昆虫類
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感覚「複眼と単眼」も参照

特別な感覚器官としては、触角が挙げられる。それ以外の各部に小さな受容器を持つ。

大部分の昆虫は頭部に1対の複眼と3個以下の単眼を持つ。両者を有する場合、片方だけの場合、ごく一部に両方とも持たない例がある。複眼は主要な視覚器として働き、よく発達したものでは優れた視覚を持つと考えられる。また、紫外線視覚する能力を持っている。すなわち解剖学的に、昆虫の目には紫外線を感知する細胞がある。ヒトの眼ではオスとメスの色の区別ができない昆虫(たとえば、モンシロチョウの翅の色)でも、実際にはオスとメスの翅で紫外線反射率に大きな差がある。そのため、モンシロチョウ自身の目には、ヒトの目と違って、オスとメスの翅は全く別の色であると認識できているものと推察される。また単眼は明暗のみを感知する。

化学物質の受容、つまり味覚嗅覚は触角、口器、および歩脚の先端部である附節にある。いくつかの昆虫は個体間の誘因などの役割を担うフェロモンを出すが、その受容は触角で行われる。

聴覚に特化した器官を持つ例は多くなく、コオロギセミなど一部に限られる。夜行性のガにはコウモリによる捕食を回避するため、コウモリの出す超音波を聴き取る鼓膜器官を持つものが多い[5]
認知能力・感受性

2010年代以降、虫が感情に似た脳機能を持っている可能性があることが科学論文で報告されることが増えている[6]

1990年から2020年の間に発表された科学文献のレビューでは、昆虫には認知能力や感性があるという証拠がみつかった[7]。2022年には、6つの昆虫目における感覚(特に痛み)の証拠を、検討した論文が発表された。研究によると、双翅目(ハエと蚊)とゴキブリ目(ゴキブリとシロアリ)の2つの目の成虫で、痛み体験の「強い証拠」が見つかった。また、ハチ目(ハチ、スズメバチ、アリ、ノコギリ)、バッタ目(コオロギ、バッタ)、チョウ目(チョウ、ガ)の成虫では「実質的証拠」があり、甲虫目の成虫では「ある程度の証拠」があった。幼虫の段階においても、いくつかの幼虫で、痛み体験の「実質的証拠」が見つかった。なお、いずれの昆虫目でも、感覚、特に痛覚の存在を否定する十分な証拠は見つからなかった[8]

また、解剖学的次元では、ミバエの幼虫が熱いものに触れると逃げること、その行動が脊椎動物の痛覚ニューロンに似たニューロンの媒介を経ることが研究で確かめられた[9]
発生詳細は「変態#昆虫の変態」を参照

多くは卵生だが、フタバカゲロウのような卵胎生ツェツェバエのような胎生昆虫もいる。

昆虫の場合、幼生幼虫と呼ばれる。成虫に似た姿のものも、かなりかけ離れた姿のものもあるが、基本的には幼虫も昆虫としての姿を備えており、その意味では直接発生的である。生育過程で、幼虫が成虫に変化する変態を行う。変態の形式により、幼虫がになってから成虫になる完全変態をするグループと、幼虫が直接成虫に変わる不完全変態を行うグループ、そして形態がほとんど変化しない無変態のグループに分けられる。成虫になるときに翅が発達するが、シミ目など翅の全くない種類も少なからずいる。
生態

昆虫の生態的な多様性は極めて広い。樹上や洞窟を含めた地上、土壌中、淡水中にごく普通に生息し、さらに一部の例外を除いて殆どの種が空を飛ぶことが出来る。分布は世界中にわたり、高山から低地までどこにでもおり、特に熱帯域での多様性が高い。

基本的に陸上で生活する生物で、水生昆虫でも成虫時に水中で生活する昆虫は少なく、成虫の多くは止水域で空気呼吸を行う。特にには極少数の種がいるだけで、それもウミユスリカなどの潮間帯に生息する種がほとんどで、外洋では海水面上で活動するウミアメンボ属の5種しか確認されておらず[10]、完全な海生昆虫は発見されていない。これは、海でのニッチが既に祖先である甲殻類によって占められていたため再進出できなかった、陸上に比べて魚類などの天敵が多く生存競争に勝てなかった、陸上や淡水での生活に特化したためマルピーギ管が海水の塩分調整に対応できなかった、海水中を漂う海藻の胞子などが気門に詰まるため呼吸できなかった、陸上に比べて海中には酸素が乏しく昆虫類の外骨格形成に不利である[11]など、様々な説がある。

石炭紀からペルム紀にかけて大気中の酸素濃度が高かった時期には体長数十cmに達する巨大な昆虫が生息していたが、現代では最小の哺乳類鳥類(1-2g)を超える体重を持つ昆虫は少数であり、小さいものは0.2mm、5μg以下と大型の原生動物(大型のゾウリムシなど)を下回る。

食性の上では、草食性肉食性雑食性など様々である。草食性では餌とする植物の種に特異性を持つ例も多く[12]、そのため植物の種ごとに決まった昆虫がある、という状況が見られる。寄生性のものもあり、シラミハジラミ、クモバエやコウモリバエ、カエルキンバエやラセンウジバエなどは脊椎動物に寄生する。他の昆虫に寄生する種では、捕食寄生という独特な寄生の型を持つ例も多い。

大半の種が変温動物であり、3以上の環境でないと成長が行われず、それ以下になると冬眠状態となる。成虫の場合、一般に-3℃以下、45℃以上の環境にさらされ続けると死滅するが、卵の状態では温度耐性(特に低温)の範囲が大きくなるため、このまま越冬する種も多い。例外として群集性のものには、ハナバチ類の一部が、0℃時に30℃以上の体温を安定して保てるなど、ほぼ完全な恒温性のものも存在する。セッケイカワゲラヒョウガユスリカのように、氷点下の気温でも活動できる種もあり、南極でも昆虫が生息している。

昆虫の一部は、植物受粉と深い関係がある。花粉の媒介方法としてはと動物がほとんどを占め、動物媒は虫媒のほかにコウモリによる媒介も含まれるが、動物媒の中で最も多いものは虫媒である[13]。虫媒のみに頼る、または一部を虫媒とする花は16万種に及ぶとされる[14]。動物媒の花は虫をに引き付けるために、風媒花と異なり美しい花や強い香り、豊かな蜜などを発達させたが、なかでも虫媒花は虫の強い嗅覚を利用するため、香りが強いものが多いことが特徴となっている[15]。(鳥は嗅覚が弱いため、鳥媒の花には香りは必要なく香りは弱いものとなっている)[16]。こうした虫の多くは花の蜜腺から分泌されるを食料とするほか、彼らの体につく花粉そのものも重要な食料としている[17]
生体

バッタイナゴハチなど多くの昆虫の血糖トレハロースであり、体内で分解酵素トレハラーゼの作用でブドウ糖(グルコース)に変わることによって利用される。また、スズメバチとその幼虫の栄養交換液の中にもある。

昆虫の血糖としてのトレハロース濃度は、400-3,000 mg/dL(10-80 mM)の範囲にある[18]。この値はヒトグルコースとしての通常の血糖値100-200 mg/dLに比べてはるかに高い。この理由の一つとして、トレハロースがタンパク質に対して糖化反応を起こさずグルコースに比べて生体に有害性をもたらさないためである[19][20]

外骨格は甲殻類と違い、形成時にカルシウム沈着を伴わない。これは海中に比べてカルシウムに乏しい陸上での生活に適応した結果であり、外骨格を軽くすることにも繋がったため、後に飛行能力を発達させる上で有利に働いたという説がある。[21]
分類詳細は「昆虫の分類」を参照

種類数の多いグループとしては、以下のようなものがある。(括弧内は2003年現在の日本産既知種数)

甲虫目(鞘翅目) - カブトムシゴミムシなどの仲間、35万種(10233種)

チョウ目(鱗翅目) - チョウの仲間、17万種(5337種)

ハエ目(双翅目) - ハエアブなどの仲間、15万種(5183種)

ハチ目(膜翅目) - ハチアリの仲間、11万種(4516種)


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