月光仮面
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自動式拳銃プロップガンは電気式で一発ずつしか撃てなかったため、連射するシーンでは隠し持っていた別の銃に持ち替えて撮影していた[22]。マシンガンのプロップガンは炎と煙が出るだけのもので、『'60年代 蘇る昭和特撮ヒーロー』ではガスバーナーを改造したものではないかと推測している[23]

バイクはホンダから提供された[21]。撮影用のほか50ccのカブも借用し、現場の移動用に用いられた[21]

野外場面でのバックグラウンドには頻繁に鳥の鳴き声が使われており、それもほぼ全てが同じものである。主に三光鳥の鳴き声で、その間から時鳥がさえずり聞こえるというものである。この効果音は、これらの鳥類の生息環境でない場所でも平気で使われている。また夜のシーンになるたびに、夜間を強調するため毎回同じ犬の遠吠えが使われている。効果音は東宝から無断借用されたものもあるという[21]

武田薬品工業の1社提供による『タケダアワー』第2回作品であり、作品中に「武田薬品の栄養たっぷりのプラッシーですね」などといった台詞や武田薬品の広告が度々登場する[24]
反響

川内作詞、小川寛興作曲の主題歌『月光仮面は誰でしょう』(歌は近藤よし子、キング子鳩会)と共に子どもたちの圧倒的な支持を受け、平均視聴率は40%、最高視聴率は67.8%(東京地区)を記録し、放送期間は当初の3ヶ月から大幅に延長された[16]。放送時間には銭湯から子どもの姿が消えたという[7]。『月光仮面は誰でしょう』のレコードは当時の子ども向け楽曲としては異例の10万枚以上[25]を売り上げる大ヒットとなった。

宣弘社社長の小林利雄は、当初は制作を間に合わせるのに手一杯で反響を気にしていなかったが、次第に手応えを実感するようになったという[7]。小林は東芝に子供たちが集まりそうな場所へ街頭テレビの設置を依頼し、これも人気を博した[7]。その後、視聴者の子供たちから「(10分では)すぐに終わってしまう」との要望が殺到したことをうけ、TBSは番組枠を30分に拡大した[7]

タカトクのお面などの関連商品もヒットした。それらは全て無許諾商品で、当時はマーチャンダイジングという発想もなかったため、宣弘社社長の小林利雄は「ああいうのは番組の宣伝につながるわけですから、『どうぞ、どんどんやって下さい!』と応えて、お金なんかもらわなかったですよ」と述べている[7]

しかし、識者と言われる層からは評判が悪く、俗悪視され、月光仮面の真似をして子どもが高所から飛び降りて怪我または死亡する事故が続発し[26]、新聞や週刊誌から「有害番組」だと批判を受け[8]、1959年3月には『週刊新潮』を川内が提訴する騒ぎも起きた。この結果、1959年7月5日をもって打ち切りになった[注釈 3]。最終回の視聴率は42.2%(東京地区)だった。
キャラクターとしての月光仮面

月光仮面は、悪人によって危機に陥った人々の前に颯爽と現れる正義の味方である。白いターバン覆面の上に黒いサングラスと白マフラー、白の全身タイツに黒いベルトを着け、裏地に色のついた白マントをまとい、手袋とブーツを着けている。祝探偵と同じ声色をしている。正体ともども、衣装をまとった扮装者なのか、超科学や神秘現象による変身者なのかも謎である。能力的にも生身の人間なのか超人なのか微妙なところがある。

月光仮面の実際の衣装の色は白ではなく薄黄色だった。マントは表が黄色、裏地は黒だった[28]。カラーで掲載される際や実写の着ぐるみやフィギュアではその色で塗色されている。

悪事のあるところへオートバイ[注釈 4]に乗って駆け付け、「月光仮面の歌」とともに颯爽と現れ、悪を蹴散らし正しい人々を救い出す。月光仮面は自らの正義の心と身ひとつによって悪を懲らしめる。常人離れしたジャンプ力(片足跳びである)を持っており、瞬間的に他の場所に現れることが出来る。

「憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう」という理念を持ち[注釈 5]、悪人といえども懲らしめるだけで過剰に傷つけることはなく、人命は決して奪わない。武器として2丁の自動拳銃を持っているが、もっぱら威嚇と牽制に使い、発砲しても悪人の武器を撃ち落とすためにしか使わない。

ターバンの前面には三日月のシンボルを飾っているが、これは月の満ち欠けを人の心になぞらえ、「今は欠けて(不完全)いても、やがて満ちる(完全体)ことを願う」という理想、「月光は善人のみでなく、悪人をも遍く照らす」との意味が込められている。裏向きの「27日の月」が描かれている図版があるが、誤りである。

この極めて東洋的な正義観は、原作者の川内の実家が日蓮宗の寺だったことが影響しているともいわれている。月光仮面の発想は薬師如来の脇に侍する月光菩薩(がっこうぼさつ)から得られたもので、「正義の味方」という言葉自体も、「正義」そのものの神仏への脇役的位置づけを示すものであり[29]、「決して『正義そのもの』ではない」との意味を込めることに川内がこだわったものだった。川内本人は「正義の助っ人」との表現を好んだという。なお「正義の味方」という言葉自体を川内の造語だとする説もあるが[29][30]、実際には徳富蘇峰内村鑑三の著作に加えて『黄金バット』など、月光仮面以前から多数の用例が存在する語である(具体的な用例は「正義の味方#用例」を参照)。

一方で川内は晩年、鈴木邦男に対し、三日月の意味を「イスラム」だと語った。鈴木は『何を言ってるのだろうと思った。でも、考えてみると、1960年代、「月光仮面」の次は「七色仮面」で、その次は「アラーの使者」だった。だから本当なのだ。昔から、イスラムに対する憧れがあったのだろう』と回想、推理している[31]

月光仮面が載るオートバイは、ホンダの「 ⇒ドリームC70」(2気筒250cc)を白く塗って使った。なお、ヘルメット着用義務(罰則なし)が開始されたのは1965年から、現在の形での義務化は1986年であり、この当時はノーヘルやターバンでも特に問題視されなかった。
登場人物
祝 十郎(いわい じゅうろう)
私立探偵。五郎八とカボ子を助手に、自宅兼事務所の「祝探偵事務所」を構えている。明晰な頭脳と高い運動能力を持ち、警察から絶大な信頼を得ている。松田警部の依頼を受けて様々な事件を追う。銃の携帯者であり、これは
警視庁も公認である。祝が姿を消すと月光仮面が現れ、月光仮面が姿を消すと祝が現れることが多いことから「月光仮面の正体」と目されることもあるが、当時のオープニングのテロップでは(月光仮面:?)、(祝十郎:大瀬康一)と表記される場合があり、祝十郎が月光仮面だとは断定されていない[注釈 6]
袋 五郎八(ふくろ ごろはち)
祝の助手。力が強いがおっちょこちょいで、しばしば失敗をするが、とても人が良い。コメディリリーフ的存在。月光仮面の衣装を着けて、身代り役を務めたこともあった。
カボ子
本名不明の祝の助手。五郎八のボケに対するツッコミ役。きびきびとした利発な女性で、トランプ占いを得意とする。
繁(しげる)
祝探偵事務所に住んでいる小学生の少年。機転が利き、事件の糸口を掴むことも。
木の実(このみ)
繁と二人で祝探偵事務所に住んでいる小学生の少女。繁とともに、祝が面倒を見ている戦災孤児である。
松田刑事部長
警視庁の刑事。祝とともに事件を追うが、悪人たちに毎回翻弄される。捜査の全般を祝と月光仮面に頼っており、祝に助言を請うこともしばしばである。「たまには我々だけで事件を解決したいものだ」などとつぶやくこともあった。
山本記者
「東都タイムス」の記者。松田刑事や祝にしばしば協力して事件に迫る。
キャスト
レギュラー

月光仮面 - ?(非公開)

祝十郎 -
大瀬康一

袋五郎八 - 久野四郎(第1部) / 谷幹一(第2部以降)

カボ子 - 宇野よし子(第1部) / 日輪マコ(第2部) / 久里千春(第4部) / 布地由起江(第5部)

繁 - 日吉としやす

木の実 - 猿若久美恵(第1、2部) / 山田のり子[注釈 7](第3部以降)

松田刑事部長 - 佐藤一郎(第1部) / 千葉隆三(第2部以降)

山本記者 - 大塚周夫(第1、2部) / 花田京介(第4部) / 田中邦明(第5部)

北村警官 - 加藤精三

安井警官 - 北村弘一

各部ゲスト

参照岩佐陽一 2001, pp. 20?21, 「月光仮面の世界」


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