高点は平均高度より+10.75km、最低点は-9.06kmで、共に裏側にある。質量はおよそ地球の0.0123倍 (1/81)。表面積(3793万km2)は地球の表面積の7.4%に相当し、アフリカ大陸オーストラリア大陸を合わせた面積よりもわずかに小さい。月と地球の距離およびそれぞれの直径 月と地球の間の距離は38万4,400km、これに対し地球の直径は1万2,756km、月の直径は3,474km。月の秤動(ひょうどう)この画像は27日分の月の映像を時間を縮めて表示し、月の見かけ上の揺れ(秤動)の様子を示す。月が楕円軌道を巡り地球との距離が変わるので、見かけの大きさも変化する。

アメリカ合衆国アポロ計画ソ連ルナ計画で月面に設置された反射鏡に地球からレーザー光線を照射し、光が戻ってくるのに要する時間を計れば月までの距離を正確に測定できる。この測定は月レーザー測距(LLR)と呼ばれ、1969年にアメリカのマクドナルド天文台で初めて行われた。地球中心から月の中心までの平均距離は38万4,403km(約1.3光秒)であり、地球の赤道半径の約60.27倍である。21世紀に入ってからも各国の天文台で測定が続けられており、月は平均して1年あたり3.8cmの速さで地球から遠ざかっていることが明らかになっている[12][13]

月は、太陽系の惑星やほとんどの衛星と同じく、天の北極から見て反時計周り(地球の自転、公転と同じ)の方向に公転している。軌道は円に近い楕円形。自転周期は27.32日で、地球の周りを回る公転周期と完全に同期している(自転と公転の同期)。つまり地球上から月の裏側を直接観測することは永久にできない。これはそれほど珍しい現象ではなく、火星の2衛星、木星のガリレオ衛星であるイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星の最大の衛星タイタンなどにも見られる。ただし、一致してはいても、月の自転軸が傾いているうえに軌道離心率が0ではないので、地球から見た月は秤動と呼ばれるゆっくりとした振動運動を行なっており、月面の59%が地上から観測可能である。逆に、月面からは地球は天空のある狭い範囲(秤動に応じて東西南北およそ±7°程度の範囲[14])に留まって見える(一点に静止して見えるわけではない)。特に、スミス海東の海のように地球から見て月の縁に位置する地点では、秤動によって地球から見えたり隠れたりするのに応じて、逆に地球が月の地平線から昇ったり沈んだりして見える[注 3](「地球の出」の画像は月面からではなく、月周回軌道を回る宇宙船や観測機から撮られた物である)。

2014年5月に発表された研究成果によれば、月の自転軸は40億年前から現在までに数十度ずれていた事が分かったと発表された[15]

月内部の構造はアポロ計画の際に設置された月震計で明らかになった。中心から700 - 800kmの部分は液体の性質を帯びており、液体と固体境界付近などでマグニチュード1 - 2程度の深発月震が多発している。また、浅発月震と呼ばれる地下300km前後を震源とする揺れは、マグニチュード3 - 4にもなるが、発生原因の特定はできていない。表面から60kmの部分が地球の地殻に相当し、斜長石の比率が高い。月の内部は地球型惑星と同様に岩石金属からなり、深さによって密度ごとに成層した(分化した)天体である。

月はナトリウムカリウムなどからなる大気を持つが、地球の大気に比べると1017分の1(10京分の1)ほどの希薄さであり、表面は実質的に真空であるといえる。したがって、気象現象が発生しない。月面着陸以前の望遠鏡観測からも月には大気がないと推定されていたが、1980年代アメリカ航空宇宙局(NASA)によって実際は希薄ながらも大気が存在することが確認された。

の存在も観測では確認されていなかったが、2009年11月にNASAによって南極に相当量の水が含まれることが確認された。ただし、水は極地の形で存在するだけであって、熱水(鉱化溶液)による元素の濃集は起きないとされており、熱水鉱脈は存在しないと推定されている。しかしながら、マグマへの濃集は起きていたためチタンなどの含有量が非常に多い地質体も存在する。

現在は月の火山活動(英語版)は認められず、マントル対流も存在しないが、少なくとも25億年前までは火山活動があったことが確認されている。溶岩流によって形成された月の溶岩洞(溶岩チューブ)も確認できる[16]


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