旧国名
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また、山梨県甲斐国)や富山県越中国)、滋賀県近江国)、奈良県大和国)、徳島県阿波国)、愛媛県伊予国)、高知県土佐国)、熊本県肥後国)のように県と国の範囲が一致するところでは、旧国名が県の別称として用いられる[注 1]。旧国名は歴史と伝統のイメージを備えているので、観光宣伝や郷土愛を喚起する場面で用いられることがある。
地名に旧国名が使用される事例
北海道の振興局名に取った旧国名

北海道の振興局(2010年4月1日に支庁より再編)では、根室振興局釧路総合振興局十勝総合振興局石狩振興局日高振興局胆振総合振興局後志総合振興局渡島総合振興局が旧国名に由来する名称である。このうち日高振興局は範囲が日高国と一致する。なお、北海道条例においては振興局の所管区域指定に旧国名が用いられているものもある。例えば上川郡中川郡は複数の振興局に所在し、特に天塩国上川郡と石狩国上川郡は同じ上川総合振興局に所属する(しかも隣り合っている)ため、現在でも旧国名を用いて区別することがある[2]
市町村名に冠した旧国名 (重複の回避)

明治時代に市町村を統合した時には、同じ郡の中に同じ名の町村がある場合には重複しないように改名させたが、違う郡ならそのままにした(例:群馬県東村)。市は、数が少ない事もあって、全国で同じ市名が生まれないようにさせた[注 2]。この原則は、市の数が増えた後代にも引き継がれた。

そして、その手法としてよく用いられるのが、旧国名を冠して重複を回避する手法である。この際、後から市制を敷いた方が旧国名を冠する事が多い。この例には、群馬県太田市に対して茨城県常陸太田市山形県村山市に対して東京都武蔵村山市新潟県加茂市に対して岐阜県美濃加茂市千葉県旭市に対して愛知県尾張旭市福岡県の旧八幡市(現在は北九州市の一部)に対して滋賀県の近江八幡市、長野県の長野市に対して大阪府河内長野市福島県郡山市に対して奈良県の大和郡山市、静岡県の旧清水市(現在は静岡市清水区の一部)に対して高知県の土佐清水市福井県大野市に対して大分県豊後大野市がある[注 3]。新潟県の旧高田市(現在は上越市の一部)に対しては岩手県陸前高田市、奈良県の大和高田市広島県安芸高田市、大分県の豊後高田市の4市があり[注 4]、このうち、安芸高田市は高田市が消滅した後に市制を施行した。同様の事例には埼玉県の旧大宮市(現在はさいたま市の一部)が消滅[注 5]した後に市制を施行した茨城県常陸大宮市がある。また、特殊な例としては鹿児島県川内市宮城県仙台市と同音の「せんだい」であったことから合併に際して旧国名を冠し薩摩川内市となった事例がある(周辺自治体が編入合併のイメージを嫌ったことも理由)。

和泉国(大阪府南西部)では、和泉国が「泉州」と呼ばれる事や「和」を除いても同音である事から「泉」の一字を冠している(例:滋賀県の大津市に対して泉大津市栃木県佐野市に対して泉佐野市)。

茨城県ひたちなか市勝田市那珂湊市の合併に際して重複回避に準じた命名法則を取っているが、那珂市の成立はひたちなか市の成立よりも後である。また、兵庫県の篠山市は他に同名の市が存在しないにもかかわらず丹波篠山市に改名している。
市町村名に用いられた旧国名(その他)

重複回避以外にも旧国名を用いる場合があり、この場合、旧国名の一字を取ったものが多く、旧国名の方が冠する側になったものもある。

その目的は数種に分類され、旧国内における方位を示すもの(例:東近江市南丹市泉南市南あわじ市雲南市阿南市西予市日南市南さつま市)が最も多く[注 6]、国府を表すもの(例:甲府市防府市)、地形を表すもの(例:武蔵野市相模原市紀の川市筑紫野市)、その他(例:上越市、城陽市京丹後市)などがある。

上越市の「上」は「上方」(関西の旧称)の「上」と同じく京都に近い方位を意味し、この場合は「南西」にあたる。城陽市の「陽」は「南」とほぼ同義であるが、方位以外の意味も籠められており特徴がある。京丹後市は、合併6町の中に旧「丹後町」があり、他5町への配慮から重複がないにもかかわらず京都府の「京」を冠している。京丹波町も同じような理由。

他に、2つの国の一字を合わせたものとして常総市(全域下総国)や南房総市(全域安房国)などの例もある[注 7]。なお、上越市の「上越」は前述の通り「越後国の上方寄り」を意味しており、「上野国と越後国」を意味する「上越」(例:上越新幹線)とは意味合いが異なる。

旧国名の一字を取る場合、一般に別称である「○州」の一字を取るが、例外に伊豆国(豆州)の伊東市周防国(防州)の周南市がある。

仮名表記のかほく市河北郡が由来とされるが、「加北」とも取れる。実際同市は加賀国の北端に位置する。
市町村名に取った旧国名

市町村の中には、属する国の名をそのまま名乗るものがある。明治時代以前の日本には、国の中に国と同じ名を持つ郡はあっても、同じ名を持つ町や村は存在しなかったので、そのほとんどは近代以降に作られた新地名ということになる。

旧国名を名乗る条件は特にないが、当該市町村の中にかつて国府や一宮が存在したことや、国名と同名の郡であることなどが暗黙のうちに条件とされる傾向がある。しかし、これらの条件を何ら満たさない事例も多数あり、特に平成の大合併期には、その名称決定に論争が起きた事例も少なくなかった。その際、命名を正当化する理由としてよく挙げられるのが「妥協案が他にない」というものであり、命名時に特定の市町村を優遇しないための妥協的名称としての側面も持っていると言える。

釧路市出雲市北見市備前市長門市美濃市伊勢市筑後市豊前市日向市和泉市根室市土佐市加賀市摂津市石狩市播磨町が古い例で[注 8]、平成年間(20世紀末)からさらに増加し、伊豆市伊豆の国市甲斐市下野市飛騨市越前市伊賀市志摩市丹波市淡路市美作市阿波市若狭町が加わった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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