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なお、月の公転周期が約27.3日であるのに対して、満ち欠けが約29.5日となっているのは、月が公転する間地球も太陽の周りを公転しており、その分余計に公転しなければならないためである[19]

月面は砂(レゴリス)によって覆われている。レゴリスは隕石などによって細かく砕かれた石が積もったものであり、月面のほぼ全体を数十cmから数十mの厚さで覆っている。これはおよそ200kgの体重と装備が、重力によりおよそ30kg相当となった人間が残した足跡からも観測できる。より新しいクレーターなどの若い地形ほど層が浅い。その粒子は非常に細かく、宇宙服や精密機械などに入り込みやすく、問題を起こす。しかしその一方でレゴリスの約半分は酸素で構成されており、酸素の供給源や建築材料としても期待されている。また太陽風によって運ばれた水素ヘリウム3が分布密度は小さいものの吸着されており、核融合燃料になると考えられている。

両極付近のクレーター内には「永久影」と呼ばれる常に日陰となる領域があるため、氷が存在している可能性が高いと言われている。

2009年9月、無人月探査機チャンドラヤーン1号ISROインド)および土星探査機カッシーニと彗星探査機ディープ・インパクト(いずれもNASAアメリカ)の3探査機によって、月に水もしくは水の基となるヒドロキシ基が存在していることが確認されたと発表された。存在範囲は月面全体に薄く広がっている状態で、月において水もしくはヒドロキシ基を約1リットル集めるのに、月の土壌約0.76立方メートルが必要だと試算されている。確認された水もしくはヒドロキシ基は、太陽風によって運ばれた水素イオンが月面にある酸素を含んだ鉱物やガラス様物質に衝突した結果生じたものと考えられ、将来の月面探査・月面基地計画において、抽出して水素と結合すれば真水を生成可能とされている[20][21]

同年10月9日、NASAの月探査機エルクロスが月の南極付近にあるカベウスクレーターに衝突した。衝突による閃光や噴出物を観測したところ、上層部分からは細かい塵や水蒸気が、下層部分の土砂からも水分が確認された。合計水分量は約95リットルだという。

同年10月24日、日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、月探査機かぐやが撮影した画像の解析で、月の表側にある平地「嵐の大洋」の中央部にあるマリウス丘に月面初となる地下溶岩トンネルに通じる縦穴を発見したと発表した。今回発見された縦穴は「嵐の大洋」において火山活動が活発だったことが分かっている地点に存在しており、直径約70m、深さ約90mの垂直な穴で、穴底部分は少なくとも横幅400m、内高20mを超えるトンネルになっているとしている。JAXAは、今回の発見は将来的な有人探査において天然の基地としての有力候補になったとしている[22]

2010年9月7日、NASAによって、月面において初となる「天然の橋」が確認された[23]。NASAのルナー・リコネサンス・オービター (LRO) のカメラ (LROC) が撮影に成功し、その画像が公開された。画像では、橋の右側くぼみから橋下を通過した光が、左側くぼみの底に三日月形に映っている姿をとらえている。地球上においては風や水による浸食現象で形成される自然橋だが、月面で見られるこのような地形は、通常、太古の火山活動によってできた溶岩洞が崩落した結果と考えられている。ただし、今回発見されたケースでは、この天然の橋は溶岩洞の崩落によるものではなく、クレーターを形成した隕石の衝突熱で岩が融解して形成されたものと考えられている[23]

2020年10月、アメリカ航空宇宙局(NASA)は成層圏赤外線天文台(SOFIA)を用いて行われた観測で、南半球にあるクラヴィウス・クレーター(英語版)から水が検出されたと発表した。極地域の永久影領域を除いた太陽光に照らされることがある地域で水が検出されたのはこれが初めてで、極地域だけではなく、月全体に水が存在する可能性を示す観測結果となった[24][25]
TLP

月面に一時的な発光現象が起こることがあり、一時的月面現象 (英語: TLP, Transient Lunar phenomena) と呼ぶ。過去数百年の間に地球上からおよそ1500件の観測報告がなされているが、錯覚によるものや望遠鏡の鏡筒内異物による乱反射であったり、レンズの色収差など観測者側に何らかの原因があったりする場合の誤認が多いとされている[26][27]

実際に生じている月面での発光現象の原因として明らかになっているものが幾つかある。
隕石の衝突[28] - 規模や持続時間の点からTLPは隕石衝突と区別される[29]

月、太陽、地球の位置関係 - 月面斜面に横から太陽光線が当たると、地形・高低差によりそれまでは太陽光を反射していなかった場所で反射が生じ発光しているように見える[26]

レゴリス - 太陽風によって帯電したレゴリスが舞い上がる[30]

ガス噴出 - 月の地殻に含有されているウラン(238U)が核分裂を起こし、分裂生成物であるラドン(222Rn)ガス噴出に伴う発光[27]第18族元素の特徴的性質)。特にアリスタルコス・クレーター付近で顕著な現象。ガスの噴出は地表近くに溜まったガスが突発的に月面の砂を巻き上げるもので、アポロ計画で発見された月面上のガスの漏出地点と、TLPが頻発に報告される地域が一致するという研究がある[29]

影響

月の重力は地球に影響を及ぼし、潮の満ち引きを起こす(潮汐作用)。なお、月よりも格段に大きい質量を持つ太陽も潮汐作用を起こし地球に潮汐力を及ぼすが、地球からの距離が月より遠距離にあるため、その影響力は月の力の半分程度である(潮汐力は距離の3乗に反比例する[31])。

月の潮汐作用により、主に海洋海底との摩擦海水同士、地殻同士の摩擦などもある)による熱損失から、地球の自転速度がおよそ10万年に1秒の割合で遅くなっている。また、重力による地殻の変形を介して、地球-月系の角運動量は月に移動しており、これにより、月と地球の距離は年間約3.8cmずつ離れつつある[32]。この角運動量の移動は、地球の自転周期と月の公転周期が一致するまで続くと考えられるが、そこに至るまでにはおよそ50億年を要する[32]

逆に言えば、かつて月は現在よりも地球の近くにあり、より強力な重力・潮汐力の影響を及ぼしており、また地球(および月)はより早く回転していた。サンゴ化石の調査によれば、そこに刻まれた日輪(年輪の日版)により、4億年程前には1日は約22時間で、1は400日程あったとされる[32]
視覚的特徴

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出典検索?: "月" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2013年4月)
地表近くの満月

月の明るさは満月で-12.7など、半月でも-10等前後に達し、夜間における最も明るい天然光源である。

地球上から月を観察すると、月の大きさが変わっているように見えることがある。空高くに位置する場合と地平線または水平線近くに位置する場合とは、明らかに大きさに変化があり、前者の場合は小さく見え、後者の場合は大きく見える。

この現象は人間の目の錯覚によるものである。カメラとは異なり、人間の目は視界に入るすべての物体を鮮明に見るべく、常に焦点位置を調節し、脳で画像を合成している。このため近場から遠方に連なる風景の先端に月が見える場合,ズームレンズを動かしながら見るように、人の認識する月が巨大化する。逆に空高くに位置する場合は、比較となる対象物が存在しないために、小さく(実質的な目視上のサイズとして)見えるのである。

実際の月の視直径は、腕を伸ばして持つ五円玉の穴の大きさとほぼ同じである。空高くに位置する時の小さな姿は、五円玉の穴にその全てが収まってしまいそうに見える。地平線近くにある大きな月の場合は、五円玉の穴に入りそうもなく思えるが、実際は小さな月と同じように五円玉の穴に全てが収まってしまう。

なお、月の公転軌道は楕円形であり、近地点約36万kmに対して遠地点約40万kmであるため、見かけの大きさは月の軌道上の位置により実際に変わる。また、赤道上の地上から見ると一日のうちでも厳密には距離が変化する。月を天頂付近に見る時が一日のうちで最も月に近く、月を地平線付近に見るときは、それよりもおよそ地球の半径(約6,000km)離れるので、それだけ僅かに小さく見える。

月は一時間あたり、恒星に対して東へ0.5度強だけ動いていき、24時間では13度である。つまり、毎夜、月は前の夜より13度だけ東へ動いていく[33]地球照地球照の仕組み

太陽光が当たっていない、欠けた部分も肉眼でも薄っすらと見えることがあるが、これは地球照(ちきゅうしょう、earthshine)と呼ばれるもので、地球で反射した太陽光が月を照らすことによって生じるものである。


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