日本語の起源・系統関係を分析するにあたって、様々なアプローチがある。
言語学の諸分野によるもの
日本語学・国語学「日本語学#歴史」も参照
日本語の起源に関する議論は、新井白石『東雅』や本居宣長・本居春庭らの研究を嚆矢とする。それ以前にも言語学的な研究は行なわれていたが[注 3]、意識的に日本語の総体を歴史的に分析していこうとしたのは、国学者による言語研究であった[10]。以来、今日に至る「国語学」も、江戸以来の膨大な研究蓄積を基礎にしている。明治期に西欧の比較言語学が輸入されてからは、相互に批判・対立もあったが、近年は双方の方法を折衷しながら、いまだ決着の着かない「日本語の由来」についての研究が進んでいる。 日本語の起源を解明するための方法の一つとして、比較言語学が用いられる。比較言語学は歴史言語学のうち印欧語族の起源を明らかにするなかで発展してきたものである。主な手法は、「祖語」を仮説的に想定し、それに沿って言語変化の規則を比較・対照することによって言語間の系統関係を導き出すという方法である。文献資料のないオーストロネシア語族に適用しても数多くの業績が出ているので、8世紀頃までのものしか文献資料が見つかっていない日本語にも、ある程度は適用可能とされてきた。しかし、例えば比較言語学者高津春繁も、セム・ハム語族の研究においてすら、印欧語族の比較方法をそのまま用いることは無理であるとしている[11]。 しかしながら印欧語族の系統樹と東アジア諸言語の系統樹とは当然異なるものであり、近年は比較言語学の通時主義を包摂する形で地理的背景にも配慮する言語類型論などの観点からも研究が行なわれている[1]。 比較言語学と連携して進められた比較神話学の方法も大林太良や吉田敦彦らによって進められてきた。比較神話学は基本的には神話や説話の構造や特性を比較分析するものであるが、要素の単位をどこまで限定できるかという問題がある。構造神話学者クロード・レヴィ=ストロースは言語学の音素概念に影響された「神話素 より新しい時代に起源を求める場合には、考古学的遺物・遺構や習俗の類似も日本語の起源の傍証となる場合がある。大野晋などの主張によれば、言語と文化は一致するものではないにせよ、完全に無関係のものとして分けきれないものである。 日本語の担い手である日本人の人類学的ルーツを探ることで、日本語の起源を探ろうとするアプローチである。この分野は学術的な調査が進行している状況であり、学会の統一された見解は存在しない。このアプローチによる主張は、言語学的手法に沿ってなされているわけではなく、遺伝子における共通性から文化や言語などにおいて類似性も見られるグループは存在している可能性があるのではないか、という事を示唆するものである。「父系言語仮説」も参照 一般に、父系のみで遺伝するY染色体のハプログループと、言語の系統関係(どの語族に属すか)との間に一定の相関があることから、Y染色体ハプログループを手掛かりに同系の言語を探ることができる。日本語の場合は多数派であるO-M176, D-M55, O-M122などを手掛かりにすることになる。 以下、これまでに言語学的見地から唱えられた主要な説について解説する。 アルタイ語族説は最小でモンゴル語族・テュルク語族・ツングース語族の3語族[注 4]を同族とする仮説だが、ここに日本語も含まれるとする拡大仮説。アルタイ語族説を主張する学者は他の語族説を主張する学者より多く、ラムステッドやポリワーノフ、 ポッペなどがいる。この説の基礎理論的な課題は、ツングース語族、朝鮮語(古代朝鮮語)の内的再構がどの程度まで可能かである。カール・ハインリック・メンゲス アルタイ語族に属するとする説は、明治時代末から特に注目されてきた[13]。その根拠として、古代の日本語(大和言葉)において語頭にr音が立たないこと、一種の母音調和[14]がみられることなどが挙げられる[15]。
比較言語学
言語類型論
その他の関連分野によるもの
比較神話学
考古学・民俗学
分子人類学詳細は「日本人#分子人類学による解析」を参照
これまでに唱えられた日本語系統論の主要な学説
アルタイ語族説「アルタイ諸語」も参照