日本国憲法
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近衛文麿(近衛案[126]

佐々木惣一(帝国憲法改正ノ必要[127]

宮沢俊義(甲案・乙案[128]

松本丞治松本試案[129]

佐藤達夫

幣原喜重郎

芦田均芦田修正

憲法典に述べられていない問題

日本の憲法の主たる法源は、日本国憲法(形式的意味の憲法)である。ここでは、日本国憲法には述べられていない憲法上の問題について述べる。
領土

ゲオルク・イェリネックのいう国家の三要素のうち、国民(Staatsvolk)・国家権力(Staatsgewalt)に関して日本国憲法は論じているが、国家領土(Staatsgebiet)に関しては、日本国憲法は沈黙している(これは比較憲法的には異例に属する)。日本国の領土を決定する法規範は、主として条約にある。

なお、大日本帝国憲法も、国家領土については沈黙していた。このため、帝国憲法施行後に獲得された領土については、憲法の場所的適用範囲が問題となった。これについては、肯定説・否定説・折衷説が対立した。
国家の自己表現

いわゆる国家の自己表現(Selbstdarstellung des Staates)について、日本国憲法は規定していないが、比較憲法的に珍しいケースである。主な法源として、次のようなものがある。

日本の
国号政体に関する規定(例 日本国は自由と民主主義に基く民主制国家である、など)。

国旗国歌法:日本国の国旗日章旗国歌君が代であることを規定している。

元号法元号政令で定めるべきこと、元号は皇位の継承があった場合に限り改めること(一世一元の制)を規定している。

国民の祝日に関する法律

首都)に関しては、1950年(昭和25年)の首都建設法がある(ただし、1956年に廃止)。ここにおいて首都を東京都と定めていた(詳細は日本の首都を参照)。

憲法の解釈

日本国憲法の解釈は、それぞれの機関が権限の範囲内で行なっている。

法律制定にあたっての憲法解釈は、国会が行うとされている。

内閣は、法律を執行するに当たって必要とされる限りにおいて憲法を解釈するとされる。

ただし、憲法81条によって、裁判所の違憲審査権を明記しており、そのため、国会・内閣・司法による憲法の解釈の中でも、最高裁判所の行う解釈が最も強い効力を持つとされる[130]
GHQ民政局草案との比較

GHQ民政局にて起草された憲法草案は、1946年2月10日の夜にマッカーサーに提出され、GHQ民政局内での対立を理由に、基本的人権を制限あるいは廃棄する内容での憲法改正を禁止する規定を削除することを指示し、その指示の上で、この草案を基本的に承認した。その承認の後、最終的な調整ののち、GHQ民政局草案は2月12日に完成した。改めてマッカーサーの承認を得て、2月13日に日本政府に提示され、2月22日の閣議において、日本政府はそのGHQ民政局草案の受け入れを決定した[131]

そして、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の民政局の主導により起草された日本国憲法の草案と実際に施行された憲法との条文の比較は(解釈にもよるが)、以下の通りである[132]

民政局草案では前文や条文に「日本国人民」「人民」と称しているが、現行憲法では「国民」と称され、人民という言葉は使われていない。

第二十三条に「家族ハ人類社会ノ基底ニシテ」とあるが、現行憲法に人類社会の基底を示す条文は存在しない。

第二十四条に「有ラユル生活範囲ニ於テ法律ハ社会的福祉、自由、正義及民主主義ノ向上発展ノ為ニ立案セラルヘシ」とあるが、このような条文は現行憲法に存在しない。

「第二十八条 土地及一切ノ天然資源ノ究極的所有権ハ人民ノ集団的代表者トシテノ国家ニ帰属ス 国家ハ土地又ハ其ノ他ノ天然資源ヲ其ノ保存、開発、利用又ハ管理ヲ確保又ハ改善スル為ニ公正ナル補償ヲ払ヒテ収用スルコトヲ得」と定められている民政局草案だが、現行憲法に土地の国有に関する条文は存在しない。

第三十五条に「過大ナル保釈金ヲ要求スヘカラス」とある民政局草案だが、現行憲法に保釈金に関する条文は存在しない。

大日本帝国憲法との比較
天皇

大日本帝国憲法では、天皇は「国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬」する存在(第4条)であって、神聖不可侵な存在とされた(第3条)。しかしこれらの権限は国務大臣による輔弼(advice、助言)に基づき、国務大臣による副署がなければ法的効力を有しない(第55条)。

日本国憲法(現行憲法)では、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(象徴天皇制第1条)であり「主権の存する日本国民の総意に基く」地位とされた(国民主権、同条)。また、天皇は憲法に定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないものとされた(第4条第1項)。これらの権限は内閣の助言(advice)に基づき行使され、内閣の承認を必要とする(第3条)。なお、現行憲法には日本の元首に関する規定はない。

天皇の持つ権限について新旧憲法で共通している点は、天皇が独断で命令を出したりすることは出来ず内閣の構成員である大臣の助言に基づく点、大臣の了承がなければならない点である。

一方異なる点は、助言と了承を伴う天皇の行為が国政に関わる行為かどうかである。どの大臣がどのようなことを天皇に助言するのかという要素は新旧憲法両方において書かれていないが、新憲法では国政に関わる行為に天皇が関わらない為に問題にならないこの曖昧さが、旧憲法では極めて重大な大臣同士の権限の衝突を引き起こす上に、誰が国政に責任を追うのかしばしば曖昧になることがあった。これらの権限の衝突を調停する仕組みは憲法の外に置かれた機関(憲法外機関、内大臣枢密院など)に委ねられ、憲法外の調停機関を少数の人間が牛耳ることにより思うままに独裁的な国政を行うことさえ出来た[133]
立法府

帝国憲法においては、天皇の立法権協賛機関として、衆議院貴族院からなる帝国議会が置かれていた。現行憲法では「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」たる国会が設置されている。
行政府

旧憲法には内閣および内閣総理大臣の規定は置かれず、これらは勅令である内閣官制に基づいて設置された。憲法では国務各大臣が天皇を輔弼(ほひつ)し、天皇に対してのみ責任を負うものとされた(第55条第1項)。内閣総理大臣および国務大臣は天皇が任免するものとされたが(第10条)、実際には元老重臣内大臣など、憲法外の機関が人選した。

現憲法では、内閣(第65条等)および内閣総理大臣(第6条第1項等)の規定が置かれた。天皇は国会の指名に基づいて国会議員の中から内閣総理大臣を任命し(第6条第1項)、内閣総理大臣が国務大臣を任免して内閣を組織し(第68条、第66条第1項)、内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う(第66条第3項)。内閣と国会(衆議院および参議院)との関係については様々に説明されるが、議院内閣制を採用しているものと理解されている[134](第66条3項、第67条1項、第68条1項、第69条第70条第63条)。また内閣が外交を処理する権限等を持つことから、学説の多くは内閣あるいは内閣総理大臣を元首とする[135]
国務大臣の任命資格


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