暗殺教団
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同時に「?a????」の語がイランのニザール派に用いられることもほとんどなく、シリア史料における「?a????」が指すものはシリア・ニザール派と考えられる点から、ニザール派そのものを「?a????」と結びつけた東洋学的見解の誤謬も指摘されている。

また「?a????」の語でニザール派を呼ぶ史料であっても、実際の大麻吸引について記述する史料はイスマーイール派、反イスマーイール派双方とも存在しておらず、「マルコ・ポーロ」の「山の老人」伝説についても、大麻の存在・効用はこの時期広く知られており成立しない。この点からも実際の大麻吸引から「?a????」と呼ばれるようになったわけではなく、「?a????」という蔑称がすでに成立しており、これをもってニザール派の呼称としたのであろうとされている。

暗殺教団伝説は、このように暗殺、麻薬、山中楽園、なぞめいた老人、十字軍といった魅力的モチーフに彩られたものであり、さらに学問的に裏付けられさえした点でオリエンタリズムの典型といえるものであった。大麻との関わりが否定されても、なおイメージは根強く、十字軍時代のシリアでの暗殺事件は直ちにニザール派が関わっているものとされがちであるが、確定されているものは少ない。ニザール派に関わる伝説は数多く、ニザール派を打ち立てたハサン・サッバーフ、詩人ウマル・ハイヤーム、セルジューク朝の宰相ニザーム・アル=ムルクが親友であったとする「三人の友」伝説などはその例で、ニザーム・アル=ムルクの暗殺を通じて、暗殺教団伝説と結びついて格好の文学的素材を提供している。

一方で暗殺教団伝説と混淆しがちであったイスマーイール派研究、なかでもニザール派研究は1955年、ホジソンのアラムート期ニザール派通史が出版されるにいたって、伝説からは離れ学術的研究が行われることになった。しかしアメリカ同時多発テロ事件以来、アメリカを中心として「暗殺」のイメージでのリンクから、「暗殺教団」に対し、シーア派とスンナ派の差異や史料・先行研究などを無視して、イスラームの本質があらわれた歴史的事実として論ずるような傾向も現れている。
参考文献

Daftary, Farhad, The Assassin Legends : Myths of the Isma'ilis, I. B. Tauris, 1995.
ISBN 1850439508 (ペーパーバック版。初版は1994年。ド・サシーのMemoireの英訳を全文掲載)

Hodgson, Marshall G. S., The Secret Order of Assassins: The Struggle of the Early Nizari Ismailis against the Islamic World, University of Pennsylvania Press, 2005. ISBN 0812219163 (左は現在流通するペーパーバック版。初版は1955年)

Lewis, Bernard, The Assassins: A Radical Sect in Islam, Basic Books, 2002. ISBN 0465004989 (ペーパーバック版。初版は1967年)

バーナード・ルイス著、加藤和秀訳『暗殺教団―イスラームの過激派』(新泉社、1973年)


フレヤ・スターク『暗殺教団の谷―女ひとりイスラム辺境を行く』(現代教養文庫、1982年)

関連項目

ニザール派(歴史のなかのニザール派)

ラシード・ウッディーン・スィナーン(シリアにおけるニザール派指導者。「山の老人」のモデル)

アサシン

オリエンタリズム

シルヴェストル・ド・サシー(英語版)

アサシン クリード(暗殺教団を題材にしたゲームソフト

エグザイル(暗殺教団を題材にしたゲームソフト。PC版では麻薬による能力強化という要素もある)

外部リンク

山の長老
東方見聞録マルコ・ポーロ(赤城正蔵, 1914)

「山の老人」と「暗殺者」の話『東方見聞録マルコ・ポーロ(青木一夫, 1960)

ある有名な暴君の事績『東方見聞録』現代フランス語版

前述の暴君はいかにして殺されたか『東方見聞録』現代フランス語版

典拠管理データベース: 国立図書館

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イスラエル

アメリカ

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