日本人学校
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特に1990年代後半から急増しているのは経済成長に合わせ日本企業の進出が相次いだ中華人民共和国では、大連(1994年)、広州(1995年)、天津(1999年)、青島(2004年)、蘇州(2005年)に日本人学校が新設され、香港と上海の両校も増加し続ける生徒に対応するため、それぞれ1997年2006年に校舎を増設している。上海では今後も毎年500人程度の児童・生徒数増加があるとみられている。[3]

このように日本人学校は、日本の景気と現地国の政治経済状況を含む国際情勢を端的に表す存在である。 2023年4月15日現在では、世界49カ国・1地域に94校が設置されており、約1万6千人が学んでいる[4]
大規模な日本人学校
世界最大の日本人学校と補習授業校との比較

下記のランキング表は小・中学生のみを対象にしている。

日本人学校はアジアに集中し、補習校はアメリカ合衆国に多いことが下記の表からうかがえる。これは、平日に通う現地校が、言語、政治、宗教の違いなどから選択しづらい地域がアジアには多く、他方、北米と欧州では、現地校に通っても日本人学校に近い基準の教育を受けられることが多いためである。。

世界最大の日本人学校と補習授業校との比較 (2021年度)[5]日本人学校
(全日制)日本人補習授業校
1上海日本人学校 2,944名サンフランシスコ補習授業校(英語版) 1,241名
2泰日協会学校バンコク日本人学校) 2,350名ロサンゼルス補習授業校 1,115名
3シンガポール日本人学校 2,007名ロンドン補習授業校 994名
4台北日本人学校 776名西大和学園カリフォルニア校 623名
5 香港日本人学校 624名デトロイト補習授業校 564名
6台北日本人学校 810名ボストン補習授業校 532名
7クアラルンプール日本人学校 509名シカゴ補習授業校 479名
8シラチャ日本人学校 447名ホノルル補習授業校 469名
9ハノイ日本人学校 563名ワシントン日本語補習学校 456名
10デュッセルドルフ日本人学校 380名ニューヨーク日本語補習学校 450名

日本人学校に関わる問題とその対策

2005年に日本在外企業協会が、企業を対象に行ったアンケートでは以下のような結果が出た[6]

日本人学校に関する問題点(回答が多い順)
高校が無い

幼稚園が少ない

学校数が少ない

授業料等が高い

安全対策が不十分(SARS、テロ関連 他)

遠距離通学・親への送迎の負担が大きい

教員の指導方法・授業レベル

企業の寄付金負担が大きい

学校の少人数化によるレベルの低下

一口に「在外日本人(の子弟とその保護者)」といっても、そのニーズは多種多様である。帰国後の受験やいじめに対処できることを重要視する保護者もいれば、2、3年の駐在期間の中でも子供が現地の日本人社会に閉じこもらず現地に溶け込むことを望む保護者もいる。特別支援教育が必要な子供、他国籍や現地国籍を持つ子供の入学についても意見が分かれる。小学生の早期外国語(現地語もしくは英語)教育では希望する習得レベルが異なり、非英語圏ではさらに現地語の達成目標にも差がある。

日本人学校では人材・資源が限られているが、文部科学省の協力のもと、在住国の法律や環境が許す範囲でできるだけ多くの保護者の要望に応えられるよう努力と工夫を重ねている。海外に散らばる日本人学校、補習授業校でネットワークを作り、比較的近隣の学校で共同研修会や勉強会を開くなどしている。海外子女教育振興財団では数年に1度の頻度で各校の代表が集まり、文部科学省と外務省もまじえて運営全般について意見交換、質疑応答などが行える場を提供している[7]

しかし、運営に関する裁断の一部を担う校長が2、3年で交代する短期滞在の派遣教員であるため長期展望に欠けることがあり、それ以上の期間滞在する事になる保護者だけでなく、長期滞在や永住予定の在留邦人との間に意識の違いがあることは否めない(なお、多くの日本人学校が日本国内の小・中学校と同等の教育を行う機関に沿った課程で運営されていることや、日本企業や政府、各種団体から派遣された駐在員の保護者らが中心にその設置を推進していることなどから、これらの駐在員を除く長期滞在や永住〈もしくは予定〉の在留邦人の子弟が通学することはまれである)。
変動の激しい生徒数

日本の景気や現地国の景気、現地国の政情の変化、日本企業の現地化の促進や進出企業の不振による現地拠点の閉鎖・撤退などが生徒数の激増・激減に直接影響するため、日本人学校の運営には先行き不安がついてまわる。

現在は、中南米諸国やヨーロッパ諸国の比較的日本人が少ない都市などを中心に生徒減少の一途をたどるために、中には閉校の危機感を持つ学校も多い。さらに今後は、日本企業の現地化の促進や駐在員の若年化に伴う子女の低年齢化、晩婚化少子化単身赴任といった要因で子供数自体が減る恐れがある。なお、日本人学校は義務教育課程の学校ではあるが、通学範囲内に住む日本人に対して、入学が義務づけられてはいない。義務教育施設であっても公立学校ではない。そのため運営は私立校のようにアイディアを絞り、生き残り案を考えなくてはならない。

生徒数を安定させるために、現地の日系企業に出向いて営業活動をしたり、現地国の学校教育法に基づく「国際部」や「○○部」(○○は現地国名)を設けて現地国籍の子供や日本国籍を持たない子供を入学させる学校もある。しかし、永住組や日本人以外の子供の入学は、日本人学校の多くが現地国の学校教育法に基づいていないために卒業後に現地の高等教育校に進めないケースが多く敬遠される事が多い上に、日本語能力のばらつきや学力レベルの低下につながるとして国際部開設に反対する保護者や教員もいる。

また、外国籍を持つ子供の割合や人数が一定数を超えないよう調整したり、日本語テストの結果で入学を決定する学校もある。一方で、1990年代以降のシンガポールや中国、タイの日本人学校など、生徒が急増する学校では、質の良い教員と教室の確保が非常に難しい。増加・減少どちらにしろ、生徒数の変動が激しい。
カリキュラム
大規模校ロンドン日本人学校北京日本人学校

日本人学校には小中一貫校教育、海外にいながら日本の小・中学校と同じ教育が受けられるという利点がある。大規模な日本人学校は企業駐在員や国家公務員、団体職員が多い地域の大国の大都市近郊にある。立派な施設を持ち、日本の学校の雰囲気そのままを味うことができる。しかし、土地柄公立や私立の現地校、インターナショナル・スクール、補習授業校、日系の塾など選択の幅が広く、近年は現地校やインターナショナルスクールなどに流れる生徒が以前に比べ増加している。
小規模校

小規模校は、こぢんまりした環境の中、マンツーマンに近い状態でじっくりと学力を伸ばす手作り感が強みである。しかし生徒数が少なすぎると、寺子屋式で複数の学年をまとめて指導することになり、学年別に分ければ全学生数に対して教室数が多く財政的な負担となる。しかしながら、特に開発途上国や小国の日本人駐在員が非常に少ない地域にある小規模な日本人学校は、土地柄公立や私立の現地校、インターナショナル・スクール、補習授業校、日系の塾など選択の幅が少ない中で、質の高い教育を与えてくれる貴重な存在である。日本人学校が無いため家族帯同ができなかった人が日本から家族を呼んだり、日本人学校へ通うために引越して来るケースもある。
外国語教育

また、長期的に複数の異なる言語圏に滞在するケースや、英語圏では英語教育を望む保護者も多い。また滞在中に日本人学校が設立された場合は、それまでインターナショナルスクールや現地校に通って身に付けた現地語や英語を忘れてほしくないという理由で日本人学校への入学を渋るケースもある。週末の日本語補習校の生徒が非常に多いからといって全日制に切り替えても、補習校と同じ数だけの生徒は集まらないケースも多く、日本人学校は保護者の需要を丁寧に拾っていかなければならないという現状にある[8]。なお、日本人学校は日本と同じカリキュラムを組む学校であるのに、「海外に位置する」というだけで小学部でも大した根拠も無く保護者が早期英語教育を切望している事が多く、非英語圏でも現地語ではなく英語志向である保護者も多い。また、英語圏を中心に、1、2年程度の短期滞在や幼児教育課程でも英語教育を望む家庭が増えている。そのうえ「英会話受験英語の両方」、「英語と現地語の両方」さらに「受験に必要な国語もしっかりやって欲しい」、「語学だけでなくコンピュータ・リテラシーを主とする情報教育も進めて欲しい」など、実現に困難さが伴うカリキュラムを要望する保護者も多い。

これらの要望を受けて、2006年現在はすべての日本人学校の小学部で英語が導入されている。義務教育ではないため英語講師は日本からの派遣ではなく現地採用である。英会話の授業、英語検定の実施、体育や音楽を英語で教えるイマージョン・プログラムを取り入れている。英語圏にある日本人学校やインターナショナルスクールに隣接した日本人学校では地の利を生かした英語プログラムを組むことができる。

その国の認可校の条件として現地語の履修が義務づけられていることがあり、この様な場合、非英語圏では現地語に加えて英語の授業を行わなければならなくなってしまうケースも多い。現地語だけでなく、現地の歴史や地理、たとえば海抜ゼロ以下地帯の多いオランダの水泳教室など、その学校で必ず履修しなければいけない科目がある。


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