現代の社会活動に最終処分場は不可欠であるが、経済的なメリットをもたらすものではないため、様々な面で行き届いているとは言えない現状にある。 廃棄物学会
残余容量、残余年数
処分場の残り受け入れ能力を、容積・年数で表したもので、毎年環境省から発表されている。残余容量は一廃、産廃ともに減少し続けているが、分別・リサイクルの普及などにより最終処分量が減少しているため、年数は微増傾向にある。しかし、大量発生源である都市部周辺で新たに処分場を確保することは、規制の強化と住民の反対運動で新規開業する施設が少なく危機的な状況になっている。特に、関東や関西の人口密集地では処分場が少なく、都会のゴミを地方にツケ回す構図が問題となっている[6]。
不適正処理
ずさんな管理・運営により、安定型処分場に腐敗性の廃棄物が持ち込まれていたり、管理型施設での浸出水処理が不十分で有害物質(重金属など)が公共水域へ漏出したりして問題となる事例がある。経営状態が悪化した事業者で頻発する事例であり、そのまま倒産し、責任を追及できないケースもしばしば見られる。
不適正保管
廃棄物を処分場へ運び込むに当たって、種々の事情で一時滞留する事がある。法令上これを保管と呼び、収集・運搬の過程で一定限度で認めているが、その範囲を超えて長期・大量に保管していると、実質的に不適正処理や不法投棄と変わらなくなる恐れが強い(特に、事業者が経営破綻した場合など)
犯罪組織の関与
産廃処分業は収益が大きいため、産廃処分業者の中には暴力団関係者が一定程度以上存在すると言われている。この暴力団による産廃業支配や、一般的に産廃業者が引き起こす問題を解決するため、行政関与型の処分場建設と管理が考えられるようになった。すなわち旧厚生省が策定した第三セクター方式である。同方式は、民間・行政双方が関わる形で設立された組織体が最終処分場の建設・管理を行い、廃棄物を処理するというものである。ただし、この方式にも問題事例と思われるものが存在するという指摘も根強く、そのようなケースでは、結局は一部の人々の利権構造を維持・再生産しているだけではないかという批判[7]もある。
諸外国の事情
開発途上国
財政に困窮する国が多く、大多数で社会基盤整備が廃棄物処理にまで及んでいない。先進国の廃棄物を受け入れる最終処分場が建設された場合、管理水準は期待できない。ほとんどの途上国では、有価物を拾い集めて生計を立てる人々(ウェスト・ピッカー)がリサイクルと廃棄物減量に大きな役割を果たしていて、その効果は10?20%と試算されている[10]が、劣悪な生活環境の改善が必須である。
新興工業国
人口の集中と生活水準向上により、都市ごみの処理に苦慮している。これと並んで法整備の遅れや意識の低さによる産業廃棄物の未処理投棄が常態化し、環境汚染が急激に拡大していると見られている。適切な最終処分場の建設は重要・必要な対策だが、ほとんどの地域で手つかずの状態となっている。
旧東欧諸国
未処理投棄が多く、リサイクル、最終処分場の建設も進んでいない。焼却に対する抵抗感が強く、中間処理を行わず直接埋め立てる例が多い。さらに、社会主義政権時代の負の遺産として有害廃棄物の大量投棄地を抱える国もある。
欧州連合(EU)
リサイクルに注力して成果をあげていたが、その反面で最終処分における中間処理は普及せず、有機性廃棄物の直接埋立が多かった。しかし1999年公布のEU埋立指令でこれが全面的に転換し、20年で3分の1とすることが決められた。埋立指令では、最終処分場として有機物、有害廃棄物、非有害廃棄物、安定廃棄物の4種が規定されている。また、中間処理が義務づけられた。
脚注[脚注の使い方]
出典^ a b 【くらし探検隊】家庭のごみの一生をたどってみた*埋め立て ピークの10分の1『日本経済新聞』朝刊2021年7月24日土曜別刷りNIKKEIプラス1(11面)
^ 高レベル放射性廃棄物、最終処分場の候補地選び本格化 自治体誘致の流れ大切に