日本語の起源
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アンガー (2009) とボビン (2013) は、韓系諸語日琉語族であり、4世紀に朝鮮語族の扶余諸語に取って代わられたとしている[28][29]

彼らは、地名研究によって抽出された日本語に類似する単語が朝鮮半島南部に特に多いことを指摘し、これらの地名が高句麗語を反映したものではなく、朝鮮半島中部および南部における先高句麗の集団を反映したものであるとの仮説を唱えた。朝鮮半島南部の新羅の歴史的故地に日本語に類似する地名が多く見られることについて[30]、研究者たちは日本語系の言語が朝鮮半島、恐らくは、その内の伽耶において話され、新羅語基層言語となっている、との理論を提案した。アンガーは、弥生人の祖先は朝鮮半島中部ないしは南部から日本列島へ移住したのではないかと考えている。一方で、朝鮮語系の地名は、満州から朝鮮半島南部までの朝鮮三国全域に広がっている。
オーストロネシア語族説

オーストロネシア語族日本祖語を形成した言語のひとつだったとする説。しかし、オーストロネシア語族とは一致している基礎語彙が非常に少なく、文法的な類似性も少ない。子音終わりの単語を持たない開音節であるなど母音の音韻体系の類似性が少し見えるため、オーストロネシア語族説が提唱されるようになったが、この説にまだ根拠は少なく広く受けられている説ではない[31]。また、近年の研究ではオーストロネシア系言語は古くは子音終わりの単語を持つ閉音節だったとされ、日本語との語彙の類似性についても偶然の一致の範囲を出るものとは言い難い[5][6]
アイヌ語同系説

片山龍峯 (2004) は、日本語とアイヌ語の語彙には共通の語根があるとし、日本語の活用形の起源もアイヌ語で説明できるとした[32]。また、民族学者の梅原猛などは日本語の基層にアイヌ語の存在を想定している。
ドラヴィダ語族・タミル語説

日本語とドラヴィダ語族との関係を主張する説もあり、とりわけ大野晋による、ドラヴィダ語族のひとつのタミル語との対応関係研究があるが、批判も多く、学説としては定着していない。ドラヴィダ語族との対応関係については、文法構造が膠着語であること、そして語彙の対応があることを芝烝や藤原明、江実らが提起した[33]

大野晋はインド南方やスリランカで用いられているタミル語と日本語との基礎語彙を比較し、日本語が語彙・文法などの点でタミル語と共通点をもつとの説を唱えるが[34]、比較言語学の方法上の問題から批判が多い(「クレオールタミル語説への批判」を参照)。後に大野は批判をうけ、系統論を放棄し、日本語はクレオールタミル語であるとする説を唱えた。

日本語とタミル語の共通項は@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}多岐にわたっており、天文、人事、生活、社会、自然、祭事などあまねく対応する。ただし、魚の名や植物名の対応は非常に少ない。[要出典]
中国語同系説

飯野睦毅 (1996) は中国語上古音の語末尾に母音を付加することで、日本語語彙が成り立つとした。例えば「考える(かんがふ)」は「勘合 [k?m ??p]」、「拐(かどわ)かす」は「拐 (guad)・惑 (?u?k)」、「怪(あや)しむ」は「妖 (i?u)・審 (?im)」が訛ったものであるとした。この際、漢語が日本語の動詞になる時、語尾が「p」の語は「ハ行」活用、「m」の語は「マ行」活用になったとし、日本語の動詞の活用に各行の別があるのはここに由来するとしている。しかし、これは単純に少数の単語が偶然の一致するという意見が多く、文法的に違う点が多い中国語起源説は多くの学者から認められていない[35]

日本語のなかの中国語からの借用語漢字平安時代の訓読み/ローマ字上古音現代音(ピンイン)広東語平安時代の?音/ローマ字平安時代の漢音/ローマ字備考
銭ぜに/zenitsianqian2chin4セン/sen、ゼン/zenセン/sen@「ぜ/ゼ→セ」は中古漢語の音系が濁音清化の証拠。A中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。
睦むつ/mutu、む/mumiumu4muk6モク/mokuボク/boku
峽かひ/kafi?eapxia2haap6ゲフ/gefuカフ/kafu@ハ行の子音は、上代には[p*]と発音。A中国語の韻尾/-p/含む漢字、日本語読みは語尾のハ行の子音を添える。
注つ-ぐ/tu-gut?iozhu4jyu3ス/suシュ/shyu@「つ→ス/シュ」は古漢語の端母が知母へ移行したの証拠。
牧まき/makimi?kmu4muk6モク/mokuボク/boku
殿との/tono、どむ/domuty?ndian4din6デン/denテン/ten@中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。
国(語源: 郡)くに/kuni(こほり/kofori)(giu?n)(jun4)(gwan6)(グン/gun)(クン/kun)
止と/to、とむ/tomu、t?i?zhi3ji2シ/shiシ/shi
馬むま/muma、んま/nmaxanma3ma5メ/meバ/ba、マ/ma
梅むめ/mume、んめ/nmem?mei2mui4マイ/mai、メ/meバイ/bai
麦むぎ/mugime?kmai4mak6ミャク/myakuバク/baku
我あ/a、あが/aga、われ/ware、わが/waga?aiwo3ngo2ガ/gaガ/ga@中国語の疑母/?/含む漢字、音読みはガ行の子音で表す。A中国語の疑母[ng-]は朝鮮漢字音や現代中国語の漢字音では規則的に脱落する。
吾同上?eawu2ng4グ/guゴ/go同上@A。

オーストロアジア語族説

日本語、特に弥生人の話した言語はオーストロアジア語族の言語であったとする説もある。ボビン (1998, 2014) は日本祖語がオーストロネシア語族やタイ・カダイ語族とも接触したと推定している[36][37]。日本祖語はオーストロアジア語族の特徴である単音節、SVOの語順、そして孤立語という特徴を備えていた可能性がある[37]。また、アイヌ語(族)がオーストロアジア語族に、深層で接続するのではないかという仮説がある[38][39][40]。ゲルハルト・イェーガー(ドイツ語版)(2015) は、古い時代の言葉を再構築する語源学的方法によらず、グリーンバーグの提案した計算言語学的方法、すなわち、大量の語彙同士を比較する統計的かつ自動的な方法論により、当該仮説に肯定的な結果を得た[40]。ユーラシア全体の言語を分類する目的で上記方法論を用いた場合、オーストロアジア語族とアイヌ語と日琉語族は同一のスーパークレードに分類される可能性がある。しかし、この説を主張する学者はボビンとイェーガーだけで多数の学者からは認められていない[40]
オーストロ・タイ語族説

タイ・カダイ語族オーストロネシア語族を含む仮説段階の語族オーストロ・タイ語族)に、日本語(日琉語族)が含まれるという説。しかし、オーストロ・タイ語族説は広く受けられてる説ではない。オーストロ・タイ語族との少数の類似性は偶然の一致だと考えられている[41]

GlossProto-Japonic(日琉語族)proto-Japonic
accentProto-Tai(タイ・カダイ語族)Tone in proto-Tai
Leaf*paH*?baiA1
Side*piaH*?bai? ?< OC *b?a?C1
Top*poH*?bo?A1
Aunt*-pa in *wo-n-paH*paa 'elder sister of a parent'C1
Wife, woman*miaL*mia 'wife'A2
Water*naL*r-namC2
Fire*poyL*vVyA2
Tooth*paL*van
secondary voicing in Tai
branchA2
Long*nan-ka
(space & time)L-L*naan
(time)A2
Edge*pa, cf. also *pasiH, HH*fa?
'shore, bank'B1
Insert*pak- 'wear shoes, trousers'H*pakD1S
Mountain*wo 'peak'L*buoA2, A1 in NT
Split*sak-H*?aak 'be separated'D1L, ?- in NT
Suck*sup-H*?u[u]p onomatopoetic?D1S/L, ?- in NT
Get soaked*sim-H*?im 'dip into' ?< Chin.B1, C1, ?- in NT
Slander*s?/o-sir- cf. nono-sir-H/L?, but
philology
indicates H*s?? 'slander, indicate'A1
Cold*sam-pu- cf. sam-as- 'cool it',
same- 'get cool'LNT *?am > ?amC2
Door*toHproto-Tai *tu,
but proto-Kam-Sui *to,
pace Thurgood's *tu (1988:211)A1
Wing*pa > Old Japanese pa 'wing, feather'Hproto-Kam-Sui *pwaC1
Inside*naka < *na-ka 'inside-place'LHproto-Tai *?d-naiSW, Sukhothai A2,
CT, NT A1


Proto-Tai items are taken from Li, Fang Kuei 1977. A Handbook of Comparative Tai. Honolulu: University of Hawaii Press.

Li Fang-Kuei i is equivalent to ?.

NT = Northern Tai, CT = Central Tai, SW = Southwestern Tai.

アルタイ・オーストロネシア語混合説

母音の音韻体系はオーストロネシア語族と日本語に少数の類似性が見られる理由からアルタイ・オーストロネシア語混合説を提唱した学者もいる。しかし、近年の研究ではオーストロネシア系言語は古くは閉音節だったとされ、また語彙の類似性についても偶然の一致の範囲を出るものとは言い難い。それで、アルタイ・オーストロネシア語混合説も多数の学者からは認められていない[5][6]


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