日本アート・シアター・ギルド
[Wikipedia|▼Menu]
1970年代前半には、当時のポルノ映画ブームに便乗して[4]、『無常』『曼陀羅』『天使の恍惚』といった芸術ポルノを上映し成功した[4]

評論家筋から高い評価を受けても興行的に失敗するものも中にはあり、ATGの経営は徐々に困難になり、加盟映画館も減っていった。このような状況を受け、1979年には初代社長の井関が退任、佐々木史朗が社長となる。
第3期(1979 - 1992年)

ATGの製作方法は、企画を持ち込んだ独立プロまたは監督と、ATGが折半で製作費を出費するというのが従来からの建前で[5]、現実としては、大幅持ち出し必至という状態だった[5]。佐々木新社長は「寺山修司監督の『百年の孤独』(『さらば箱舟』、橋浦方人監督の『海潮音』、大森一樹監督の『ヒポクラテスたち』、小林竜雄監督の『大人になれないわれら』(製作されず)の新作4本からは、監督側の負担は50%でも10%でもよい。金が無ければATGが全額負担する場合もあり得る」と画期的な新方針を打ち出した[5]。ATG=1000万映画のイメージが定着していたが[5]、この決定により、前記の4本は3000?3500万円の製作費を予定していると発表した[5]

佐々木体制のATGでは、それまで中心的に活躍していた大物監督ではなく、学生映研やポルノ映画出身の若手監督を積極的に採用するようになった。以前のATG映画のイメージは、ごく簡単にいえば、意欲的で実験的な劇映画のイメージであった[6]。そこがメジャーの映画会社の作る劇映画とは大きく違った[6]。ところが1970年代後半からメジャーの製作状態は混沌とし、独立プロ作品が多彩になり、一方で実験的な映画作りも、色んな形で幅広く行われるようになってきた[6]。佐々木は1983年に山根貞男のインタビューに答えて「そんな中でも、もっと新しいタイプの映画、監督、役者がいつも欲しいですね、僕としては。例えば、大林宣彦というと"映像の魔術師"みたいにだけ思われているけれど、誰も予想しなかった大林映画をと、僕は思って『転校生』を作った.....めぼしい若手作家のいる分野として、にっかつロマンポルノ、ピンク映画、自主製作映画、記録映画の四つを考えています。テレビ出身の監督については考えていません。自分が東京ビデオセンターというテレビをやっているからです。テレビと映画ははっきり別のジャンルだと思っています」などと述べていた[6]。この結果、ATGの作品は初期のような解釈の難しい芸術映画ではなく、むしろ青春映画・娯楽映画が多くなった[1]。これら若手監督からは森田芳光家族ゲーム』などのヒットも生まれ、また後の日本映画を担う多くの人材が育っていったが、ATG自体は徐々に弱体化し1992年新藤兼人?東綺譚』を最後に活動を停止した[1]

その後、ATGは長らく休眠会社として存続していたが、前述の通り、2018年11月1日、東宝に吸収合併され、60年近い歴史に終止符を打った。
関連人物
大手映画会社出身


大島渚松竹

吉田喜重(松竹)

篠田正浩(松竹)

新藤兼人

今村昌平松竹大船日活

岡本喜八東宝

熊井啓(日活)

増村保造大映

村野鐵太郎(大映)

市川崑(各社。登場時は主に東宝)

斎藤耕一(日活専属スチール写真家
代表作『旅の重さ』(1972年)は松竹映画

中川信夫(各社)

中島丈博(日活ロマンポルノ
郷愁』はATGのシナリオ一般公募から映画化

中島貞夫東映ヤクザ映画時代劇

中平康(松竹、のち日活)

須川栄三(東宝)

曽根中生(日活)
代表作『博多っ子純情』(1978年)は松竹映画

森崎東松竹京都

神代辰巳(日活)

小原宏裕(日活)

鈴木清順(日活)

根岸吉太郎(日活)

山口清一郎(日活)

池田敏春(日活)

吉田憲二(日活)

ドキュメンタリー出身


黒木和雄岩波映画製作所

羽仁進(岩波映画製作所)

松本俊夫

龍村仁NHK

東陽一(岩波映画製作所)

後藤幸一

アンダーグラウンド映画学生映画インディペンデント映画ピンク映画出身


若松孝二

足立正生(若松プロ)

高林陽一

大林宣彦

長谷川和彦(今村昌平プロ)

大森一樹

井筒和幸

高橋伴明

森田芳光

相米慎二

石井聰亙

長崎俊一

金秀吉

橋浦方人

テレビ出身


実相寺昭雄TBS

田原総一朗東京12チャンネル

龍村仁(NHK)

演劇出身


勅使河原宏

寺山修司

唐十郎


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:38 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef