景気循環
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ただし、2008年4月以降、コンポジット・インデックス(CI)を中心とする景気動向指数に切り替わり[2]、それ以後は、CIによる景気判断も加わるようになった[3]

景気拡張期や後退期の好況・不況の判断の際には、産出量ギャップ(GDPギャップ)を参照。
4局面分割

4局面分割では正常な水準から出発して、好況(拡張・拡大)、後退、不況(収縮)、回復の各局面を経て、再び正常な水準に戻るまでを1循環とすることが多い。

多くの景気循環の計測において、2分割(景気拡張期、景気後退期)で示されることが多いが、景気循環の計測の基礎となっているバーンズとミッチェルの景気循環の定義では4分割であらわされている。ただし、回復と好況、および後退と不況の境目を計測することが困難なため、ほとんど4分割で表示されることはない[4]

景気動向指数と景気循環2局面分割景気の谷景気の拡張(拡大)期景気の山景気の後退期景気の谷
4局面分割回復好況(拡張・拡大)後退不況(収縮)

景気循環の種類

古典的な景気循環論として、次の4つが知られている。キチン循環、ジュグラー循環、クズネッツ循環、コンドラチェフ循環であり、それぞれ循環の発見者の名前をとっている[5]。また、循環は波とも呼ばれる[5]

循環を周期の違いで分類する研究は、現代マクロ経済学が発展してから学会の関心を失った。分類研究は常日頃に起こる循環を考えるのにほとんど役に立たないからである[6]
キチン循環

約40ヶ月の比較的短い周期の循環。短期波動とも呼ばれる。アメリカの経済学者ジョセフ・A・キチン1923年の論文でその存在が主張され、ヨーゼフ・シュンペーターの景気循環論によって「キチン循環」と名づけられた。主に企業の在庫変動に起因すると見られる。

在庫循環は長く景気循環の基礎であったが、1990年代アメリカの長期好況の中でこの循環は次第に不明瞭になっていった。一時は、景気循環が消滅したとまで言われたが、実際には設備投資の循環などを軸に景気循環は全く衰えていなかった。しかし、21世紀に入って在庫循環が次第に不明瞭になっていることは明らかになっている。グローバル化IT革命サプライチェーン・マネジメントの進展→在庫調整の短期化)が要因として挙げられている。1999.1Q-2005.3Qの日本の在庫循環

右図は1999年第一四半期から2005年第三四半期までの、日本における在庫循環である。横軸が鉱工業生産指数の前年比変動率、縦軸が在庫指数の前年比変動率である。青線が循環の一周期である。赤線は次の周期の途中である。青線は1999年第一四半期から、2002年第二四半期まで14四半期(3年半:42ヶ月)である。

図の説明と循環(青線)の展開について述べる。
図の説明
在庫循環の図は右が生産の増加過程、左が生産の減少過程である。そして、上が在庫の増加過程、下が在庫の減少過程である。これにより生産と在庫の組み合わせが四つできる。
生産増在庫増
生産が増加し出荷を上回るために在庫が増加する状態で景気拡張の末期である。
生産減在庫増
生産過剰が調整され生産減少が始まるが、依然出荷を上回るため在庫は増加する。景気後退の初期である。
生産減在庫減
生産が減少し出荷を下回るため、在庫が減少する。景気後退の末期である。
生産増在庫減
出荷が回復し在庫水準がさらに低下したために生産が回復するが、出荷を下回るために在庫が減少する。景気拡張の初期である。このように、生産が出荷に遅行する傾向があるため、在庫循環は左回りになる。
循環(青線)の展開

1999.1Q-1999.2Q 生産減在庫減1999年始めは、1998年における世界的な経済変調と日本の危機的な経済状況(金融危機)を抜け出し、景気後退の最終段階にあった。

1999.3Q-2000.3Q 生産増在庫減1999年後半から2000年の間は世界的なITバブルの絶頂期にあり日本の生産は回復基調に乗った。

2000.4Q-2001.1Q 生産増在庫増2000年秋にはITバブルが崩壊して失速し、在庫が積みあがった。

2001.2Q-2001.3Q 生産減在庫増在庫調整で生産は減少に転換した。

2001.4Q-2002.2Q 生産減在庫減生産はさらに減少し、出荷の低下を上回ったため在庫は減少に転じた。日本の景気は最も厳しい時期にさしかかった。

2002.3Q - (赤線)生産増生産は緩やかな回復を続ける。

ジュグラー循環

約10年の周期の循環。中期波動とも呼ばれる。フランスの経済学者クレマン・ジュグラー1860年の著書の中でその存在を主張したため、シュンペーターの景気循環論から「ジュグラー循環」と呼ばれる。企業の設備投資に起因すると見られる。
クズネッツ循環

約20年の周期の循環。アメリカの経済学者サイモン・クズネッツ1930年にその存在を主張したことから、「クズネッツの波」と呼ばれる。約20年という周期は、住宅や商工業施設の建て替えまでの期間に相当することから、建設需要に起因するサイクルと考えられている。子が親になるまでの期間に近いことから人口の変化に起因するとする説もある。なお、クズネッツはシュンペーターの景気循環論に対して批判的だった。
コンドラチェフ循環

約50年の周期の循環。長期波動とも呼ばれる。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、シュンペーターによって「コンドラチェフの波」と呼ばれ、その要因としてシュンペーターは技術革新を挙げた[注 1]。第1波の1780 - 1840年代は、紡績機蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840 - 1890年代は鉄鋼鉄道建設、1890 - 1920年代の第3波は電気化学自動車の発達によると考えた。この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もある。その後の第4波がエレクトロニクス原子力航空宇宙、第5波がコンピューターを基盤としたデジタル技術バイオテクノロジーとして、それが現在終わりに差し掛かっているといった見方や、現在も第4波が続いていて、これからライフサイエンス人工知能ロボットがけん引する第5波が来るといった見方がある[7]
景気循環の影響

短期的な経済変動は、支出面の動きで決まるとされている[8]
賃金

一般にインフレや景気と賃金がスライドする労働者(会社員など)に比べ、賃金硬直性の強い労働者(公務員など)は、好景気時は相対的に貧しくなる。一方、景気の悪い時期においては、公務員などは会社員などと比べると賃金が下がりづらい為、相対的に豊かになる。
雇用

一般的に、景気が良くなっているときは企業は人を増やそうとして企業などに雇われる雇用者は増加する。一方、景気が悪くなっているときは企業はコスト削減のために人件費を減らそうとして雇用を抑制、または雇用者を解雇する。なお、雇用関係の指標は景気に対して遅行する場合が多い。詳しくは失業を参照。
金融機関

不況になると、企業の資金需要は減退し、貸出金の増加テンポが鈍くなり、やがて減少に転じる。不景気が長期化すると不良債権が増えて貸倒引当金を積み増すため、利益が圧迫される。好景気になると、企業は、金融機関から資金を借りてでも資金調達し、生産設備等の設備投資にあるいは運転資金に充てようとするため、資金需要が旺盛となり、金融機関の貸出金残高も増加する。やがて業績不振の企業が立ち直ると共に不良債権が減り引当金が必要なくなり、これを取り崩すため、利益が増大する。

同様に、個人についても好況が続くと、将来的にも雇用不安が少なくなり、賃金が確保できる予想が成り立ち、地価や住宅価格の上昇が予想されることから、今のうちに住宅ローンを借りてでも、住宅を手に入れようとする人が増えるので、住宅ローンの取り扱いがふえて、金融機関のローン残高も増える。特に、景気の上昇が鮮明になり、ローン金利の上昇が見込まれるときには駆け込み的に申し込みが増える。個人についても、住宅ローン金利の変動については敏感になっている。

金利についても、景気循環とともに変動するがこれについては、当該項目を参照のこと。
政府・自治体

好景気になると、税収が増え財政赤字が減少する。不景気になると、失業給付公共事業が必要になる一方で、税収が減少し財政赤字になる(ビルト・イン・スタビライザー)。
景気の表現の仕方

景気には、四局面の内で、谷や山が著しくなる場合などがあり、いろいろな表現のされ方をする。
ユーフォリア
陶酔的熱狂という意味で、設備投資や資産投機が盛り上がる理想的な状態。物価上昇率と失業率が共に低下する。資産高騰の反動が起きるリスクもあるが、状況の最中においては「理想的」に見える。
1980年代前半の世界経済は、オイルショック(第1次・第2次石油危機)後の原油価格低下の中でインフレなき高成長を達成した。
恐慌
設備投資後退に端を発する深刻な不景気。


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