日本沈没
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そして、日本列島は四国を皮切りに次々と海中に没していき、最後まで残っていた北関東が大爆発を起こした結果、完全に消滅する[注釈 5]
設定

197X年と書かれているが、執筆当時から予測される近未来と設定されており、当時はまだ完成していなかった施設のうちのいくつかが既に稼動しているものとして話が進められている。新東京国際空港(現在の成田国際空港)・青函トンネル関西国際空港(小説上は神戸沖だが、現実の神戸沖には神戸空港があり、実際の関西国際空港は大阪南泉州地区沖にある[注釈 6])など。大型コンピュータ[注釈 7]LSI化など確実に未来を予測したものもある。

実現しなかった未来の描写としては、水深1万メートルまで潜れるような深海潜水艇超音速輸送機が多数登場する点が挙げられる。現実では、かなり未来のこととなったものを登場させているものとしては超電導リニアが全線の測量が終わり工事が始まっている。一方で東海道新幹線ビュフェがあるなど、その後の時代からみれば懐かしい描写もある。

国際情勢に関しても、執筆中に情勢が変化しているケースもあった(作中にはパプア紛争に介入する形で日本人の移住先確保を図ろうとする構想が描かれているが、発売直前にインドネシアが併合を強行している)。

日本列島を沈没させる科学設定のほかにも、「ナカタ過程」と呼ばれる架空の理論など、完全にフィクショナルな科学描写もある。

また、日本が沈没するのは人口増加率が減少に転じた数年後という設定もあり、そのため、ひそかに進められている海外移転計画が海外から「日本の人口対策ということはありえないと怪しまれる」という描写がある。
用語解説
D計画
日本列島の地質的大変動の可能性について極秘裏に調査・研究する計画。「D」の意味については、作中では特に言及されていない
[注釈 8]。初期段階では首相のほか総理府総務長官、内閣官房長官防衛庁長官のみの知る極秘プロジェクトで、内閣調査室総理府防衛庁からの機密費と、渡老人からの資金援助によって運営されていた。発足時のメンバーは田所(地球物理学)、中田(情報工学)、幸長(海洋地質学)、山崎(内閣調査室)、小野寺(潜水艇技術者)、安川(会計担当)。のちに、最悪の事態が生じた際の、人間と資産の国外退避に関する研究を行う「D-2」が追加されたため、それまでのD計画は「D-1」と呼ばれるようになり、東京大震災以後に規模を拡大、気象庁国土地理院地震研究所などを巻き込む巨大国家プロジェクトに発展する。なお、D-2は自衛隊で検討される。日本政府が危機を公表してからは退避計画実行委員会の下部組織となり、その後、日本政府自体が国外に脱出してからは、ホノルルに本部を置く救出対策本部の下部組織として、海上自衛隊護衛艦はるな」に本部を置く。
国連日本救済特別委員会
国連事務総長ビン博士の主導により、総会直属の特別委員会として、世界各地域17か国[注釈 9]を構成国として設立された。委員長は国連タンザニア代表でアフリカ経済委員会メンバーのンバヨ。副委員長は米ソ両国から選出。日本は議決権・交渉権のない特別メンバーとなっている。
登場人物

基本
プロットは複数人物による群像劇として描かれており、章によっては主人公が変わる。

小野寺俊夫
深海潜水艇の操艇者。30代。独身。潜水士海技士の資格を持つ。当初は海底開発KKに勤めていたが、後にD-1計画に引き抜かれる(身分的には臨時雇)。戦後生まれで、出世や組織の属すること、国家に対しても興味がなく、純粋に海が好きで潜水艇を操縦しており、その性格を田所に早々と見抜かれて海洋研究で本格的に力を貸す。
田所雄介
地球物理学者。博士。作中では「田所博士」と呼ばれることが多い。「エピローグ」の時点で65歳。独身。和歌山県出身。田夫野人な性格の人物として知られる。元M大客員教授。現在は大学には在籍せず、新興宗教「世界海洋教団」をスポンサーにして個人研究所を運営している。D-1計画の中心人物。小野寺と同様に出世に興味がなく純粋に自然や物理、日本列島を好んで研究する人物。「科学者に必要な物は直感」がモットーだが日本列島が沈没すると当初から予感しながら科学的証明が出来ずに悩んでいた。米軍や新興宗教の資金援助を受けたり、公開の席上で他の研究者を面罵したりするといった態度のため、日本の学界では嫌われているが、海外での評価は高い。のちに週刊誌に情報を漏洩した上、泥酔状態でテレビのワイドショーに出演し、同席していた山城教授に暴行を加えて逮捕され、D-1計画を去り消息を絶つ。実は、日本沈没が迫っていることを国民にそれとなく知らせるため、渡・中田と示し合わせた上で打った芝居だった。日本列島と運命を共にすることを決意しており、最後まで日本に残る。
幸長[注釈 10]
海洋地質学者。M大学の助教授で田所の右腕的存在。銀縁眼鏡を着用。常識人で、小野寺や田所を気遣う。政界にもコネクションを持ち、田所と渡老人を引き合わせてD-1計画を発足させ自らもメンバーとなる。田所を支持する半面自らの立場に対する不安を抱く。田所が暴行事件を起こして逮捕された後は実質的にD-1計画の責任者となる。
首相
内閣総理大臣。60代。渡老人に陣笠議員のころから造船疑獄事件などで助けてもらい、渡の力により首相の座に就いた人物で、異常事態において、決断が迫られる中覚悟を決めてD-2計画を推し進める。姓は緒形[注釈 11]だが、作中ではもっぱら「首相」または「総理」と呼ばれている。
阿部玲子
作中のヒロインの一人。大手財閥の令嬢で、政略結婚を目的に小野寺と見合いをさせられる。海岸で一夜をともにし、小野寺を運命の相手と見定めて結婚を決意する。
麻耶子(マコ)
作中のもう一人のヒロイン。西銀座のバー「ミルト」のホステス。小野寺の深海潜水に純粋に興味を持っている。
渡老人
「箱根の老人」の異名を取り、政官財で暗躍する黒幕。100歳という高齢にもかかわらず、一種の激しい精神力と、端的かつ鋭い質問を浴びせるような明晰な頭脳を持っている。戦前は満州事変当時活躍し、直接ではないにしろ大勢の人間を死なせているという。戦時中は完全な隠遁(いんとん)生活を送って、戦犯にならずにやり過ごし、戦後は最初の15年ほどは猛烈に活動したが、80歳を過ぎてからは自分からは動かず、政財界の大物からアドバイスや斡旋(あっせん)、調停の口利きを依頼されていた。ツバメが巣を作ったまま帰ってこなくなったり、植物の咲き方の些細な異変から日本で異変が起きていることを肌で感じていた。田所の科学的な直感を信じ、総理を茅ヶ崎の自邸に呼びつけて、ほんの二言三言で「D計画」の実行を決意させる。最後は日本列島が沈みゆく中、府中の邸宅で、田所に看取られ息を引き取る。
花枝
渡老人の身の回りの世話をする少女。第5章の時点で23歳。
邦枝
総理府秘書官で幸長の友人。渡老人と同郷。渡老人の右腕的存在で、政府や田所との仲介を行う。
中田一成
情報科学者で幸長の大学時代からの友人。D-1計画のメンバー。既婚者。確率無限小と思われる現象が、自然の中ではなぜ起こりえるか、ということについて「位相学的確率論」を提唱、一部では「ウィーナー過程」「マルコフ過程」とならんで「ナカタ過程」と呼ばれている。田所がD-1計画を去った後は、幸長とともに最後まで計画を支え続ける。政府との板挟みとなり、正確な被災情報はコンピューターでも計れないと政府に呼び掛ける。
結城
小野寺の親友で同じ会社に勤める操艇者。後に小野寺の誘いでD-1計画に引き抜かれる。
野崎八郎太
外務省特別顧問、国連日本救済特別委員会特別委員。外交問題を一手に任される老人。流暢なクイーンズイングリッシュをしゃべる。D-2計画の海外亡命の仲介を行う。
山崎
内閣調査室調査官。D-1計画メンバー。代々木のD-1計画本部にいた時に東京大地震に遭遇する。
片岡
防衛技研所員。D-1計画メンバー。
安川
D計画の会計担当者。大学を出たばかりの青年で、立場上は臨時雇い。東京大震災の衝撃で記憶を失う
穂積
D-1計画メンバー。調査結果が世間に漏れないように情報操作を行うために引き抜かれる。
真下
地震研究所助教授。D-1計画メンバー。
福原
比較文明史学者。京都の大学教授。50代。渡老人に依頼されて日本人の国外脱出計画の策定を行うが、途中で「何もせんほうがいい」という案に傾きかける。大綱を渡に提出した直後に過労死する。
郷六郎
N建設調査部の地質調査技師で小野寺の友人。東海道新々幹線(リニアモーター超特急)の基礎工事に関わっていたが、京都大地震の直前に変死体で発見される。のちに、地殻変動によって新々幹線の建設が不可能になることに独自に気づき、その事態を受け入れられずに自殺同然の事故死を遂げたことが明らかとなる。
ンバヨ
国連タンザニア代表で国連日本救済特別委員会委員長。若い頃にアフリカ統一機構に出向していたことがある。理想主義者。日本沈没を日本人の枠でとらえず「私たち人類に対する試練」と言及し、人種や国という考えを捨てて結束すべきだと促す。
オーストラリア首相
オーストラリア首相。渡老人との取引でオーストラリアに日本移民受け入れを承認する。ユダヤ人であり国を無くした日本人がこれからユダヤ人のような流浪の民になることにより試練が待ち構えることを予見する。
吉村
海底開発KKの部長、出世を狙い小野寺に政略結婚を勧める。日本沈没時はスイスに逃げる。
D・マルタン
ベルギー人の美術商。裏で密輸と窃盗を行っておりインターポールから目をつけられている。渡老人と裏取引を行う。
小野寺の兄
兵庫の実家に住む小野寺の兄。カナダの会社からヘッドハンティングを受けている。
山城
地質学者。T大教授。


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