紀年法についても、多くの国ではグレゴリオ暦と一体化しているキリスト紀元(AD)が使用されている。一方で、いくつかの国ではグレゴリオ暦を使用しつつ、紀年法においてはキリスト紀元のかわりに独自のものを採用している。例えばタイ王国では釈迦が入滅した翌年の紀元前543年を紀元とする仏滅紀元を採用しており[66]、また中華民国では建国した1912年を紀元とする民国紀元が西暦と併用される[67]。1997年には、北朝鮮において金日成の生誕年である1912年を紀元とする主体年号の使用が開始された[68]。また、日本においては元号の使用が世界で唯一残存しており[69]、2019年5月1日には令和への改元が行われた[70]。
世界の暦法はほとんどの地域でグレゴリオ暦へと切り替えられたが、旧暦によって行われていた年中行事や祭日が新暦へ直接移行するわけではないことが多い。例えば日本では、雛祭りのように完全に新暦へと移行したもの、新暦の8月13日から8月16日にかけて行われるお盆のように、旧暦に配慮して1ヶ月だけ行事を遅らせる月遅れ、そして十五夜のように完全に旧暦のまま行うものが存在する[71]。中国や韓国、ベトナムでは新暦移行後も旧暦の正月である春節を盛大に祝っている[72]。またロシア正教会やジョージア正教会、セルビア正教会など一部の正教会は祭日を従来のユリウス暦で行っているため、これらの国々ではクリスマスはユリウス暦の12月25日(グレゴリオ暦では1月7日)に行われる[73]。イスラム圏の国々ではヒジュラ暦に基づいて行事や祭礼が行われるが、特にラマダーンの開始は目視による新月の観測から求められるため、実際には日取りがずれることが珍しくない[74][75]。 現在世界の大部分で使用されているグレゴリオ暦は精度が高いものの、1ヶ月の日数が一定でないことや、1ヶ月が7の倍数でないため週とのかみ合わせが悪く日付と曜日が一致しないこと、そしてキリスト教色が強すぎるといった問題点が存在するため、それを改善するための改暦案が数多く提案されてきた[76]。1793年にはフランスの国民公会がフランス革命暦を制定し、グレゴリオ暦からの脱却を図ったものの、週の廃止や時制の十進法への変更などといった急進的すぎる改革は大きな混乱を生み、1806年にはナポレオンによって廃止された[77]。フランス革命暦の失敗後、1か月を28日で固定し1年を13か月とするオーギュスト・コントの実証暦
提案されている暦法
実用品としての暦インドネシアのカレンダー
この場合、暦とはいわずカレンダーということが多い (詳しくはカレンダーの項を参照)。主に予定管理などに使われる。形式は日めくり、月めくりなど様々なものがあり、月めくりのカレンダーの場合だけでも月曜始まりと日曜始まりの2種類がある(稀に土曜始まりもある)。そのほかにも、1日1日が分離されていてパズルのように組み立ててカレンダーにする、というものもある。
カレンダーの始まりは年初である1月であるものが多いが、日本の学校や会社などでは年度の始まりである4月を先頭とするカレンダーも存在する[80]。カレンダーは印刷業者や出版業者によって生産され、おもに翌年に備えて年末に購入されることが多い[81]。また、日本では宣伝などのために一般企業が生産業者に社名入りのカレンダーの制作を依頼し、粗品として配布されることも多い[81]。カレンダーが各種企業や団体からの依頼で受注生産されることは世界でもほぼ共通で、宗教団体や公的機関、民間団体、企業といったさまざまな団体名義のカレンダーが世界中で発行されているほか、商品として販売されるものが存在することも同様である[82]。
日本では大宝元年(701年)に陰陽寮が設置され、そこに置かれた暦博士が暦を制作し、御暦奏の後に官庁へと頒暦していた。ここで制作された暦は吉凶判断のための様々な暦注が漢文で記されたいわゆる具注暦だったが、平安時代後期には簡略化され仮名文字で書かれた仮名暦も広く発行されるようになり、また暦道が幸徳井家の家職化された[83]。