1984年(昭和59年)7月、TBSのトーク番組「すばらしき仲間」の撮影が行われ、澤村藤十郎、中村勘九郎、中村吉右衛門の3名が、金丸座を訪れた。彼らはこの芝居小屋に惚れ込み、「是非この舞台を踏みたい」と、宿泊先である、琴平グランドホテル社長の近兼孝休に相談。ちょうど、老舗旅館の相次ぐ廃業などで町の観光業に危機感を覚えていた近兼は、三人からの要望を聞き入れる形で、金丸座での芝居公演を計画し始めた。[1]。
しかし「金丸座」は重要文化財であり、文化庁との折衝は不可欠であった。また演劇公演に関するノウハウも全く無く、さらにはアクセスが困難である(当時は瀬戸大橋もまだ完成しておらず、東京から高松空港へはプロペラの飛行機だけ、鉄路では新幹線、在来線、宇高連絡船の乗り継ぎでやっと到着できるような場所であった)など、集客面でも不安を抱えていた。
それでも、関係者の努力と熱意が松竹の全面バックアップを取り付け、JTBの協力要請も得られるなど、ついに第一回『四国こんぴら歌舞伎大芝居』の開催が実現した。[2]。旧金毘羅大芝居(建物前風景)
年1回、春の定期公演「四国こんぴら歌舞伎大芝居」として歌舞伎が公演される。公演の際、演出に使用される廻り舞台、花道七三のスッポン、光を取る2階の高窓の開閉など、その動作はすべて人力で行う。(#舞台装置の項を参照。)
金刀比羅宮成功祈願祭として役者の面々が金刀比羅宮へ成功祈願の参拝と「お練り」行列(役者が人力車に乗り琴平町内を回る)を行い、初日から千穐楽に至るまでの公演では地元住民のボランティアも運営に力を沿え地域一体で取り組んで開催されている。
公演がない一般の開館日には、舞台や花道、客席(桝席や二階席)などにとどまらず、楽屋(女形部屋、大部屋、楽屋番控など)、舞台下の奈落、から井戸、花道七三のスッポン、果ては楽屋風呂まで、至る所を見学することが出来るようになっている。
2006年には、「旧金毘羅大芝居とシェイクスピア」と題して一般公募の参加者により「じゃじゃ馬ならし」が公演された。(第48回香川県芸術祭「香川芸術フェスティバル2006」主催)
「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の公演記録
第一回:1985年:五回公演
演目:『再桜遇清水』、『俄獅子』出演者:二代目中村吉右衛門、九代目澤村宗十郎、二代目澤村藤十郎など。
第二回:1986年:六回公演
演目:『極付幡随院長兵衛』、『闇梅百物語』出演者:二代目中村吉右衛門、二代目澤村藤十郎、五代目中村勘九郎など。
第三回:1987年:十四回公演
演目:『河内山』、『釣女』、『沼津』出演者:十七代目中村勘三郎、九代目松本幸四郎、二代目澤村藤十郎など。
第四回:1988年:二十回公演
演目:『梶原平三誉石切』、『於染久松色読販』、『俊寛』出演者:五代目中村富十郎、二代目澤村藤十郎、五代目中村時蔵など。
第五回:1989年:二十回公演
演目:『傾城反魂香』、『春興鏡獅子』、『傾城阿波の鳴戸』、『勧進帳』出演者:二代目中村扇雀、十二代目市川團十郎など。
第六回:1990年:二十二回公演
演目:『連獅子』、『与話情浮名横櫛』、『茶壺』、『弁天娘女男白浪』出演者:七代目尾上菊五郎、三代目河原崎権十郎、九代目坂東三津五郎など。
(記念公演):1990年:六回公演 - 町制百周年記念として近松座公演
演目:『堀川波鼓』、『由縁の月』出演者:二代目中村扇雀、五代目中村富十郎など。
第七回:1991年:二十六回公演
演目:『双蝶々曲輪日記』、『身替座禅』、『松浦の太鼓』、『吉野山』出演者:片岡孝夫、四代目市川左團次、五代目中村勘九郎など。
第八回:1992年:二十八回公演
演目:『恋女房染分手綱』、『京人形』、『仮名手本忠臣蔵』、『太刀盗人』出演者:九代目松本幸四郎、五代目中村時蔵、七代目市川染五郎など。
第九回:1993年:三十回公演
演目:『夏祭浪花鑑』、『うかれ坊主』、『汐汲』、『魚屋宗五郎』出演者:五代目中村富十郎、二代目澤村藤十郎、五代目中村勘九郎、三代目中村橋之助など。
第十回:1994年:三十四回公演
演目:『葛の葉』、『男女道成寺』、『花上野誉碑』、『戻橋』出演者:七代目中村芝翫、四代目市川左團次、二代目澤村藤十郎など。
第十一回:1995年:三十六回公演
演目:『鳥辺山心中』、『廓文章』、『与話情浮名横櫛』、『屋敷娘』出演者:四代目中村梅玉、五代目片岡我當、二代目澤村藤十郎、五代目中村松江など。
第十二回:1996年:三十六回公演
演目:『外郎売』、『義経千本桜』、『熊谷陣屋』出演者:七代目尾上菊五郎、十二代目市川團十郎、二代目澤村藤十郎。
第十三回:1997年:三十六回公演
演目:『番町皿屋敷』、『身替座禅』、『実録先代萩』、『太刀盗人』出演者:七代目中村芝翫、五代目中村富十郎、四代目中村梅玉、五代目片岡我當など。
第十四回:1998年:三十六回公演
演目:『源太勘當』、『三人吉三巴白浪』、『傾城反魂香』、『闇梅百物語』出演者:九代目坂東三津五郎、二代目澤村藤十郎、二代目尾上辰之助、五代目尾上菊之助など。
第十五回:1999年:三十六回公演
演目:『中将姫古跡の松』、『真景累ケ淵』、『供奴』、『新版色読販』、『色彩間苅豆』出演者:七代目中村芝翫、二代目澤村宗十郎、三代目中村橋之助など。
(記念公演):1999年:十四回公演 - 第15周年記念歌舞伎舞踊公演
演目:『雨の五郎』、『忍夜恋曲者』、『道行旅路の花聟』、『巴御前』出演者:二代目中村吉右衛門、四代目中村梅玉、五代目中村松江など。
第十六回:2000年:三十回公演
演目:『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』、『近江のお兼』出演者:七代目尾上菊五郎、六代目澤村田之助、七代目中村芝雀、九代目市川團蔵など。
第十七回:2001年:三十二回公演 -菊池寛賞受賞記念
演目:『新版歌祭文』、『藤娘』、『戻駕色相肩』、『神霊矢口渡』、『二人道成寺』出演者:四代目中村雀右衛門、四代目市川左團次、五代目中村時蔵、七代目中村芝雀など。
第十八回:2002年:三十二回公演
演目:『御存鈴ケ森』、『与話情浮名横櫛』、『義経千本桜』、『双面水照月』出演者:片岡孝夫、五代目中村時蔵、二代目坂東吉弥