日琉語族
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日琉祖語の母音体系には*i, *u, *e, *?, *o, *aを再建する6母音説が有力である[17][18]上代特殊仮名遣におけるo2(オ段乙類)は*?に遡る。上代日本語琉球祖語上代東国方言などとの比較から、日琉祖語の*eと*oのうちの一部は、上代日本語(中央語)でそれぞれi1とuへ合流したとみられる[19][18][17]。また上代日本語にはアマ/アメ乙(雨)、ウハ/ウヘ乙(上)のようなaとe2(エ段乙類)の母音交替が多数あり、e2の由来として*aiが再建されている。同様にi2(イ段乙類)の由来として*?i、*oi、*uiといった二重母音も再建されている[9][18]

日琉祖語の子音には、*p, *t, *k, *m, *n, *s, *r, *w, *jが再建されている[20]。日本語の濁音は、鼻音+阻害音の子音連続に由来すると考えられている[20][9]
起源・原郷Whitman2011で主張される、日琉語族と朝鮮語族の話者の移動「日本語の起源」も参照

五十嵐陽介は上記のように日琉語族の下位系統に拡大東日本語派と南日本語派を提案しており、この分岐の仕方から日琉語族の原郷 (homeland)は愛知県・岐阜県から九州北部までのどこかだったとみている[21]

一方、日琉語族が日本列島で話されるようになるより前の段階については、日琉語族の話者(弥生人)が紀元前700年?300年頃に朝鮮半島から日本列島に移住し、最終的に列島先住言語(縄文語)に取って代わったとする説が広く受け入れられている[22][23]

朝鮮半島における日琉語族話者の集団は無文土器文化の担い手であったという説が複数の学者から提唱されている[24][25][26][27][28]。これらの説によれば、古代満州南部から朝鮮半島北部にかけての地域で確立された朝鮮語族に属する言語集団が北方から南方へ拡大し、当時朝鮮半島中部から南部に存在していた日琉語族の集団に置き換わっていったとしている。この過程で南方へ追いやられる形となった日琉語族話者の集団が弥生人の祖であるとされる。

この朝鮮語族話者の拡大及び日琉語族話者の置き換えが起きた時期については諸説ある。ジョン・ホイットマン宮本一夫らは山東半島から朝鮮半島南部に移住した日琉語族話者が無文土器時代の末まで存続し、琵琶形銅剣の使用に代表される朝鮮半島青銅器時代に朝鮮語話者に置き換わったとしている[27][29]

一方でアレキサンダー・ボビンは朝鮮半島の三国時代において高句麗から朝鮮語族話者が南下し、百済新羅加耶などの国家を設立するまで朝鮮半島南部では日琉語族話者が存在していたとする[25]。また、別の発表では、日琉語族とオーストロアジア語族またはタイ・カダイ語族の間に接触の痕跡があることから、日琉語族の(朝鮮半島よりさらに過去の)故地は中国南部であり、“Altaic”ではないと主張している[30][23]

ユハ・ヤンフネンは、言語の伝播と人の移動は必ずしも一致しないと断った上で、日琉祖語はまずシナ・チベット語族の影響を受けたとし、その場所は中国から朝鮮半島へのルートを考慮すると、可能性として挙げられるのは山東半島長江デルタではないかとした。そして朝鮮半島に移動した後で「アルタイ化」され、その後日本列島に入ったとした。そして日本列島で多少の「縄文語化」を受けたとした。また朝鮮半島に残った日本語(パラ日本語)話者の代表例として百済の言語を挙げた[31]

マーティン・ロベーツは、前6?5千年紀以降に山東半島大?口文化などと交流のあった遼東半島後窪遺跡の文化が日琉祖語ではないかとしており、この交流を通じて大?口文化からオーストロネシア語族の影響があったのではないかとした[32]。さらに前3300年頃に水稲稲作が朝鮮半島に伝わり、無文土器文化が成立した。朝鮮半島東南部では水稲稲作の普及が進まず、この文化が前3千年紀に九州に伝わって弥生文化が成立し、日本列島に日琉語族が広まったとした[33][32]。ただしロベーツらのトランス・ユーラシア語族へはいくつかの批判がある[34][35]
大陸倭語詳細は「大陸倭語」を参照

三国史記』に記された地名とその意味から、古代には日琉語族と系統的に関連する言語が朝鮮半島でも話されていたという説がある[27][36]
分岐とそれ以降「日琉祖語#日琉の分岐」、「琉球祖語#分岐年代」、「日本語の方言#歴史」、「日本語#歴史」、および「琉球語#歴史」を参照
脚注[脚注の使い方]^ Pellard 2020, p. 9, Pellard 2024, §2
^ 中本 1976.
^ Thorpe 1983.
^ Vovin 2017, §2.
^ 五十嵐 2021, pp. 20?21.
^ Pellard 2024.
^ Celik & 木部 2019, pp. 5?8.
^ a b Pellard 2016, §1.1.


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