最低賃金法
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また勤務形態は問わないので、正規雇用・非正規雇用問わずすべての労働者に適用される。

旧法第4条及び旧則第1条においては、最低賃金額の表示単位について、時間、日、週又は月のほか、出来高又は業績の一定の単位によることとしていたが、賃金支払形態、所定労働時間等の異なる労働者間の公平の観点や就業形態の多様化への対応の観点、さらにはわかりやすさの観点から、最低賃金額の表示単位を時間に一本化したものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす(第4条1項、2項)。

ここでいう「賃金」には、以下のものは含まない(第4条3項)。
一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(施行規則第1条1項)

臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金


通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(施行規則第1条2項)

所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金

所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

午後10時から午前5時まで(労働基準法第37条4項の規定により厚生労働大臣が定める地域又は期間については、午後11時から午前6時まで)の間の労働に対して支払われる賃金のうち通常の労働時間の賃金の計算額をこえる部分


当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

賃金が通貨以外のもので支払われる場合又は使用者が労働者に提供した食事その他のものの代金を賃金から控除する場合においては、最低賃金の適用について、これらのものは、適正に評価されなければならない(現物給与等の評価、第5条)。

食事その他の現物給与等についての評価は、当該地域の物価水準等の実情に応じ、使用者が当該物品を支給し、又は利益を供与するに要した実際費用を超えないこと。なお、住込労働者の食事以外の住込の利益については、原則として食事と別の特別の評価は認めないこと。労働協約又は労使協定で現物給与等の評価額を定めているときは、原則としてこれによること。ただし、協約又は協定で定める額が不適当であるときは、都道府県労働局長が前述の基準によって評価すること(平成16年3月16日基発0316002号)。

最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない(第8条)。この規定により使用者が労働者に周知させなければならない最低賃金の概要は、次のとおりとする(施行規則第6条)。

適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額

第4条3項3号の賃金

効力発生年月日

地域別最低賃金

賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない(第9条1項)。地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない(第9条2項)。この労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする(第9条3項)。

第9条1項は、最低賃金制度が今後とも賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えとして十全に機能するようにする必要があることから、地域別最低賃金をすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として位置付けることとしたため、地域別最低賃金があまねく全国各地域について決定されるべきであるという理念を明確化したものであること。

第9条2項においては、地域別最低賃金に係る決定基準の3つの要素は、いずれも当該地域におけるものであることを明確化したものであること。

第9条3項においては、最低賃金と生活保護との関係について、生活保護が健康で文化的な最低限度の生活を保障するものであるという趣旨から考えると、最低賃金の水準が生活保護の水準より低い場合には、最低生計費の保障という観点から問題であるとともに、就労に対するインセンティブの低下及びモラルハザードの観点からも問題があることから、第9条2項の労働者の生計費を考慮する際の1つの要素として生活保護に係る施策があることを、法律上明確化したものであること。なお、生活保護に係る施策との整合性は、各地方最低賃金審議会における審議に当たって考慮すべき3つの決定基準のうち生計費に係るものであるから、条文上は、生活保護に係る施策との整合性に配慮すると規定しているところであるが、法律上、特に生活保護に係る施策との整合性だけが明確化された点にかんがみれば、これは、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨であると解されるものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない(第10条1項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、1項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない(第10条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第10条1項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その意見の要旨を公示しなければならない(第11条1項)。第10条1項の規定による最低賃金審議会の意見に係る地域の労働者又はこれを使用する使用者は、第11条1項の規定による公示があった日から15日以内に、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる(第11条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない(第12条)。

厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、地域別最低賃金の決定を義務付けるものであること。また、地域別最低賃金の決定が行政機関に対して義務付けられたことから、地域別最低賃金については、決定後も常に検討を加え、その決定基準についての事情の変更が認められる場合には、その改正又は廃止を決定権者に対して義務付けるものであること。なお、旧法第16条の2第4項に規定する、一定の事業に対する適用猶予については、地域別最低賃金をすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網と位置づけたことから、平成20年改正により削除したものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

特定最低賃金

労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、当該労働者若しくは使用者に適用される一定の事業若しくは職業に係る最低賃金(以下「特定最低賃金」という。)の決定又は当該労働者若しくは使用者に現に適用されている特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をするよう申し出ることができる(第15条1項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、1項の規定による申出があった場合において必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該申出に係る特定最低賃金の決定又は当該申出に係る特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をすることができる(第15条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、2項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない(第15条3項)。

地域別最低賃金がすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として全国に展開することを前提に、産業別最低賃金が企業内における賃金水準を設定する際の労使の取組みを補完し、公正な賃金決定にも資する面があったことを評価し、安全網とは別の役割を果たすものとして、関係労使の申出を受けた行政機関は、最低賃金審議会の意見を聴いて、特定最低賃金の決定を行うことができることとしたものであること。この申出があった場合において、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該申出に係る特定最低賃金の決定又は当該申出に係る特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をすることができるものであること。また、一定の事業に対する適用猶予については、特定最低賃金が関係労使の申出を受けて厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定するものであり、その決定に当たっては、十分に関係者の意見を反映させることが必要であるため、第15条4項及び5項において、旧法同様に規定したものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

特定最低賃金は、地域別最低賃金において定める最低賃金額を上回るものでなければならない(第16条)。もっとも、特定最低賃金と地域別最低賃金の双方が適用される労働者については、そのいずれか高いほうが適用されることになり(第6条)、実際にも地域別最低賃金が特定最低賃金を上回ったために地域別最低賃金が適用される事例は少なからず存在する。

2以上の最低賃金が
競合する場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより平成20年改正後の第4条1項を適用するものであり、こうした優先関係は従来と変わるものではないが、この場合においても、地域別最低賃金については、改正後の第4条1項(最低賃金の効力)及び第40条(罰則)の規定の適用があることとしたものであること。したがって、特定最低賃金が適用される場合においても、地域別最低賃金において定める最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった使用者については、改正後の第4条1項違反として処罰することが可能であること(平成20年7月1日基発0701001号)。

第15条1項及び2項の規定にかかわらず、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、同項の規定により決定され、又は改正された特定最低賃金が著しく不適当となったと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる(第17条)。

特定最低賃金が著しく不適当となった場合には、労使からの申出を待つことなく、当該最低賃金の決定権者である厚生労働大臣又は都道府県労働局長自らが職権で廃止できるものであること。「著しく不適当となった場合」とは、例えば、特定最低賃金の対象となる労働者が存在しなくなったにもかかわらず廃止がなされていない場合が考えられるところであるが、特定最低賃金が関係労使のイニシアティブにより決定されるものであることに留意し、慎重な検討を行うこと。また、特定最低賃金が関係労使のイニシアティブにより決定されるものであることに留意し、職権による改正については規定しないこととしたものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

派遣労働者

派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第44条1項に規定する派遣中の労働者)については、その派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金・特定最低賃金を適用する(第13条、第18条)。

従来、派遣労働者に係る最低賃金については、派遣元の事業場に適用される最低賃金を適用していたところである。しかしながら、派遣労働者については、現に指揮命令を受けて業務に従事しているのが派遣先であり、賃金の決定に際しては、どこでどういう仕事をしているかを重視すべきであることから、平成20年改正により派遣労働者については、派遣先の事業場に適用される最低賃金を適用することとしたものであること(平成20年7月1日基発0701001号)。

減額特例

使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する(第7条)。この許可を受けようとする使用者は、許可申請書を当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出しなければならない(施行規則第4条1項)。
精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者

精神又は身体の障害がある労働者であっても、その障害が当該労働者に従事させようとする業務の遂行に直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可しないこと。

当該業務の遂行に直接支障を与える障害がある場合にも、その支障の程度が著しい場合にのみ許可すること。この場合に、支障の程度が著しいとは、当該労働者の労働能率が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうちの最下層の能力者の労働能率にも達しないものであること。

当該労働者に支払おうとする賃金額は、最低賃金額から当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうちの最下層の能力者より労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならないこと(平成16年3月16日基発0316002号)。


試の使用期間中の者


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