日本語の方言
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また関西から東京に持ち込まれた語も多く、「こわい」(恐ろしい)、「うろこ」(鱗)、「しあさって」(明々後日)、「からい・しおからい」、「つらら」(氷柱)、「けむり」(煙)などがあり、東日本のなかで東京付近に孤立的に分布している[5]

代表的な分布パターンとして、「周圏分布」「東西分布」のほかに、残存分布(AB分布)、交互分布、日本海側と太平洋側の対立分布、群雄割拠型の分布、錯綜分布が知られる[6]。残存分布とは、かつては周辺部にA、中央部にBの語が分布するABA型の周圏分布だったものが、一方のAが衰退してAB型の分布となったものである[6]。日本海側と太平洋側の対立分布には、「ゆきやけ」と「しもやけ」のように気候の違いに由来すると考えられるものがある[6]
相互理解可能性

1967年の相互理解可能性の調査より、関東地方出身者にもっとも理解しにくい方言は(琉球諸語東北方言を除く)、富山県氷見方言(正解率4.1%)、長野県木曽方言(正解率13.3%)、鹿児島方言(正解率17.6%)、岡山県真庭方言(正解率24.7%)だった[7]。この調査は、12?20秒の長さ、135?244の音素の老人の録音に基づいており、42名の若者が聞いて翻訳した。受験者は関東地方で育った慶應大学の学生だった[7]

関東圏出身者に相互理解可能性(1967年)[7]方言大阪市京都市愛知県立田村長野県木曽町新開富山県氷見市岡山県勝山町高知県大方町島根県雲城村熊本市鹿児島市
正解率26.4%67.1%44.5%13.3%4.1%24.7%45.5%24.8%38.6%17.6%

区分日本語の方言区分の一例。大きな方言境界ほど太い線で示している。本土方言と琉球方言の違いは非常に大きく、また琉球方言の内部の違いもかなり大きい。本土方言は東西に分けられるが、八丈方言は独自の位置を占める。

方言の地域区分を「方言区画」という。日本語の方言区画は、まず本土方言と琉球方言に分けられる。方言区画は、学者によって異なり、下の分類はおおむね、東条操の区画案に基づいている。この案では、本土方言は東日本方言西日本方言九州方言の3つに分けられた。さらに東日本方言は北海道方言東北方言関東方言東海・東山方言に、西日本方言は北陸方言近畿方言中国方言雲伯方言四国方言に、九州方言は豊日方言肥筑方言薩隅方言に分けられた。また東北方言はさらに北奥方言南奥方言に、関東方言は東関東方言西関東方言に、東海・東山方言は越後方言長野・山梨・静岡方言岐阜・愛知方言に分けられた[8]

東条の目指した方言区画は、方言全体の体系の違いを基準に、日本語が内部でどう分裂し、各方言がどういう相互関係を持っているかを示すものだった。しかし、地域間を移動すれば方言が次第に変化し、明確な境界線が引けないということもありうる。個々の項目、たとえば「元気だ」と言うか「元気じゃ」と言うか、あるいは「せ」を「しぇ」と発音するかしないかなどには確かに境界があるが、それぞれがバラバラの境界線(等語線)を持っているため、これらを一つにまとめて方言境界を定めることは簡単ではない[9]。そこで方言区画では、一つ一つの単語の違いよりも、文法や音韻、アクセントの体系的な違いが重視される。特にアクセントは、それ自体が体系を成している。東条が東日本方言と西日本方言の境界を愛知・岐阜と三重・滋賀の間に引いたり、中国方言と四国方言を分けたりしたことには、アクセントの違いが反映していると言われている[10]

しかし東条の区画は、どういう手続きでその結論に達したか、具体的には示されていない。一方で都竹通年雄奥村三雄は、母音・子音の性質や断定の助動詞、命令形語尾の違いなど、区画に用いる指標を何項目か示したうえで、それらを重ね合わせて境界を決める方法を取った。結果として、都竹案では岐阜・愛知方言は西日本方言に含められ、東関東方言は南奥羽方言の中に入れられた[8]。奥村は、本土方言を東西の2つに分け、さらに東日本方言を東北関東北東部・新潟県北東部と関東大部分・東海東山(岐阜・愛知含む)とに、西日本方言を北陸から九州北東部までと九州中南部とに分けた[11]。加藤正信は、関東方言と東北方言の境界などに関して、東条案では行政区画や地理的区分をある程度重視しているのに対し、都竹案では行政・地理的区分から解放されていると評価している[12]

金田一春彦の説はこれらとはかなり違い、近畿・四国の内輪方言、西関東・中部・中国などの中輪方言、東北や九州などの外輪方言、琉球方言にあたる南島方言に分けた[13]。金田一は、アクセント・音韻体系や活用体系などの言語のより根幹部分の違いを重視しようとした[13]。たとえば外輪方言は、促音・撥音・長音を独立の単位として認めなかったり、形容詞が無活用となったりする傾向がある方言としている。

一方で、方言周圏論を唱えた柳田國男は、方言区画論を否定している。これに対して東条は、方言区画論では方言全体の体系を見ようとしており、語彙だけを見る方言周圏論は方言区画論と対立するものではないと反論している[14]。方言の形成史においては、日本語の祖語が複数の方言に分岐するだけでなく、逆に政治的・経済的中心地からの伝播による収束作用も起き、両者が複雑に絡んでいる[15]。方言区画論は方言の分岐や地域的まとまりをとらえているが、方言の成立過程には隣接する地域などからの伝播も無視できないと、徳川宗賢は指摘している[14]
東日本方言詳細は「東日本方言」を参照

北海道方言北海道

内陸部方言

海岸部方言

松前方言(松前町を中心に上ノ国町福島町に分布)

道南方言(函館市を中心とし、内陸の七飯町厚沢部町などを含む渡島檜山地方に分布)



東北方言

北奥羽方言

津軽弁青森県津軽地方

下北弁(青森県下北半島

南部弁(青森県および岩手県の旧南部藩領内)

八戸弁(青森県旧八戸藩領内)

盛岡弁岩手県盛岡市。岩手県旧盛岡藩領内)


秋田弁秋田県)(秋田弁の文法秋田弁の音韻秋田弁のアクセントも参照)

庄内弁山形県庄内藩領内)

庄内北部方言

庄内南部方言

小国方言(山形県小国町。旧小国藩・米沢藩


北越方言新潟県阿賀野川以北)


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