日本映画
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無声映画とは声の無い映像のみの映画を指すが、日本映画においては真の意味での無声映画は存在していなかったと言って良い[3]

純粋に日本文化を映画へ昇華し、日本映画らしさを出そうとする一方で、国外の文化や素材を日本風に咀嚼し、混交するという日本映画も多数誕生している。ジャック・フェデーの『ミモザ館』から着想を得た山中貞雄の『人情紙風船』や[4]ウィリアム・シェイクスピアの『リア王』が原作とされる黒澤明の『』などがそれにあたる[5]
歴史
サイレント時代シネマトグラフ忠臣蔵』(尾上松之助関東大震災により廃墟と化した神奈川県横浜市鞍馬天狗嵐寛寿郎

日本における初の映画上映は、鉄砲商人であった高橋信治によって1896年11月、神戸の神港倶楽部に始まった。これはトーマス・エジソンキネトスコープによるものである。リュミエール兄弟シネマトグラフによるスクリーン上映は1897年1月に稲畑勝太郎によって京都電燈株式会社の当時の本社(現在の元・立誠小学校の敷地)の中庭にて初めて行われた。続いて1897年2月に初めての「有料上映」が稲畑勝太郎によって大阪にて行われた。同年3月には東京でキネトスコープを改良したヴァイタスコープが公開され、人気を博した。谷崎潤一郎は自著『幼少時代』において「一巻のフィルムの両端をつなぎ合わせ、同じ場面を何回も繰り返し映せるもの」と評している。

その後浅野四郎によっていくつかの短編映画が撮られ、1898年、日本で初めて映画が撮影された。

1898年には先に挙げた『化け地蔵』『死人の蘇生』が、翌1899年には『芸者の手踊り』(東京歌舞伎座)が公開された。これは小西本店(後の小西六写真工業、現コニカミノルタ)の浅野四郎がゴーモン社製の撮影機にて芝・紅葉館で実写撮影し、駒田好洋が率いる「日本率先活動写真会」によって一般公開された。同年には1巻70フィートの日本最初の劇映画となる『ピストル強盗清水定吉』が駒田好洋によって撮影され、日本初の映画俳優として新派横山運平が起用された。積極的に映画と接触しようとした新派とは異なり歌舞伎などは映画を「泥芝居」と蔑み、原作や役者の提供に躊躇する時代であった[6]。現存する最も古い日本映画としては同年柴田常吉によって撮影された『紅葉狩』がある。

1903年には吉沢商店浅草に日本で最初となる映画専門館「電気館」を設置した[7]。翌1904年日露戦争が勃発すると実写撮影班を現地中国大陸に派遣し、その映像をドキュメンタリー映画として上映し、人気を博した。

1908年に発表された『本能寺合戦』は最初の本格的な劇映画であり、横田商会の依頼で本作品を撮り上げた牧野省三は日本最初の映画監督として名を残している。京都浄瑠璃小屋を所有し、狂言方として活動していた牧野は作品の原作に用いられる浄瑠璃を空で暗記していたことから、脚本を用いる事無く、撮影にあたったと言われている。翌年には歌舞伎俳優の尾上松之助が主演した『碁盤忠信』が大ヒットとなり、「目玉の松ちゃん」として日本最初のスターが誕生した。以降、尾上は14年間の俳優生活において千本を超える映画で主演を果たしている。中でも1910年に撮られた『忠臣蔵』は浄瑠璃、歌舞伎に続き、その後の日本映画においても欠かせない題材として庶民の人気であり続けた。後年、牧野はその功績を称えられ、アメリカの映画監督D・W・グリフィスによりグリフィス・マキノという称号を与えられている[8]

1912年、横田商会・吉沢商店・M・パテー商会福宝堂という4つの映画会社がトラスト合同を行い、日本活動写真株式会社、略称日活を発足させた。日活は従来の家内工業的な小規模な製作から一線を画す、日本初の本格的な映画会社となった。東京向島向島撮影所、京都二条城西櫓下の関西撮影所の2箇所の撮影所を設け、東京では新派(後の現代劇)を、京都では旧劇(後の時代劇)を製作した。

1914年4月3日、日本初のカラー劇映画『義経千本桜』が公開[9]

ここまでの多くのフィルムは演劇的演出の再現に留まり、映画として独自の技法が試みられるようになるのは1910年代後半に入ってからである。井上正夫1917年に製作した『大尉の娘』ではクローズアップや移動技法、カットバックといった技法が導入されている。この頃より呼称も「活動写真」から「映画」へと次第に変遷が始まり、1922年ごろまでには映画という言葉が一般庶民にも深く浸透するようになった。

一方映画評論においては、吉沢商店が1909年に発表した初の映画雑誌『活動写真界』などが既にあったが、1917年帰山教正が『活動写真劇の創作と撮影法』と題する理論書を発表したのをきっかけに1918年には日本映画の近代化運動「純映画劇運動」が起こる。


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