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Y染色体は蓄積された情報量がミトコンドリアDNAよりも多く、多様性があり長期間の追跡が可能であり、かつ歴史時代の情報と合致させるのに適していた[55][56]。しかし、世界のY染色体研究から大きく取り残された差は埋め難く、2004年のヒトゲノムの解読を契機に、核内の常染色体を解析するゲノム研究に移行した[57]。ミトコンドリアDNAとY染色体はそれぞれ母系・父系の一系を延々と遡源し先祖を辿る遺伝子を解析するものであるのに対し、常染色体はその人間を構成する遺伝子情報を解析するというもの(例えば、日本人固有の遺伝子を何%保有しているかなど)であり、そもそも何を目指した研究を行うのかの興味の範囲や方向性に違いがあるため、Y染色体と核ゲノムの研究を比較し一概にどちらが優れているかの評価はできない[58]
Y染色体ハプログループ(父系)による系統

母系のみをたどるミトコンドリア解析に対し、父系をたどるY染色体は長期間の追跡に適しており、1990年代後半からY染色体ハプログループの研究が急速に進展した[56]。注目すべきは日本列島においてM55のSNPによって定義される縄文系D-Z1500系統が日本人男性の3割、さらにその中のCTS8093のSNPによる系統が約2000年前に発生したにもかかわらず、日本人男性の1割を占めていることである。O-CTS11986によって定義されるM176系統は日本人の弥生系の子孫であり、D-Z1500系統に次いで多数を占める。さらにM216のSNPを持つC系統を合わせると日本人男性の8割がこのいづれかに属しており、現在の日本人男性の大半を占める[59][60]。C系統の内、F3393以下のM8のSNPを持つ系統は、非YAP(YAPの変異を持たない)縄文系であり、日本列島に最初に到達した系統であるともみられている[61]。C系統の内、M217の痕跡を持つものは、モンゴル女真満洲などの北方遊牧民族と祖を同じくし歴史時代になって以降の渡来とみられる。漢民族に由来するM122のSNPを持つ系統は中国朝鮮半島ベトナム等においては最多を占め、東南アジア、インド北東部やネパールなどの南アジアでも広範囲に見られるO系統の最大のサブグループであるにもかかわらず、日本においてはD-Z1500,O-M176の両系統に次ぐことが特徴的である[62]。O-M122系統は現在の日本人のY染色体ハプログループの中では、D-CTS8093やO-CTS11986のような父系の有力なクラスターを持たず、遺伝子的にみれば分岐系統が異なる雑多な寄せ集めであるため、散発的に日本列島に渡来したと考えられている[63]
Y染色体一塩基多型分岐図

 A0000 A000-T                    
  
                             
          
  PR2921 A00  A0  A1a  A1b1  サン族   
           
      L1090  P305  V221  M42  M168     
      
                             
                          
       E系統                   
  
  YAP  CTS3946                    
     
                              
           
    A5580.2 ナイジェリア  F6251 M15 チベット       
      
                  Y34637 ジャラワ族       
   
    M174 CTS11577  Z3660  M64.1            
      
        L1366 フィリピン      ※以下縄文人の系統       
  
                               


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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