時計じかけのオレンジ
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夫人はすでに肺炎により死亡しており、作家はその死をかつて押し入った少年(マスクを被ったアレックス)からの強姦に原因があると思い込んでいた。また、作家自身はアレックスから受けた暴行の負傷により車椅子生活を送っていた。

作家はアレックスが受けたルドヴィコ療法を新聞報道により知っており、犯罪対策に手段を選ばない政府の横暴に憤っていた。そして、目の前に現れた彼を利用することで政権にダメージを与えることを思いつく。作家は入浴を勧め、アレックスが入浴している間に電話で要人と熱心に打ち合わせをする。風呂に浸かって安堵したアレックスは「雨に唄えば」を歌い始める。作家はこの歌声でかつて自分達夫婦を襲ったマスクの少年が彼であると気づくと、我を忘れるほどの激しい憎悪が湧き上がる。

入浴を終えたアレックスは食事にありつくが、作家の様子に違和感を覚えた。要人が到着し、アレックスは治療の詳細な質問に応じる。「『第九』を聴くと死にたくなる」ということを話したところで、アレックスはワインに入れられた薬物により意識を失う。

意識を取り戻すとアレックスは高い階の部屋に監禁されており、大音量の「第九」を聞かされる。アレックスは激しい嘔吐感に襲われ、死ぬつもりで窓から飛び降りる。暴力に対して過剰な嫌悪反応を植えつけられた彼だが、自己に対する暴力の手段が残っていた。アレックスを自殺に追い込み、メディアを利用して政府打倒を目論むことが作家の企てであったが、アレックスは死ななかった。
アレックスの回復

アレックスが目覚めると、ギプスと包帯姿で病院のベッドに横たわっていた。体が少し回復すると精神科医が現れて、絵のシチュエーションに相応したセリフを答えるテストを始めるが、もはや受け答えに性行為や暴力行為への抵抗はなくなっていた。

特別な個室に移されたある日、ルドヴィコ療法実施をアレックスに決めた内務大臣が訪れ、治療が原因の自殺未遂事件で下がった政府の支持率を回復するため、世間に対して今度はルドヴィコ療法から完治したデモンストレーションをして欲しい、と言葉を濁しながら頼む。アレックスは野心的に快諾すると、大臣は友好の証としてプレゼントがあると応じた。商談が成立すると、待機していた2台の大きなスピーカーと大勢のカメラマンが部屋に雪崩れ込み、仲睦まじそうに手を取り合う両人の撮影を始める。大音量で鳴り響く「第九」のなかでアレックスはセックスシーンを思い描きながら恍惚の表情を浮かべる。それは以前の邪悪な顔つきそのものであった。
出演

役名説明俳優
アレックス(Alex DeLarge
)主人公の不良少年マルコム・マクダウェル
ディム(Dim)不良仲間“ドルーグ”ウォーレン・クラーク
ジョージー(Georgie boy)不良仲間“ドルーグ”ジェームズ・マーカス
ピート(Pete)不良仲間“ドルーグ”マイケル・ターン
乞食の老人冒頭で襲われる酔っ払いポール・ファレル(英語版)
ビリー・ボーイ(Billyboy)主人公と敵対する不良頭リチャード・コンノート
ミスター・フランク(Frank)被害者の作家パトリック・マギー
ミセス・アレクサンダー(Mrs. Alexander)作家の妻(赤い服)エイドリアン・コリ
キャットレディ(Cat Lady)主人公に襲われるミリアム・カーリン(英語版)
デルトイド(Deltoid)主人公の担任教師オーブリー・モリス(英語版)
トム(Tom)警官スティーヴン・バーコフ
バーンズ(Barnes)口髭の看守長マイケル・ベイツ
刑務所の牧師(Prison Chaplain)チョイスの名演説をしたゴッドフリー・クイグリー(英語版)
女医(Dr. Branom)-マッジ・ライアン(英語版)
ダッド(Dad)主人公の父親、禿げているフィリップ・ストーン
ママ(Mum)派手なカツラの母親シーラ・レイナー(英語版)
ジョー(Joe)赤い服の下宿人クライブ・フランシス(英語版)
フレデリック(Frederick)内務大臣アンソニー・シャープ(英語版)
精神科医(Psychiatrist)-ポーリーン・テイラー

スタッフ

製作・監督・脚本:
スタンリー・キューブリック

原作:アンソニー・バージェス

撮影:ジョン・オルコット

プロダクション・デザイン:ジョン・バリー

音楽:ウォルター・カルロス

撮影:ジョン・オルコット

美術:ジョン・バリー

衣装:ミレーナ・カノネロ

編集:ビル・バトラー

撮影

この映画の舞台は近未来のイギリスだが、ほぼ全てロケで撮影されセットでの撮影はほぼされてない。

映画中にある新療法の実験シーンの際、アレックス役のマルコム・マクダウェルが装置でまぶたを固定される場面があるが、撮影中にこの装置の位置がずれて目の中に直接入り、角膜を傷つけた[2]

また、警察に就職した昔の仲間に頭を掴まれ水槽に沈められるシーンの撮影では、マクダウェルの呼吸用に空気を送るパイプが仕掛けられていたが、撮影の際には故障したのか空気が送られず、マクダウェルは演技ではなく本当に窒息状態に陥った。
音楽

映画では、クラシック好きのアレックスの設定が生かされた選曲がなされている。音楽を担当したのはウォルター・カーロスで、シンセサイザーを用いたベートーヴェンの『交響曲第9番』の演奏にヴォコーダーで加工した合唱(レイチェル・エルカインドの歌唱)が加わる斬新なものと、オーケストラの演奏による同曲(演奏はフェレンツ・フリッチャイ指揮/ベルリン・フィル他)、エルガーの『威風堂々』、ロッシーニの『泥棒かささぎ』など両方が使われている。

なお、タイトル音楽として使われている楽曲は、カーロスのオリジナルと誤解されることがあるが、原曲は、ヘンリー・パーセル作曲の『メアリー女王の葬送音楽』である(編曲に織り交ぜられたグレゴリオ聖歌「怒りの日」は同監督の『シャイニング』にも登場する)[3]

『雨に唄えば』が印象的な挿入歌として用いられているが、これはリハーサルの時にキューブリックがマルコム・マクダウェルに何か歌を歌えと指示したところ、マクダウェルが空で歌えるのがこの曲だけであったためだった[4]

使用された音楽は以下のとおり。

交響曲第9番ニ短調(作曲:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

泥棒かささぎ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲(作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ

威風堂々』第1番、第4番(作曲:エドワード・エルガー


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