普通話
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日本に潜伏した清国維新派の王照(中国語版)が日本のカタカナを参考に1900年に「官話合聲字母」を発表し、それをベースに国が漢字の読みを統一する国音(標準音)の検討を通じて注音符号が採用された。国音のつづり方は激論の末、各地の発音を折衷したものとなった。新文化運動の時代には言文一致運動にあたる白話文運動が起こり、それまで古典に対する教養を前提とした統治階層の書き言葉である文言文を廃止し、一般民衆が話す言葉に根付いた書き言葉である白話文を使うことが提唱された。紆余曲折を経て、最終的に北京語音が国音となった。
普通話の歴史「標準中国語」も参照

「普通話」という言葉を初めて使ったのは朱文熊(中国語版、英語版)とされる。朱文熊は1906年、『江蘇新字母』において中国語文言・普通話・俗語に3分類した。

中華人民共和国成立後の1955年10月共産党と人民政府は全国文字改革会議と現代漢語規範問題学術会議を招集し、そこで現代漢民族の共通語の名称「普通話」とその内容が確定された。これを受けて教育部は11月、「中学・小学および各級師範学校において大いに普通話を推し広めることに関する指示」を発表した。翌1956年国務院が「普通話を推し広めることに関する指示」を頒布して、普通話の名称と内容を法律として定め、同年5月、「各省(市)教育庁(局)において普通話推広処(科)を設立することに関する通知」を発表した。1957年には教育部が「継続して普通話を推し広めることに関する指示」を発表し、1960年には中国人民解放軍総政治部が「全軍において?音字母を学び普通話を推し広めることに関する指示」を発表し、教育機関や軍隊において普通話を使うことが推奨された。

その後、文化大革命により普通話政策は一旦頓挫することになるが、文化大革命終結後、再開され、1982年11月には第5期全国人民代表大会第5次会議を通過した中華人民共和国憲法第19条に「国家は全国で通用する普通話を推し広める」ことが規定され、普通話の公用語としての地位が確立された。
音韻体系詳細は「?音」を参照

普通話の音韻体系では、21の子音と10の母音音素として立てられている。中国語音節構造は(子音C) + (母音M) + 母音V + (子音C/母音V) / 声調T、すなわち(C)(M)V(C/V)/T である。伝統的な音韻学では、先頭部分のCを声母、M以下の部分を韻母に2分し、それに声調を加えて分析している。普通話では21の声母と39の韻母があり、声調では4種の調類がある。

普通話の音節には入声が存在せず、日本語において「っ」で表す促音に相当する発音がない。

中国語は主として漢字で表記するが、音素を表記するために?音と呼ばれるローマ字が使われる。これに声調記号を組み合わせることで発音を表現する。
声母

声母とは中国語音節構造上、頭子音にあたるものをいう。普通話では21の声母が設けられている。この他に頭子音として半母音の[w, j, ?]が存在し、wとyで表記されるが、伝統的にこれらは韻母に分類される。

 歯茎反り舌歯茎硬口蓋軟口蓋
破裂音無声無気音b [p]d [t]  g [k]
無声有気音p [p?]t [t?]  k [k?]
鼻音m [m]n [n]   
破擦音無声無気音 z [t?s]zh [???]j [t??]2 
無声有気音 c [t?s?]ch [????]q [t???]2 
摩擦音f [f]s [s]sh [?]x [?]2h [x]
側面接近音 l [l]r [?~?]1  
声母の順序は、 b p m f  d t n l  g k h  j q x  zh ch sh r  z c s である。

漢字に添えてその発音を示すときは、綴りを短くするため、zh, ch, sh を?, ?, ?と省略することができることになっているが、現実の使用例はほとんどない。

1 r を有声そり舌摩擦音 [?] と分析することもあるが、無声・有声の対立が他に無いこと、および実際の発音で摩擦が必須ではないことから、そり舌接近音 [?] と見なしている。
2 j, q, x ([t??, t???, ?]) の三者は独立の音素ではなく、z, c, s ([t?s, t?s?, s])、zh, ch, sh ([???, ????, ?])、g, k, h ([k, k?, x]) のいずれかの三者の異音と見なされる。一般には、g, k, h の異音と見なすのが好まれる。この組が b, p, f および d, t, l の各組と並列になるためである。普通話の点字はそのようになっており、?音の j, q, x の点字はそれぞれ g, k, h の点字と同じである。
韻母

韻母とは、中国語の音節構造上、頭子音を除いた残りの部分をいう。介音、主母音、尾音からなる。介音は半母音の /-i-/, /-u-/, /-y-/ のいずれか、尾音は半母音の /-i/, /-u/ および鼻音の /-n/, /-?/ のいずれかである。普通話の韻母の重要な特徴は、主母音の /a/ と /?/ の対立である。

主母音尾音介音
O/i//u//y/
/a/O[a]
a[ia]
ya[ua]
wa 
/i/[ai]
ai [uai]
wai 
/u/[au]
ao[iau]
yao  
/n/[an]
an[i?n]
yan[uan]
wan[y?n]
yuan
/?/[a?]
ang[ia?]
yang[ua?]
wang 
/?/O[?]
e[ie]
ye[uo]
wo 1[ye]
yue
/i/[ei]
ei [uei]
wei 
/u/[ou]
ou[iou]
you  
/n/[?n]
en[in]
yin[u?n]
wen[yn]
yun
/?/[??]
eng[i?]
ying[u??, ??]
weng, ong 2[i??]
yong
O[??], [z?]
-i[i]
yi[u]
wu[y]
yu

1 ?音では b, p, m, f のあとに o を用いるが、これは他の頭子音のあとの uo と同じである。
2 /u??/ は頭子音があると [??] に変わり、?音も weng から -ong になる。r化した韻母を以下に示す。

主母音尾音
(r化)介音
O/i//u//y/
/a/O[a?][ia?][ua?] 
/i/[a?] [ua?] 
/u/[au?][iau?]  
/n/[a?][i??][ua?][y??]
/?/[a??][ia??][ua??] 
/?/O[??][i?][uo?][y?]
/i/[?] [u?] 
/u/[ou?][iou?]  
/n/[?][i?][u?][y?]
/?/[??][i??][u??, ???][i???]
O[??], [z?][i?][u?][y?]

r化は /-i/ および /-n/ を単に削除し、/-?/ を削除して主母音を鼻母音化する。

以下に伝統的な分析を示す。普通話の韻母の種類には単母音で構成される単韻母、二重母音・三重母音で構成される複韻母、音節末子音が鼻音で構成される鼻韻母がある。いくつかの方言に見られる破裂韻母(入声)は普通話には存在しない。複韻母についてa, e, o から始まる下降二重母音の韻母を前響複韻母、i, u, u から始まる上昇二重母音の韻母を後響複韻母、三重母音の韻母を中響複韻母という。韻母は発音開始時の口の開き方から四呼の4種に分類される。

開口呼斉歯呼合口呼撮口呼
開韻尾a [a]ia [ia]ua [ua]
e [?]ie [ie]uo [uo]ue4 [ye]
-i [??], [z?]i [i]u [u]u4 [y]
母音韻尾ai [ai]uai [uai]
ei [ei]uei3 [uei]
ao [au]iao [iau]
ou [ou]iou3 [iou]
er [a?]
鼻音韻尾an [an]ian [i?n]uan [uan]uan4 [y?n]
en [?n]in [in]uen3 [u?n]un4 [yn]
ang [a?]iang [ia?]uang [ua?]
eng [??]ing [i?]ueng [u??]
ong [??]iong [i??]

3 声母と結合する場合は、主母音を省略して、uei → ui, iou → iu, uen → un と表記する。
4 u は、j, q, x の後では u と表記する。

通常全ての母音は口母音で発音されるが、[?] で終わる音節の母音は、儿化しなくても鼻母音で発音されることが多い。

韻母はさらに韻頭・韻腹・韻尾の三つの部分に分けて分析される。韻頭は上昇二重母音の始めの音色である狭母音あるいは半母音を表し、介音と呼ばれる。韻腹は単母音あるいは二重母音・三重母音中、最も際だった音色の母音を表し、主母音と呼ばれる。韻尾は下降二重母音の終わりの音色である狭母音であるか音節末の鼻音子音を表し、尾音と呼ばれる。


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