暴力団
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警察庁では、特に覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為の4種類の犯罪によるシノギを「暴力団の伝統的資金獲得活動」と位置付けているが[17]暴対法暴力団排除条例などの施行後は減少傾向にある。一方で、特殊詐欺や取引単価の高い海産物を狙った密漁などが増加傾向にある[18]

また、法と条例の規制によりシノギが難しくなったことによる組員の困窮化と犯罪の巧妙化と悪質化が問題となっている。その一例として、複数の暴力団関係者が別の組織の組員や犯罪グループと手を組んでATM不正引き出し事件を行った例があげられる。他には生活に困窮した組員による生活保護費を巡る詐欺拳銃を担保にした借金結婚式場での売上金の窃盗電気料金を抑えるためのメーターの違法改造などの事例もあげられている[19]

シノギでの失態や掟破りに対する組織内での制裁は、指詰めから除籍破門絶縁所払いに至るまで多岐に渡る。
構成員と準構成員
構成員と準構成員の違い

暴力団のメンバーを指す語として、「暴力団員」「構成員」「組員」などがあり、いずれも同じ意味合いを持つ[20]。一方で、これらを含む「暴力団関係者」の他の例として、組に所属してはいないが組との関係を有し、組員と似たようなこと、あるいは組のスポンサーのようなことを行う者を「準構成員」という[21]警察庁の定義によれば、準構成員とはすなわち、「構成員ではないが、暴力団と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、または暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力し、もしくは関与する者」となる[22]。ほか、準構成員よりさらに暴力団と距離を置く「暴力団関係者」を指す「共生者」という警察用語などがある[23]
構成員と準構成員数の変遷(勢力の減退)

暴力団の勢力は戦後の日本社会の混乱期に拡大し続けて、1960年代前半に最盛期を迎え組織数は1961年に5,400組織、構成員と準構成員数は1963年に184,100人の頂点に達した。これに対して警察は1964年から第一次頂上作戦、1970年から第二次頂上作戦を行い、その勢力を減退させた。また1992年には暴力団の活動を大幅に抑制する「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(平成3年法律第77号、暴対法)が施行され、1990年代後半時点では構成員と準構成員の総数は8万人前後と最盛期の半分程度までに減少した[4]

暴力団対策法施行後暫くは、減少した構成員を増加した準構成員で補う形で総数の横ばいが続いたが、2004年以降は共に数を減らしており、2010年から2016年は毎年5,000人?8000人程度、2017年以降は減少幅が少なくなったものの減少している。暴対法と暴力団排除条例はこのように暴力団の活動に打撃を与えて、構成員の減少には効果を上げているが、シノギが行えなくなった暴力団の犯罪の地下組織化も懸念されている。また、減少の一部には構成員から半グレグループに移った者も含まれていて、特殊詐欺や金の密輸などの組織犯罪分野で台頭している[24]。また、暴力団側も近年は新人や下部メンバーを組員として登録せず、傘下の半グレ集団の一員として活動させているとも言われる[25]

警察庁の発表によれば、2023年末時点の全国の暴力団勢力は20,400人で、19年連続で減少した。その内訳は、暴力団に所属する構成員(組員)が約10,400人、所属しないが暴力団の活動に関わる準構成員などは10,000人である[3][26]
構成員と準構成員の年齢構成の変遷(高齢化)

近年の暴力団構成員及び準構成員等の年齢構成は、40歳未満の層の減少が顕著であり、暴力団の高齢化が進んでいる。2022年末時点で構成員と準構成員の総数2万2400人の年齢構成は、20歳代が5.4%、30歳代が12.9%、40歳代が26.3%、50歳代が30.8%、60歳代が12.5%、70歳以上が11.6%で、50歳代以上で半数以上の54.9%を占め、平均年齢は54.2歳である[27]。但し、前述したように、暴力団構成員及び準構成員の減少の一部に半グレグループに流れた者がいること[24]、及び暴力団側も近年は新人や下部メンバーを組員として登録せず、傘下の半グレ集団の一員として活動させているとも言われており[25]、若者の暴力団離れが進んでも、他の犯罪組織グループに属していることに留意する必要がある。

1966年(昭和41年)末の時点で、20歳未満は6.3%(9,261人)、20歳代は49.8%(73,259人)、30歳代は29.5%(43,466人)、40歳代は9.0%(13,238人)、50歳代以上は5.4%(7,947人)と、40歳未満の層が約85.6%を占めていた。

1984年(昭和59年)末の時点で、20歳未満は1.8%(1,679人)、20歳代は22.6%(21,205人)、30歳代は39.3%(36,945人)、40歳代は25.8%(24,186人)、50歳以上は10.5%(9,895人)と、40歳未満の層が約63.7%を占めていた。

1989年(平成元年)版犯罪白書は、若者の暴力団離れと暴力団構成員の中高齢化が進んでいることを指摘しており、暴力団の高齢化自体は、この頃には既に進んでいた[28]

2006年(平成18年)末の時点で、20歳未満は0.1%、20歳代は12.6%、30歳代は30.6%、40歳代は22.1%、50歳代は20.5%、60歳代は11.8%、70歳以上は2.3%であり、40歳未満の層は約43.3%に過ぎず過半数を下回った[29]

2014年(平成26年)末の時点で、20歳未満は0.0%、20歳代は5.1%、30歳代は21.2%、40歳代は33.2%、50歳代は18.5%、60歳代は15.8% 70歳以上は6.2%と、40歳未満の層は約26.3%に過ぎなかった[30]

2019年(令和元年)末の時点で、20歳未満は0.0%、20歳代は4.3%、30歳代は14.0%、40歳代は30.4%、50歳代は28.2%、60歳代は12.3%、70歳以上が10.7%と、40歳未満の層は約18.3%に過ぎず、50歳代以上が51.2%と過半数を占めた[29]

2022年(令和4年)末の時点で、20歳未満は0.5%、20歳代は5.4%、30歳代は12.9%、40歳代は26.3%、50歳代は30.8%、60歳代は12.5%、70歳以上は11.6%と、40歳未満の層は約18.8%に過ぎず、50歳代以上が54.9%と過半数を占め、暴力団構成員の平均年齢が54.2歳(警察庁独自の試算では成人男性の平均年齢は2023年1月時点で55.3歳)となっている[31]

構成員の出自「街宣右翼#暴力団とのつながり」も参照

デビッド・カプランとアレック・デュブロの共著になる『ヤクザニッポン的犯罪地下国と右翼』(第三書館)には、「非公式なものであるが、警察は、日本の最大広域暴力団・山口組の構成員2万5千人のうち約70%の者が部落出身者であり、約10%の者が韓国人等の外国人であると考えている」という記述がある[32]。ただし、原書のみ。邦訳版では削除。加藤久雄が、自身の論文の中でこのデータを引用した。

宮崎学大谷昭宏共著の『グリコ・森永事件 最重要参考人M』では「マイノリティが絶対絡んでいると思う。これが関西の事件の特殊性である。たとえば、構成員千人のヤクザ組織があったら、そのうち九百人までがマイノリティである」「関西でヤクザといえば、どうしてもマイノリティになる」と記されている[33]

公安調査官菅沼光弘は、2006年10月19日に行われた東京・外国特派員協会における講演で、山口組のナンバー2である高山清司から聞いた話として、暴力団の出自の内訳は部落(同和)60%、在日韓国・朝鮮人30%、一般の日本人など10%であるという見解を示した[34]。なお、菅沼の現職時代の担当は共産圏分析。また公安調査庁は暴力団自体が管轄外。

山口組顧問弁護士を務めた山之内幸夫は『文藝春秋』昭和59年11月号に寄せた「山口組顧問弁護士の手記」において「ヤクザには在日朝鮮人や同和地区出身者が多いのも事実である」「約65万人(当時)[注釈 2]といわれる在日朝鮮人のうち約50%が兵庫・大阪・京都に集中していることと山口組の発展は決して無関係ではなく、山口組は部落差別や在日朝鮮人差別の問題をなしにしては語れない」と述べた[35]

被差別部落の詩人植松安太郎は「ご承知のとおり山口組のなかの70%は部落民だといわれているけれど、関東だって切った張ったのやくざの手下や用心棒のなかには部落民がいっぱいいるわけですよ」と語っている[36]

猪野健治は、『やくざと日本人』の中で、「ヤクザ組織の構成員は、そのほぼ70パーセントが階層底部に沈殿する被差別階層で占められている」と記している[37]


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