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またイランにおいてはイスラム教伝来後も、ヒジュラ暦が季節を示す役割を持たなかったため、農業上や行事上の要請から旧来の太陽暦が存続・発展し、イラン暦として現代でも使用されている[28][29]。このほかにも、エチオピア暦[30]、シャカ暦やコッラム暦といったインドのいくつかの暦[14]は太陽暦となっている。

ユリウス暦はかなり正確なものであり、暦と太陽年のずれは128年に1日に過ぎなかったものの、ユリウス暦施行から1000年以上経つとそのずれは無視できないほどにまで広がっていた。そこで1582年にローマ教皇グレゴリウス13世によって改暦が行われ、より正確なグレゴリオ暦が導入された。グレゴリオ暦はカトリック圏ではほぼ即座に採用され、プロテスタント圏では18世紀、ギリシア正教圏では20世紀に入ってから導入された。また1873年の日本を皮切りに非西欧諸国でも相次いでグレゴリオ暦が採用されるようになり、21世紀にはほとんどの国でグレゴリオ暦が使用されている[31]
日本と暦詳細は「日本の暦」を参照

中国の暦が日本に伝えられたのがいつであるか定かではないが、『日本書紀』には欽明天皇14年(553年)に百済に対し暦博士の来朝を要請し、翌年2月に来たとの記事があり、遅くとも6世紀には伝来していたと考えられる[32]。この頃の百済で施行されていた暦法は元嘉暦であるので、このときに伝来した暦も元嘉暦ではないかと推測される。元岡古墳群(福岡県福岡市)出土の金錯銘大刀(庚寅銘大刀)には「庚寅正月六日庚寅」の銘文があるが、元嘉暦に基づけば570年1月6日と推定され、これが日本における最古の暦使用を示す考古資料となる可能性がある[33]。また、推古天皇10年(602年)に百済から学僧観勒が暦本や天文地理書などを携えて来日し、幾人かの子弟らがこの観勒について勉強したとある[34]

平安時代に編集された『政事要略』という本には推古天皇12年(604年)から初めて暦の頒布を行ったと書かれているが、『日本書紀』では持統天皇4年(690年)の条にある「勅を奉りて始めて元嘉暦と儀鳳暦とを行う」という記事が初めてであり、正式採用は持統天皇6年(692年)からという説がある。文武天皇元年(697年)8月からは元嘉暦が廃され、儀鳳暦が専用された[35]。儀鳳暦はで施行された麟徳暦のことである。元嘉暦と儀鳳暦の大きな違いは朔日の決定方法と閏月の置き方である。朔日については、前者は平朔を、後者は定朔を使用していた[36]。また、置閏法については、元嘉暦が19年7閏月という章法を採用していたのに対し、儀鳳暦では章法に拘らない破章法を用いていた。

儀鳳暦以降、天平宝字7年(763年)に大衍暦天安2年(858年)に五紀暦貞観4年(862年)に宣明暦と、唐で施行された暦法が相次いで輸入され施行されたが、その後改暦は行われず、宣明暦は江戸時代の1684年まで823年間も施行された[37]。実際の毎年の暦の作成・頒布は暦博士などの暦道の人々が行った。貞享暦1729享保14)年版。国立科学博物館の展示。

江戸時代になると日本でも独自に天文暦学が発展した。長期にわたって改暦が行われなかったことから、置閏に必要な二十四節気測定に、誤差が累積してずれが目立ちはじめ、置閏に問題をきたすようになった(旧暦は朔日(新月)を1日とするルールだが、それは破綻していない)。このような中で、渋川春海が最初の日本独自の暦法である貞享暦を作るのに成功し、貞享元年(1684年)に改暦が行われた[38]

貞享暦以後、宝暦5年(1755年)宝暦暦が施行されたがあまり正確なものではなく、寛政10年(1798年)には高橋至時間重富らによって寛政暦が作製され施行された。そして弘化元年(1844年)には日本で最後の太陰太陽暦となる天保暦が施行された[39]。天保暦はこれまでに実施された太陰太陽暦の中で最も精密なものといわれ、当時中国で用いられていた時憲暦を上回ったと評されているが[40]、当時の世界の流れに逆行して不定時法を導入するなどの問題点もあった。

幕末に開国が行われ欧米諸国との貿易が本格化すると、日付や年のずれからトラブルが発生し、またこれら諸国の採用する太陽暦が使いやすく世界中で広く使用されていることから、日本でも太陽暦採用を求める動きが出はじめ、明治5年11月に明治政府によってグレゴリオ暦施行が決定されて、翌明治6年(1873年)から導入された[41]

現在でも民間では太陰太陽暦は年中行事や占いのために用いることがあり、これを旧暦と呼んでいるが、これは閏月の置き方を天保暦に借りはしているものの数値や計算法は現代の理論に従っているので、厳密には天保暦と同義ではない。


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