日本語の起源
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ボビン (1998, 2014) は日本祖語がオーストロネシア語族やタイ・カダイ語族とも接触したと推定している[36][37]。日本祖語はオーストロアジア語族の特徴である単音節、SVOの語順、そして孤立語という特徴を備えていた可能性がある[37]。また、アイヌ語(族)がオーストロアジア語族に、深層で接続するのではないかという仮説がある[38][39][40]。ゲルハルト・イェーガー(ドイツ語版)(2015) は、古い時代の言葉を再構築する語源学的方法によらず、グリーンバーグの提案した計算言語学的方法、すなわち、大量の語彙同士を比較する統計的かつ自動的な方法論により、当該仮説に肯定的な結果を得た[40]。ユーラシア全体の言語を分類する目的で上記方法論を用いた場合、オーストロアジア語族とアイヌ語と日琉語族は同一のスーパークレードに分類される可能性がある。しかし、この説を主張する学者はボビンとイェーガーだけで多数の学者からは認められていない[40]
オーストロ・タイ語族説

タイ・カダイ語族オーストロネシア語族を含む仮説段階の語族オーストロ・タイ語族)に、日本語(日琉語族)が含まれるという説。しかし、オーストロ・タイ語族説は広く受けられてる説ではない。オーストロ・タイ語族との少数の類似性は偶然の一致だと考えられている[41]

GlossProto-Japonic(日琉語族)proto-Japonic
accentProto-Tai(タイ・カダイ語族)Tone in proto-Tai
Leaf*paH*?baiA1
Side*piaH*?bai? ?< OC *b?a?C1
Top*poH*?bo?A1
Aunt*-pa in *wo-n-paH*paa 'elder sister of a parent'C1
Wife, woman*miaL*mia 'wife'A2
Water*naL*r-namC2
Fire*poyL*vVyA2
Tooth*paL*van
secondary voicing in Tai
branchA2
Long*nan-ka
(space & time)L-L*naan
(time)A2
Edge*pa, cf. also *pasiH, HH*fa?
'shore, bank'B1
Insert*pak- 'wear shoes, trousers'H*pakD1S
Mountain*wo 'peak'L*buoA2, A1 in NT
Split*sak-H*?aak 'be separated'D1L, ?- in NT
Suck*sup-H*?u[u]p onomatopoetic?D1S/L, ?- in NT
Get soaked*sim-H*?im 'dip into' ?< Chin.B1, C1, ?- in NT
Slander*s?/o-sir- cf. nono-sir-H/L?, but
philology
indicates H*s?? 'slander, indicate'A1
Cold*sam-pu- cf. sam-as- 'cool it',
same- 'get cool'LNT *?am > ?amC2
Door*toHproto-Tai *tu,
but proto-Kam-Sui *to,
pace Thurgood's *tu (1988:211)A1
Wing*pa > Old Japanese pa 'wing, feather'Hproto-Kam-Sui *pwaC1
Inside*naka < *na-ka 'inside-place'LHproto-Tai *?d-naiSW, Sukhothai A2,
CT, NT A1


Proto-Tai items are taken from Li, Fang Kuei 1977. A Handbook of Comparative Tai. Honolulu: University of Hawaii Press.

Li Fang-Kuei i is equivalent to ?.

NT = Northern Tai, CT = Central Tai, SW = Southwestern Tai.

アルタイ・オーストロネシア語混合説

母音の音韻体系はオーストロネシア語族と日本語に少数の類似性が見られる理由からアルタイ・オーストロネシア語混合説を提唱した学者もいる。しかし、近年の研究ではオーストロネシア系言語は古くは閉音節だったとされ、また語彙の類似性についても偶然の一致の範囲を出るものとは言い難い。それで、アルタイ・オーストロネシア語混合説も多数の学者からは認められていない[5][6]ポリワーノフは、特に日本語のアクセント史に関する研究[注 5]を基に、日本語がオーストロネシア諸語とアルタイ系言語との混合言語であるという説を初めて提唱した。例えば、「朝」のアクセントは京都方言では a_(低)sa^(高低) という形をしているが、後半の特徴的なピッチの下降は、朝鮮語の「朝」 achΛm との比較から語末鼻音 m の痕跡と解釈される事、また「朝顔」(asagawo) のような合成語に見られる連濁現象(k からg への有声音化)も asam+kawo > asaNkawo > asagawo のような過程から生じた語末鼻音の痕跡であるとし、日本語の古形が子音終わりを許すものであったと主張した。更にポリワーノフは、日本語のピッチアクセントを、アルタイ系言語における位置固定のストレスアクセントとは根本的に異なるものと考え、その起源をフィリピン諸語に求めた。

マルティン・ロベーツ (2017) は、日本語族は紀元前6千年紀の遼西興隆窪文化原郷とする「トランスユーラシア語族」(モンゴル語族チュルク語族ツングース語族日本語族朝鮮語族から成る語族)に起源を持ち雑穀栽培を行う集団であったが、「日本・朝鮮語派」に分岐して遼東半島に至った後、紀元前2-3千年紀に稲作を行うオーストロネシア祖語の姉妹語と接触することで主に農業関連の語彙を大量に借用し、その後朝鮮半島を南下し紀元前1千年紀に日本列島に入ったとしている[20]
「古極東語」および周辺言語混合説

計量言語学者の安本美典 (1978, 1991) は、アイヌ語朝鮮基層語と祖先を同一にする「古極東語」を日本語の基層言語と想定したうえで、その後インドネシア系言語カンボジア系言語ビルマ系言語など複数系統の言語が順次、日本列島に流入・混合して日本語が成立したとする「流入混合説」を唱えている[42][43]
その他

厳密な実証科学によらないほかの仮説としては以下のものがある。

日本語
エジプト起源説

明治時代の木村鷹太郎によって唱えられ、日本語はラテン語ギリシャ語などと同系であるという。


日本語ヘブライ語同系論

日ユ同祖論者によって、昭和の初期ごろ。


レプチャ語との関連説

医師の安田徳太郎による。


ラテン語と日本語の語源的関係

近年与謝野達によって唱えられた日本語の語源を古代ラテン語に求める説[44]


縄文語起源説

縄文人の言語に影響を受けているという説。小泉保縄文語の発見)による。


脚注[脚注の使い方]
注釈^ 琉球の言葉を方言として日本語に含む場合は日本語は孤立した言語、琉球語を別言語とし、日本語とともに日琉語族を成すとする立場では、日琉語族は、一般的な語族のうちの一つに過ぎない。いずれの場合も、他の言語(語族)との系統関係は明らかではない[1]
^ 日本語と琉球語で日琉語族とする説と、琉球語を日本語の琉球方言とする説とは、日本語の起源論においては「言葉の定義の異同の問題」であり、本質的な争点とはならない。
^ 例えば「漢語との言語接触による漢文訓読と辞書編纂」「学僧による悉曇学の受容」「古典解釈を目的とした歌学における展開」などが大きな意味を持っていた[9]
^ 仮説が成り立つ場合、それぞれの語族は下位分類である語派となる
^ 1917年から1924年にかけての一連の論文において、西日本、特に土佐方言及び京都方言のアクセントが古形を保存していることを明らかにした。


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