映画
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映画の制作会社で作られた映画作品のフィルムは、映画の配給会社によって、元のフィルムから複製が多数制作され、各コピーの個体ごとの貸し出し計画が立てられた。複製されたフィルムの個体ひとつひとつは、映画館から映画館へと線的に移動してゆくことになっており、最初は都市部の大きな映画館に高額で貸され、そこでの上映期間が終わると、次第に低額で地方都市や小さな町の映画館へと貸し出されてゆくようなスケジュールが、他の映画作品の上映計画との兼ね合いや、各映画館で「穴」があかないようにすることや、各映画館での利益も考慮し緻密に組まれた。こうしたスケジュールの体系は「番線」と呼ばれた。現在でも劇場で公開する映画は映画の基本であり本流であるが、そうではない映画も増えてきたので、劇場で公開する映画をレトロニムで「劇場公開作品」「劇場公開映画」などと呼ぶことも行われている。

その後、各国で1940年代や1950年代になってテレビ放送が始まるようになり、テレビ所有者が増大する中で、すでに劇場公開が行われた映画作品を、後からテレビの電波に乗せるということも行われるようになった。この場合、ビジネスのしくみとしては、当該の映画作品の諸権利を有する映画会社とテレビ局の間で交渉・契約が行われ、テレビ局のほうから映画会社のほうに対して放送にまつわる対価(料金)が支払われることになる。やがて、数としては比較的少ないが、最初からテレビで放送することを目的に映画フィルムで撮影される映画作品が作られるようになった。このような作品は特に「テレビ映画」と分類する方法がある。テレビ会社が映画を制作すると、上述のようなお金の流れ(テレビ局→映画会社)は生じない。テレビ番組を充実させるためにテレビ局が行った策であり、1960年代のアメリカのテレビ番組の中では一種の「主力の番組」として内容としては西部劇や「ホームドラマ」の映画が多く製作された。[注 2]

1970年代後半?1980年代以降に、ベータマックスVHSなどといった規格の比較的安価な家庭用のビデオ装置が先進国の家庭から次第に普及してゆくと、やがてビデオ装置を所有している比較的裕福な家庭をターゲットに、数千円?1万円超という価格設定で映画作品がビデオテープの形でも販売されるようになった。これによって映画(制作)会社が収益を得る方法が増えた(映画館にフィルムを貸す、テレビ局から権利料を得る、以外の選択肢が生まれた)。こうしてビデオテープ化される映画作品の数が次第に増えてゆくと、そうしたビデオテープを貸すレンタルビデオ業者が登場したが、映画会社の収益化の方法が確立されていなかったために、映画作品の「著作権」「貸与権」、テープの使用、上映が認められる範囲の線引きに関連する裁判となり、その結果レンタル業者は、映画会社に対して「正当な対価」を支払うべきだ、といった趣旨の判決が下され、数度の裁判や映画会社とレンタル業者の協会との交渉を経て、やがて「レンタル専用」のテープは一般人向けに販売されるテープよりも あらかじめかなりの高額でレンタル業者に販売されることで映画会社の収益とするしくみや、あるいは映画会社は「貸与権」の一部をレンタル業者に分けるかわりに、レンタル業者はテープが実際にレンタルされた回数を映画会社に報告し、その回数と連動する形で増えてゆく料金をしっかりと支払う、という内容の契約を結ぶ、というしくみが定着していった。こうしてビデオレンタル、という業態が確立すると、最初から劇場公開をせず、ビデオテープとして販売されたりレンタルされる形で視聴されることを想定して撮影される映画、というものも登場するようになった。こうした映画は「ビデオ映画」(あるいは「オリジナルビデオ」など)と分類される。その後 映画作品は、DVDやブルーレイでも販売・レンタルされるようになり、さらに近年、ブロードバンドが一般家庭にも普及すると、テレビ放送以外にネット配信からも映画会社が相応の権利料を得るようになった。2010年代以降、Netflixが、最初からNetflixのコンテンツとして提供するために、オリジナル映画を多数製作し日本を含む世界各国で配信するようになった[注 3]

こうして観客に映画作品が届けられる経路が多様化するにしたがい、境界域が曖昧になり、どこで線引きするか、決定的な線というは一律に定めることは次第に難しくなってきている。たとえばアメリカでは以前から「テレビ映画」のジャンルが活発であるが、映画のアカデミー賞や「ゴールデングローブ賞映画部門」などの映画賞の対象となる作品は、応募資格を「映画館で上映される作品」、あるいは「ペイパービューで配信される作品」と限定し、「テレビ映画」は排除しているのだが、その一方で、アメリカのエミー賞やゴールデングローブ賞テレビ部門などのテレビ番組賞には、「テレビ映画」を対象とする賞が別枠で設けられる、という状況になっている。

2017年2月にはNetflixオリジナル作品『ホワイト・ヘルメット -シリアの民間防衛隊-』(アインシーデル監督)が第89回アカデミー賞において短編ドキュメンタリー賞を受賞。新型コロナウイルス感染症の影響で多くの映画館が閉鎖された第93回アカデミー賞においては受賞資格が緩和されるとともに、初上映が配信形式であった作品のノミネート、受賞が相次いだ[10]
フィルム式 / 磁気媒体式 / デジタル式

映画の歴史を踏まえると、もともとは映画というのは写真フィルムで撮影されるものである。

やがて、そうしたフィルムを磁気フィルムにとりこむ、ということも行われるようになったが、もともと劇場で大型スクリーンに投影することを前提としている映画の世界では、基本的に35mmフィルムでの撮影が標準でありつづけた。

1990年代あたりから、国ごとに状況が異なるようになってゆき、資金面で余裕のあるハリウッドメージャーの場合、映画(や大型テレビドラマ)は未だ35mmフィルム撮影の方が圧倒的に主流でありつづけ、日本などではむしろデジタル化が進む、という現象も起きた。一部の国で写真フィルムで撮影した素材を一旦デジタル化し、デジタル技術ならではの加工や編集を行う、という手法も用いられるようになった。

2000年代に入ってからは、最初から写真フィルムを用いず、HD24p等のデジタル機器で撮影・編集され、その後フィルムに変換されたうえで劇場に納品される、という映画も登場し、徐々に増えていった。音声情報も映画館の多チャンネルサラウンド化に伴い、フィルムに焼き付けずにCD-ROMなどで納品される場合が増えてきた。(日本国内の限定的な事情については日本映画のページにて詳述する。)

最近の映画館(シネマコンプレックス)で上映される映画作品のほとんどは、「配給」のしくみも変わってきており、(従来のような、フィルムという物体の形で複製物をつくって、物体として「配達」されるのではなく)最初からデジタルデータの形で各映画館にネットワーク回線で伝送(VPN(や専用回線)で伝送)され、それが、デジタルデータを直接的に映像として投影する装置によって、スクリーン上に投影されるようになっている。技術的にいえば、データセンター内に映画会社側のサーバがあり、各映画館は映画作品のデータをダウンロードし、映画会社のほうは「デジタル的な鍵」のやりとりをすることで、各映画館で各作品を上映を可能にしたり反対に不可能にするような操作・管理を行い、ビジネスを行っている[11]
フィクション / ドキュメンタリーあるいはフィクション / ノンフィクション
コンテンツによる映画作品の分類法のひとつとしては、「フィクション映画」 / 「ドキュメンタリー映画」 と分類する方法がある。また(文章を用いた芸術などと同様に)フィクション映画 / ノンフィクション映画 と分類する方法もある。
国籍別
映画作品については、国籍で分類する、国籍を一種のジャンルのように扱う、ということも行われている。たとえば、アメリカ映画 / フランス映画 / イタリア映画 / イギリス映画 / 日本映画 / 韓国映画 / 中国映画 / インド映画 / ブラジル映画 / アルゼンチン映画 といったようにである。「各国の映画」も参照
統計
映画制作数順

以下のデータは、特に明記されていない限りユネスコ統計研究所による、上映された長編映画(フィクション、アニメーション、ドキュメンタリー)の上位15か国のリストである[12]

順位国制作数年
1 インド1,8132018.[13]
2 ナイジェリア9972011
3 中国8742017
4 日本6892019[14]
5 アメリカ6602017
6 韓国3392016
7 フランス3002017
8 イギリス2852017
9 スペイン2412017
10 ドイツ2332017
11 アルゼンチン2202015
12 メキシコ1762017[15]
13 イタリア1732017
14 ブラジル1602017
15 トルコ1482017

興行収入順

順位国興行収入
(10億
US$)年興行収入における


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